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本屋に行こう!!

最近本屋さんに行った時の話で、親切な店員さんとおバカな生際防衛隊のお話です。

 小説家になろうのとある作家さんの活動報告にて。

『ベルガリアード物語』

 という海外のファンタジー小説の話題があったんだ。

 今まで日本の本しか読んでなかったんで、興味を持ち、レビューなどを調べてみると、少し古い作品らしいが、評判は良さそうだ。

 ここ数年程小説など買っていなかった俺は、この機会にこの本を買ってみようと思い立ったんだ。


 そんな訳で、向かった先の本屋さんは、自宅から車で10分程。

 それ程大きくはないが、何時もお客で賑わっている本屋さんだ。

 まあ、多分賑わっている理由は、店員さんに一人すっごい美人がいるからだと思うけれども。


 一通り自分で探してみるが、探し物は見つからない。

 ここは素直に店員さんに聞いてみた方が良いだろう、という結論にいたる。

 この本屋さんには、雑誌など買うために週に2~3度訪れている。

 そんな訳で店員さん達とは、多少雑談をしたりする程度には顔なじみなのだ。

 なので、レジに2人いた店員さんに気軽に声を掛けてみる。


「すいませーん。探してる本があるんだけど」

「はいはい。探している本の題名はわかりますか?」


 返事をしてくれたのは、美人さんな店員さん、ではなく、ちょっと丸い方の店員さんの方。

 というか、この店員さんは明らかに男性客と、美人さんを喋らせないようにしている節があるなぁ。

 恐らく美人さんを、ナンパから守っているんだろうけど。

 美人ではないが、いつもニコニコと接客しているその態度は好感が持てるし、嫌いじゃない。

 美人さんと喋れないのは、ちょっぴり残念ではあるけど、今日の目的はそこじゃない。

 さっさと本来の目的を、達成する事にしよう。

 俺は口を開こうとするが、ここで一つ問題が起きる。

 探している本の題名を忘れちゃったんだな。

 遂さっきまで覚えていた筈なのにな。

 うーむ。

 参ったな。

 どうしても、思い出せなくなっちゃったぞ。

 店員さんは、そんな俺を急かすでもなく、ニコニコと笑顔で待ってるし。

 このままじゃヤバい。

 何か言わなくてはと、慌てて口から飛び出した言葉といえば。


『バリアフリー物語』


 これだ。

 脳みそをフル回転させて、なんとか絞り出した言葉がこの有様。

 自分で言っておいてあれなんだが……

 これじゃない感が物凄い。

 大体、普段バリアフリーについて考えた事など、微塵もないのに、どこからこんな言葉が飛び出したのか謎過ぎる。

 そんな俺の内心を知ってか知らずか分からないが、店員さんは相変わらずニコニコと笑顔を浮かべながら口を開く。


「バリアフリー物語ですか。私は聞いた事がない題名ですね。ちょっと検索して調べてみますね」


 そう言うと、店員さんは徐にカタカタとキーボードを叩き調べ始めてしまった。

 ごめん店員さん。

 そんな本は存在しませんから!

 完全にでまかせですから!


 いや、待てよ?


 もしも、本当にバリアフリー物語なんて本が存在していたら……

 どうしよう?

 流れ的に、買わざるを得ないよな?

 そんな本いらーん!

 頼むから見つからないでくれ! などと、願ってみる。

 そして10分程が過ぎた頃だろうか。

 遂に検索が終わったらしい。

 店員さんがPCから視線を外しこちらをみる。

 どっちだ?

 アウトなのか?

 セーフなのか?


「うーん。見つからないですね。申し訳ありません」


 セーフ!!!


