出家しましょう(長享元年~長享2年)
松雲寺のお寺で修行することになった。経や所作を覚えたり、細々した仕事を覚え、こなしてゆく。だてに現世で35歳だった大人をなめるなよ。一応般若心経は知ってるし、記憶力は良いのだよ。その一方でお付の次郎に、親類縁者を通じてでも、それなりの立場の者を紹介してもらうように頼む。
やはり一人では無理だからね。配下の者を雇わないと。高野山でも所領は1万石なので、そこまでないが一応200石の寺で形だけは十分だけど、山林を含み実質石高はあまりないんだよね。逆にやりようはあるので問題なし。裏手の山に椎茸探しをする。
椎茸は、はっきりいって博打要素が多いので、自然採取では波が激しい。菌糸を水分に溶かしておがくずなどとともに原木に植えつけるあとは自然環境を整えてやる。本当は雷などの電気刺激があると良いのだけど、さすがにまだ無理だ。細菌やウイルスではないので寒天培養は必要ないので楽ですけど。次郎と一緒に原木になる落葉広葉樹の処理をしておこう。朝日が当たる場所で西日が当たらないように。生木はダメなんですよ。
時々寺に集まる檀家や村人へ向けて、ことあるごとに予言を披露しておく。「明くる年は疫病が蔓延し、京の都を含め大変になるので、外で作業をして帰ってきたら、きれいな水でよく手を洗う、うがいをする、糞便は一定の場所ですること。糞便の時もよく手を洗うこと。」
これを檀家の者や村人以外には話さないようにと言い含める。予言による洗脳です。次は数年後に干ばつの話をだせばよいか。予言による神童化です。お寺の乗っ取りの第1歩です。
次郎の家で椎茸をこっそり干し椎茸にしてもらい、売り上げを分配することで。信頼度を上げる。人間関係も商売も信頼は大事ですよね。
寺の日常は朝が早いし、修行も大変だし、雑用も多い。色々勉強もしないといけないし時間がないな。
来年の田植え前にいくつか話をしておこう。まず稲種の選別化、種まきでなく、苗植え作業と、正条植えの利点を話しておく。水田ならまず肥料は性急に行う必要性は薄いので、あとでよし。(陸生と水生でかなりちがうのよね。)数年は時間稼ぎになるかな。この時代小氷河期と言っているが、太陽の活動が落ちるのはそうだけど、気候的には干ばつと長雨冷夏が不定期に起こるから、食料自給が大変で戦争による略奪が起きやすいんだよね。そして地殻の変動期にもあたり、そりゃもう知識だけではどうにもなならんのです。
あと水車は、この時代でももうそれなりにあるし。水車そのものの開発など愚の骨頂。もし作るなら水車動力だよ。そ、石臼だけど、まずお金がないし。じゃ金儲けのための塩だといっても、生産量上がればよいけど、それだけで金儲けは出来ませんよ。一般庶民には安い塩でよいし、めちゃくちゃ良い塩をつくっても、塩なんてその差は僅かだし、どこで売りつけるの?交通費とか関税による諸経費上乗せ価格だと高価になって、誰が買うんだってなるしね。ただし、いずれ各種生産をはじめるためには荒塩、甘塩、苦汁など一通り生産できる体制は欲しいんだけどさ。瀬戸内海での入り浜式塩田や甘塩作りもそろそろやり始めているころだし、あちらのほうが一大消費地の堺や京に近いから有名だしね。後は越前や能登の塩か。あちらは揚げ浜式だったよね。水運で運べば楽だからね。関東以北だと地の利が悪すぎて、塩での金儲けは「?」だわ。もし販売するなら、この辺だと売りつけは下野か。やっぱり儲からないや後で良いか。
金属製農具か。この辺は微妙なチートだ。本来は稲作と同時に弥生時代に金属製農具も伝来して石製から金属への転換した農具が出土しているのに、いつのころか木製農具が広まって、さらに農業の改革とともに再度金属製農具の出現を見ることになるんだよね。コストのせいで木製を使って、それを長年使用したことによる、培った信用度の違い、使い勝手とかで木製でも良いとなったかな。でも農業改革で再度金属農具へ転換しないときついし、将来の機械化にもかかわるよね。
じゃ何をつくるかって?基本は鍬とシャベルの製作だよね。鍬も備中鍬と鶴嘴だけ製作すればよいわけではなく、平鍬、唐鍬も用途によって必要なんだよね。畦つくりには平鍬は必要だし、唐鍬も先端の大きさで苗木掘りや植物の根堀りに使うし。シャベルは多用途だけど、これだけで良いわけではないしさ。
そうそう「クワ」て字によって面倒なんだよね。鍬、鋤。中国と日本で使い方が違ったりね。文献を取り寄せるときには注意してね。
後は千歯扱きか。でも千歯扱きは鍛治と人手が必要なんだよね。特に修理がさ大変で、数年でメンテナンスは必要なんだ。仕事の手間の軽減になるけど数年ごとに修理も必要になるのに、誰がホイホイと新品を買うかっていうの。販売とメンテナンス体制が整ってこその広まりなのは経済流通の一つだよね。コスパが一番だけど。もうすこし金属の精錬がましになって耐久力が上がってからのほうが良いから。じゃ、後回し。
鍬の4種類、シャベル(深鍬と称し)を鍛冶屋で作ってもらい次郎の家や一族の者に使用してもらう。良さそうなら檀家の者や領地の者に使用してもらうようにしよう。
季節ごとに何かをしないとね。年明けの春に、草花が芽吹く山野を見ながら境内の掃除していて、ハタと一つ思いついた。戦争する、傷を負う、衛生意識が無い時代、薬もそんなにない、医者もそんなにいない。それなら山野で現在知識で薬を作ればよいんじゃない。偽医や自称の金瘡医が多い中、有効ならこれも金儲けになるかな。
そのうち専門職、技術職、事務職、営業職の育成もしないと。読み書き、算術(算木や算盤)やソロバン(この時代にソロバンは微妙だけど、普及は確か江戸時代らしいけど)、話術(言ってもよいこと、言ってはいけないことを徹底させないと。それにそれなりの話題を出しながら、欲しい情報の引き出し方など、営業には必要ですね。スパイにも。)将来的には学習塾とか寺子屋ですね。戦闘訓練、体力訓練を含めて教育です。教育は大事です。ちなみに九九の概念は平安時代に貴族階級では中国より伝来していますのでお間違いの無いように。万葉集に記載されているようなので。同じく面積の求め方や比例・反比例、ピタゴラスの定理まであるようなのですよ。ただし学者さん向けで、庶民は生活に必要ないから知りませんけど。