イカとタコは違います、豆州攻略
延徳3年の新年。
御屋形様の家臣である大窪種久が一人の坊さんを連れてきた。
「政義様、ご壮健でなによりです。」
(様?)「どうも。種久殿ご苦労さん。」
「本日より政義様の手伝いをするようにとのことです。こちらが書状となります。」
「どれどれ。」
(好きに使えと。知行がなければ銭でも良しだって。)
「そうか、分かった。話は後で。それで、そちらの方はどなたかな。」
「岩城左京亮様の家臣で松岡館主である岡本妙誉殿です。」
「お初にお目にかかります、妙誉です。」
「これはこれは、わざわざのお越し恐れ入ります。して、ご用は?」(岡本君の爺さんか。岩城の家臣だったのね。)
「いえね、婚礼と同盟の話のついでに、前に政義殿が話された計画のその後などをあれこれ打ち合わせしたく思った次第です。」
「特に何も無いですよ。」
「まさか何も無いわけがないですよね。どこまで行っているのしょうかね。それにこの辺は何か変わった建物が多いのですね。」
「おや、視察もですか。部外者は立ち入りを制限していますのでご注意くださいね。」
「そうですか、残念ですね。で話は戻りますが、現在右京大夫様のところでは多方面に渡る活動と、それを支える資金調達が出来ることが不思議な話として噂されております。」
「たまたまですよね。ね、種久殿」
「イエイエ、いつも計画を立てられるのは政義殿ですし。」
(アホ、何をいってるんじゃ!使えん。)
「そんなことはないです、小野崎殿や大山殿の献策もあってのことですよ。」
「そのあたりはどちらでも宜しいのですが、まじめな話どのくらい先を見ておられますか?」
(うん、まじめな話か。)「十年くらいかな。」
「そうですか、敵いませんな。」
「妙誉殿には家中での備蓄をしっかりするようにお願いしたい。この数年の間にですな。その後もかなり天候の変化や天変地異が起こるので。数年耐えられるように準備を怠り無なく。京や駿府、武蔵までは干ばつに、陸奥だと大雨や洪水などいつもの年のような収穫にはならないでしょう。京周辺などはその後逆に大雨になるなど作物の収穫に影響するのでね。準備さえしておけば攻撃する機会にもなるということです。ゆさぶりもかければ勝機を得られるでしょうから。」
「政義殿はご自身が天下を目指されますか?」
(なぜ皆聞くのかな。天下など目指さん。平定すれば平和になるから武力制圧するだけなんだよ。)「否です。人が飢えない世を作るのが一番。妙誉殿も僧籍に身を置いておられば分かると思いますが、信仰など今はほとんど役にたたないでしょう。何が悪いかといえば戦ですよね。戦が無くなれば死ぬ人は少なくなる。話し合って戦がなくなるなど詭弁でしょう。ならば強引に終わらせるのが早道。その後に政をしっかりやること。それは自分でなくても良いと思っていますので。」
「そうなのですな。」
(やっと終わった。一部の考えは隠したが、まずこんなところか。足利など不要とはさすがにまだ言えないよね。)
(大窪君はとりあえず山入のところの桧沢あたりで良いか。)
織田家の津島からの上納は十万石から二十万石相当にのぼると言われているよな。新密と日扇屋で現在の物販や税を考えれば、十数倍になるし。十万石だと三~四千人雇えるから。六万人とか簡単に集められる。だけど世の中を渡り歩くには、突出した一つだと目の敵にされて、具合が悪いことこの上ないよな。それなら並び立つものを作り、談合すればよいか。甚六のところでも新扇屋と大きな神社を作らせ、こちらと裏取引で進めれば、敵対勢力同士を使い潰しあっていけるかも。そのほうが楽か。豆州総鎮守の伊豆山神社の系列神社を掌握して総伊豆山神社として武蔵、相模、遠河の座を支配させるか。周辺の商人を取りこむか、つぶすかする必要もあるけど。ここも軍事、経済、信仰の三位一体でのコントロールですね。神社職はほとんど武将がらみですよ。
皆同じようなことをしてるんだよね。品川神社などの宇田川一族も神社職、町衆代表や建長寺の僧にも送り込んでいるし、海運で財を得ているわ、それで武将とかだし。ほらね、じゃないとこの時代では、権力を握れないですよ。身分制度が確立するまでは、脳筋だけではダメです。(実際には一番というなら海上交通運益かもね。)
いつもの夕飯の一こま。
「何このイカ。」と言うなり例のごとく台所へ向かう。
「イカはタコと似ているけど、身が違うから似すぎると固くなるんだよ。」
「煮るなら逆にもっと長時間かければよいけど、うまみがなくなるから注意してね。」




