やんのみほ
読んでください!何でもしますから(何でもするとは言ってない)
照りつける日が差し込む。俺はどうしてここに居る?在る?ただひとつ、言えることがある…
「騙されたァアアアア!」
彼、基泰治はこの日曜日を一か月前から楽しみにしていた。
「ちょっとチョロすぎて地雷な気はしてたんだよ…」
というのも一か月前に悪友と共に『ナンパdeデートに誘うまで帰れまテン』と思いつきでナンパしまくる企画を立て、ものの見事に惨敗していたのだ。もう帰ろうかとカフェで考え始めた頃、一同に話しかけてきた女がいた。
「あのぉ~いいですかぁ?」
「はい?」
「デート、したいんですかぁ?」
「そうですけど…はっ、デートしてくれるんですかっ!!」
女は数秒考え込む素振りを見せ
「…うん、合格!いいですよぉ。一か月後このカフェに来てくださいね。じゃあねっ!」
「あっちょっ」
名乗ってもいないし名前を聞いてもいないのに女は走り去った。
これが一か月前の出来事である。そもそも日付も時間も曖昧であるのに、会えると考える方が無茶であるのだ。
「きっちり一か月後に来たんだけどなぁ…もう夕方だし来ねぇかな」
一人呟いた、次の瞬間
「……わっ!!」
彼は座っていたイスごと後ろに倒れた。足元から人が現れたのだ、驚いて倒れ込んだ彼を誰であろうと責めることは出来ない。
「なっ!ナンダァ!!」
「驚かしてゴメンね。でも君が『騙された』なんて叫ぶからだよ!私も傷ついたんだから、おあいこダヨ!」
コーヒーを一口含み時計を見ながら彼は言った。
「朝8時から待ってもう19時前だからね。むしろ褒めて欲しいんですけど…」
腑に落ちない部分はあったが、一応の納得はした彼は疑問をぶつけた。
「それで、今までどうしてたの?」
彼女は目を逸らしながら
「乙女には色々と時間が必要でねぇ」
怪しい。そう思った彼は女の様子を観察するとあることに気が付いた。
「目、赤いな。後寝ぐせ付いてる。」
「お代官さまぁじろじろ見ないでぇぇぇぇ…」
要約するとデートが楽しみで寝付けず、朝に二度寝して今に至るということらしい。
「遠足前n」
「あ~言わなくていいよ」
周りの人からも言われてきたのだろう、掘り返しても時間の無駄だと思った彼は残りの時間をどうするか女に尋ねる。
「時間?関係ないよ」
「どういうこと?」
彼女が何やら呟くと、突然の眠気に襲われ彼の意識は途切れた。
体が冷たい。彼は意識を取り戻したと同時にそう思った。
「あっ起きたんだね、おはよう!」
あの女だ。
「ここはどこだ?」
「んっとね、私の家の地下だよ!今日から君が住む場所になるかなぁ」
「住む?一体…」
「今日から君は私のものだよ、ずっと待ってたんだぁ。6年前くらいかなコンビニの前でアイスを食べてる君に一目惚れしてね。君が引っかかりそうな感じの女の子を演じられるように努力したんだよ?君がナンパをするって聞きつけて、諦めそうなタイミング見計らって話しかけたの。あんな強引なデートのお誘いでも君は来てくれるって信じてたよ…はぁ嬉しい、これから君とずっと一緒に居られるなぁ。ねぇ何しよっか、何でもいいよ。時間は、それこそ何十年と有るんだから!!」
彼は思う、逃げなければと。
「あっあとね、ここからは出られないよ。生体認証って知ってる?この部屋は出るのにも入るのにも私の目と声と静脈が必要だから。」
「そ…んなこと」
「あるんだよ?じゃあこれからいっぱい愛し合おうねっダーリン!!!」
その後、町中で彼の姿を見かけた者はいなかった…
完