 どうやら俺の願いは、無事にどこぞの神様に聞き届けられたようだ。

 在りもしない本を、延々と調べさせられた店員さんには、申し訳ない事をしたと思うが、ホッとした。

 心底ホッとしたわ。

 だが、話はここで終わらなかったんだ。


「お探しの本は見つかりませんでしたが、バリアフリー関連の書籍のコーナーへは、ご案内できますよ?」

「お願いします……」


 店員さんの親切に、既に俺の心は土下座状態。

 素直に頷くしか道はなかった。

 店員さんは、目的地に案内を終えると、ニコニコと会釈をして、レジへと戻っていく。

 そうして案内された先に存在したバリアフリーの領域は。

 あまりにも狭く、本の種類も精々20種類あるかどうか、という感じである。

 流石に、このまま直ぐ帰るのは、店員さんに悪い。

 仕方がないので、意味ありげに頷きながら、その中の一冊を手にとってみたりしてみる。

 うん。

 どうみても、俺の求めるファンタジーは……


 ない。

 ある訳ない。

 ここにあるのは、数十年後に訪れるだろう圧倒的なリアルだけだ。

 結局暫く時間を潰し、書店を後にした。

 こうして、本屋にファンタジーを求めた初戦は、何とも言えない敗北感と共に終了したのだった。


 惨敗を喫した二日後。


「ブルガリアード物語、ブルガリアード物語っと。

 良し完全に覚えたな! それじゃ今度こそリベンジしてやるからな!」


 一人ぶつくさと呟きなから、本屋さんへと向かう。

 題名を直ぐに忘れるというのなら、メモでもすれば良いのだろうが、前回の敗北が脳裏に焼き付いており、(敗北ってお前は一体何と戦ってるんだと問われても応えられないけど)これを払拭する為にも、メモは取らずに挑む所存だ。


 こうして再戦を期し挑んでみたものの、今度は完全に間違って覚えてしまっていたらしい。

 調べて出てきたのは、当然の様に、某ブランド関係と、某ヨーグルト関係ばかりだ。

 どちらも、そこはかとなくロマンはありそうな気はしないでもないが、またしても、俺の求めたファンタジーはなさそうだ。

 今回も負けを認めて撤退し、潔くメモを取ってくるべきなのだろう。

 だが、ここで思わぬ救いの女神が現れる。


「あの~ひょっとして、お客様が探しているのって、ベルガリアード物語じゃないですか?」


 そう言って現れたのは、美人の方の店員さんだった。

 どうやら美人さんは、前に来た時のバリアフリー物語の時点で、そうじゃないかな? って思っていた様ではあるが、今日のブルガリアード物語で確信したらしい。

 見るに見かねて、声を掛けてくれたみたいだ。


「おお。なんだかそれっぽい気がする!」

「ただ、これ日本の作品じゃないんですけど……」

「そうそう! 確かデーブスペクターっぽい名前の作者!」

「いえ。デイヴィッド・エディングスですけど。ひょっとして馬鹿にしてます?」

「ごめん。馬鹿にしてるつもりはないんだ」


 俺が馬鹿なのは認めるけども、店員さんを馬鹿にしているつもりは全くない。

 まぁ、何度も存在すらしない本を探させられたりしたら、そう感じても仕方がないよなぁ。

 これからは詰まらん意地を張らないで、素直にメモを取るようにしようと思う。


「在庫はないので、取りよせる事になりますが、どうしますか?」

「それじゃ、お願いします」

「全部で5巻あるんですが、どうしましょう?」


 ここまでして貰っといて注文しないっていう選択肢は……

 流石にない。

 全部で5巻もあるのか。

 うーん。

 何度も注文するのも悪い気がする。

 でも、全巻買ってしまってから読んでみて、気に入らなかったとしたら、それはそれで勿体ないよな。

 どうしたもんかなぁ。

 こうした俺の悩みが伝わったのか、美人さんが口を開いた。


「この作者の本は面白いですよ。私は全部持ってますし」


 そうなのか。

 全部持ってるのか。

 ファンタジー好きなのか。

 これは良い事を知れた気がするな。

 どうせなら美人さんの手汗が染み込んでるのが欲しい、とか口走りそうになったりもしたのだが、口に出すのは踏みとどまる。

 多分美人さんってば、こういう類の話はNGな人だ。

 幸い今は12月だし、年末年始の休みなら5冊くらい読めるだろう。


「それじゃ、全巻まとめてお願いしゃっす!」


 という訳で、4日後、無事にベルガリアード物語を、手に入れる事が出来た。

 丸めの店員さんも、美人の店員さんも、親切に応対してくれて、本当にありがとう。

 次回からは、ちゃんと欲しい物は、メモしてから尋ねるようにするからね。

 こうして、店員さんの優しさによって、今まで特に気にしてなかった本屋さんという場所が、ほんの少しだけ好きな場所になった生際防衛隊なのでした。

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