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歯医者に行こう!

感想とか貰えたら嬉しいです。

ぐっと拳を握りしめて喜びを噛み締めますよ。


 親知らずに悩まされて、歯医者に行った時の事を、語ろうと思う。

 数週間前から、奥歯に微妙な痛みを感じていたんだけど、二、三日前から本格的に痛みだし、喋る事も辛くなり始めたんで、現場近くの歯医者に行ってみたんだ。


 ちょっとボロい建物だけど、患者さんはそこそこ居るっぽい。

 受付の若いお姉さんに、症状を説明して大人しく順番を待つ。

 病院っぽいところのナース服ってのは、女性を3割増し位美人に見せるから不思議なもんだよね。

 更に歯科助手に至っては、マスクで目元だけしか見えないから、脳内補正にて修正されて、5割増し位は美人に見えてると思う。

 勿論お姉さんをガン見する事を怠ったりはしない。

 どうせ地元ではない出稼ぎ先の歯医者だ。

 お姉さんに嫌われようとも、痛くも痒くもない。

 まぁ、奥歯は現在進行形で痛いんだけども。

 だから見るよ。

 超見るよ。

 エロい目で見て、脳裏に焼き付けてやるのだ。


 暫くお姉さん観賞を楽しんでいると、名前が呼ばれ、そして治療室へと入っていく。

 歯科医の先生に、軽く症状を説明した後、診て貰う。

 ちなみに先生は美人なナイスバディ! ではなく初老に差し掛かった位のおっさんでちょっと残念。


「やっぱり親知らずだね。奥の方から生え始めてるよ」


 どうやら、虫歯や歯ぐきの病気という訳ではなかったっぽい。

 結構痛いんですけど、何とかならないですかね?


「レントゲンを見た限りじゃ、まだ抜くにはちょっと早いかな」


 ほえー。まだ早いとかあるんですね。

 どれくらい経ったら、抜ける様になります?


「人それぞれだけど、二週間から一カ月位かな」


 最低でも二週間かぁ。

 それは困る。

 現場作業は、声が出せないと、マジで命に関わるからな。

 何とか今から抜けませんかね?

 二週間も仕事に影響するのは困るんで。


「今からかい?

 うーん……ある程度生えてからじゃないと抜くのも大変なんだよねぇ。

 それに麻酔も内部の方まで効かないかも知れないんだ。

 もしキチンと効かなかった場合は凄く痛いよ?」


 確かに、氷山の一角程度しか出ていない親知らずを抜くのは、かなり大変そうだよな。

 そりゃ、先生も抜きやすくなってからやった方が楽だろう。

 恐らく麻酔云々の話は、半分位は脅しなんじゃないの?

 でもそれじゃ困るんだよな。

 渋る先生を何とか説得しようじゃないか。

 

 

 五分後。


「本当に良いんだね? 始めてしまったら途中で止めれないからね?」


 大丈夫ですって、後からガタガタ文句は言いません。

 ひと思いにやっちゃってください。


「仕方ないな。始めるよ」


 麻酔を掛けて貰うと、早くも口の中が痺れて痛みが分からなくなり始める。

 おお。なんだよ。麻酔ってば、ちゃんと効くじゃんよ。

 これなら歯科助手のお姉さんの御尊顔を堪能してりゃ、あっという間に終わるんじゃね?

 話はそれるけどさ。助手のお姉さんに口の中吸われるって、文章にするとちょっと艶めかしいよね。

 余裕綽々な態度で親知らずの抜歯に挑む俺なのであった。




 十分後。


 俺は前言を撤回しよう。

 全力で撤回しよう。

 あまりの激痛に、ガタガタ言ってしまっている。

 主に全身で。


 何これえええ!

 超痛えええええ!

 これで麻酔効いてんの?

 全身が小刻みってレベルじゃない位に、震えてんですけど!?

 何よりもだ。

 力んでる所為か、先生の目が血走ってて、すんげー怖い!


「ほらね。凄く痛いでしょ? でも君、大したもんだよ。うめき声一つ上げないなんてね」


 いや、本当のところはもう限界近いです!

 今すぐ泣き喚きたいです!

 ごめんなさい。

 俺、調子に乗ってましたあああああ。

 あと、助手のお姉さん!

 あんたマスクをしてるから、ばれてないと思ってるんだろうけど、笑いを噛み殺してるのバレバレですから!

 何だよ!

 ドSかよ!

 人は目元だけで、こんなに豊かに感情を表せるんだって、俺は今日初めて知ったよ!


「君の親知らずは凄く丈夫だねぇ。

 まだ暫く時間が掛かりそうだ。

 麻酔もう一度掛け直そうか」


 はい! お願いします!

 ガンガン掛けちゃって下さいよ!


