じゃじゃ馬ならし?
アイリスの相手の男性視点で書いてます。
さっぱり甘くないので、甘いのがお好きな方にはオススメしません。
あの日、初めて自分が守護するべく王女と対面した瞬間、彼女に全てを捧げようと思ったのは嘘ではなかった。
だがしかし、誰がこの現状を予想できたであろうか・・・
初めて対面した王女は、まだまだ幼い少女であり、それはそれは人形のように愛らしい姿をしていた。
色彩は陛下と王妃様からそれぞれ譲り受けられ、顔立ちはどちらかというと陛下に似ていらっしゃるようだったが、それでもとても整った顔立ちで将来は引く手数多な女性になると予想できた。
見た目だけならば、今現在もとても整った容姿をされていらっしゃる。
しかしである。
その王女がなぜ今現在、俺の寝室の寝台の上に座っているのか誰か説明してくれないだろうか・・・
「アイリス様・・・なぜあなた様が私の部屋にいるのか、説明していただけますでしょうか?」
「もちろん、夜這いよ!」
この王女は、言うに事欠いて女の身である自分から男の俺に【夜這い】を掛けにきたと宣言した。
「アイリス様・・・意味はわかっておっしゃられていますか?」
「当たり前じゃないの!知らずにこんなことするほど、私はバカじゃないわよ!!」
もう溜め息しか出ないとは、こういうことを言うのだろうか・・・
どこをどう間違ったら、王女が近衛騎士の部屋に夜這いに来るというのだ!
「大丈夫!この国は王族であっても恋愛結婚推奨よ!」
「いや、確かにそうですが・・・それと、今のこの状況は関係ないでしょう?」
「あら、関係大有りだわ!
さっさと既成事実作らないと、レイがどっかの令嬢に取られちゃいそうだもの!
私もいい加減婚約でもしておかないと、好きでもないどこぞの子息とか王子と結婚させられちゃうじゃないの。」
この美人の部類に入るであろう王女の口から【既成事実】などという言葉を聴かされると、眩暈がしてきそうになる。
実際、王女と話したこともない貴族の子息連中などは、見た目だけで夢見てお近づきになりたいと思っている者も多いが、長年間近で現実を見て知っているだけに夢は今更見ることもない。
「全くあなた様は、どこでそんな言葉を覚えてくるのか・・・陛下が聞いたら倒れてしまわれますよ。」
「あら大丈夫よ。
お父様はお母様の辛辣な言葉で鍛えられているから、多少のことでは動じたりなさらないわ。
それよりも、レイ。」
「なんでしょうか?」
突然真面目な声音で名前を呼ばれ見つめられると、一瞬ドキッとしてしまうのは仕方がないと言えよう。
いくら幼少時より身辺警護として仕えて来たとはいえ、やはり彼女はとても魅力的な美少女に育っているのだ。
別に俺は幼女趣味などは持っていないし、ずっと見てきただけに彼女のいい所も悪い所も全て把握していてもだ。
「レイは、私のこと・・・嫌い?」
少し翳りのある瞳で首を傾げてそう美少女に言われて、グッと来ない男がいたら殴ってしまえ!!
「別に嫌いではありませんよ。」
「じゃあ、好き?愛してる??」
今度はきらきらとした期待を込めた目を向けられ、俺は本気で溜め息を付いた。
「全く・・・自分でもなんでだろうとは思いますけどね。
たぶん、初対面のときから私はアイリス様のことは好きですよ。」
「ほんとに!?じゃあ結婚して!!」
「いや、それはいきなり過ぎでしょう!
まずは陛下に許可をいただかないと・・・」
「だから大丈夫だって言ってるじゃないの!
うちの王家は恋愛結婚推奨なんだから!」
相変わらず彼女はこうと決めたら即行動のようである。
「まったく・・・まずは正式に婚約からでお願いします。」
「あら、じゃあちゃんとプロポーズしなくちゃいけないわね。」
「そうですね・・・では、
アイリス・ヘーゼルクラン・ファリア王女殿下、私レイノルド・リード・アルバインの妻になっていただけますか?」
俺は寝台に腰掛けている彼女の前に跪くと、左手を取って正式なプロポーズの言葉を告げた。
その言葉に、彼女はとても嬉しそうに微笑んで・・・
「もちろん、喜んでお受けいたしますわ。
ふふ・・・レイ大好き!」
と言ってそのまま跪く私に飛び掛かる形で口付けてきたのだった。
「まったく・・・このじゃじゃ馬王女が!
どこの世界に、近衛騎士を押し倒して口付ける王女がいるんだ!!」
「それはもちろん、レイの目の前に!」
「降嫁してきたら、躾け直してやるから覚悟しとけよ。」
「あら、レイに躾けられるなら望むところだわ。
もっとレイ好みになって、溺愛させてみせるわよ!」
どうだとばかりに胸を張る彼女に、俺は脱力するばかりだった。
それでも俺は、恐らくずっと恋焦がれていたのだろう彼女を手に入れられて満足していた。
甘くするつもりで書き出したのに、ぜんっぜん甘くならなかったです。
期待した方すいませんでした!!
なんでこうなった!!と私が言いたいです・・・