 その時だった。


 不意に鳴り響く雷鳴。

 それと同時に消える照明。

 どうやら夕立による落雷で停電したっぽい。


「あら。停電したみたいだ。

 少し待っててね。非常電源に切り替わる筈だから」


 良かった。

 非常電源があるのか。

 流石は医療機関の端くれだけはあるな。

 ボロい建物だとか思ってごめんなさい。

 だけど…… 数分経っても電気が点く様子はない。


「あれ? ひょっとして故障かな?」


  

 ちょっと待てえええええ!

 やっぱボロだったああああああ!

 俺、どうなっちゃうの?

 このまま放置とかされたら泣いちゃうよ。

 生まれたての赤ちゃんの如く泣いちゃうよ。

 皆の衆これから俺の事は、赤ん坊の心を持つ大人、赤さんとでも呼んでくれ!

 などと、思考の迷路に迷い込んだ俺に、先生が申し訳なさそうに口を開く。


「何時復旧するか分からないし、このまま続けようか」


 マジですか?

 あんた正気ですか?

 本当に大丈夫なの?

 そんな俺の疑問を感じ取ったんだろう。

 先生は再び口を開いた。


「何度も麻酔も掛けられないしこのままって訳にもいかないだろう?」


 ちなみに俺の口は、ずっと開きっぱなしだ。

 血なのか涎なのかよく分からん物質が分泌されまくってる。

 いや、先生の言ってる事は分かるよ。

 でもな、込み上げる不安が止まらないんだよ!

 ついでに本格的に麻酔も切れてきちゃって、全身の震えも止まらねーよ!

 麻酔って二時間位で切れ始めるものなんだな!



 結局、夕闇の中で、抜歯は再開される事となった。

 頼りとなる灯りは、助手のお姉さんが手に持つ懐中電灯のみですよ。

 夕闇の中に懐中電灯の灯りに照らされて、浮かび上がる先生と助手のお姉さん。

 ぶっちゃけるとすんげー怖い。

 さっきまでの血走ってた状態よりも、遥かに不気味だっての!


 静まり返った中で、先生の荒い息使い。

 そしてミシ…… ミシメシ…… と、親知らずが軋む音だけが聞こえる。

 早く抜けてくれよ。

 前に抜いた時は三、四十分で抜けたんだけどなあ。

 こんなに時間掛かるなんて、このひょっとしておっさん下手なんじゃないの?

 そんな失礼な考えも浮かぶ。

 でも勘弁してくれよ。

 だってマジで痛いんだもの。


 冷房も切れてるから、先生も汗だくだ。

 噴き出した先生の汗が、俺の口の中に飛び込んできそうで怖いんですけど。

 助手のお姉さんのならさ、何時でも何処でもウェルカムなんですけどね?

 メイクをしているから、汗に化粧品が混じって体に良くなさそうだが、そこは気にしない。

 件の助手のお姉さんと言えば、俺の口から垂れ流される涎なのか血なのか定かでない液体を拭ってくれている。

 ってかあれ?

 電灯係も別にいるし、何時の間にか一人増えてんじゃん。

 三人組掛かりで至れり突くせりか。

 うん。

 悪くないんじゃないか?

 メインは初老のおっさんだけどね!

 


 などと、必死に気を紛らわせる事、数十分。

 抜歯を始めて三時間ちょい。

 歯医者に訪れた時間から考えるならば、四時間近くたった頃。


『カラン』


 という音と共に、親知らずがトレーの上に放り出される。

 漸く親知らずは、抜けたらしい。

 物凄く時間が掛かった理由は、まだ奥深くに親知らずが埋まった状態だった事と停電。

 そしてもう一つ理由があったらしい。


「何この歯!? 長い事歯医者してるけど、こんなの初めて見たよ。歯の根っこが普通より一個多いよ。道理で中々抜けない訳だ」


 どうやら俺の親知らずは突然変異なのか、進化していたのか、分からないが、通常四個ある根っこが五個あった為に、普通の抜き方じゃ上手く抜けなかったという事みたいだ。


 そして結局停電は抜歯が終わるまで、復旧しなかった。

 終わってから見計らったかの様に、復旧したのは言うまでもないと思う。



「いや、結構長い事歯医者やってるけど、こんな経験は初めてだったよ」


 先生はそう言ってニカっと笑う。

 一仕事終えた良い笑顔だ。

 そりゃそうだろう。

 こんな事が頻繁にあったら、誰も歯医者になんて、行かなくなるだろうよ。

 それよりも気になるのが、助手のお姉さんだよ。

 先生以上に、やりきった表情してる気がするんだけど。

 あんた途中から懐中電灯持ってただけじゃん。


 こうして、何とか親知らずを抜く事に成功(普通は失敗するような行為でもないんだろうけど)したのだった。

 ちなみに翌日、凄まじく腫れあがった顔で仕事に行ったら、物凄く笑われる羽目になりましたよっと。

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