山吹の咲く頃に ~ 信じる気持ちは、壊れも薄れも致しません ~
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「大丈夫、必ず帰ってくる。そうだな、この山吹が次に咲くころに……」
サイラスはそう言い残し満開の山吹と私に見送られ戦場に行ってしまった。
サイラスは、片田舎の騎士爵で。伯爵家の次女であった私は、父の反対を押し切り勘当同然で彼に嫁いだ。小さな教会で二人だけの結婚式をした頃、すでに隣国との関係は緊迫した状況になっていて、ついには開戦。
サイラスは騎士として最前線の戦火に向かう。
それは小さな家で二人、暮らし始めて3か月目のことだった。
✿ ✿ ✿
「エスタ!大丈夫」
マーサがふらついた私を支える。
マーサはこの領地を管理する子爵家の娘で、王都学院で出会った私の親友だ。
サイラスともマーサを訪ねて来た時に出会った。
「マーサありがとう、最近なんだか眩暈と吐き気がするの。疲れているのかしらね」
マーサが私の顔を覗き込み眼の下をグイっと引き下げる。
「エスタ。月巡りはいつ?貧血にもなってるみたいだし、もしかして……」
「そう言えば……」
「ルナができた時の私と同じ感じだもの、直ぐにお医者さんに診てもらいましょうよ」
マーサは王都学院を卒業すると同時に、優しいお婿さんを貰い昨年女の子を無事に出産した。
嬉しそうに私を見るマーサから眼をそらし私は下を向いた。
「…………」
「もしかして今月も届かないの?戦争に向かった騎士たちの家族には本人からもだけど、国からだって援助が毎月届くはずよ、シャーロンのところには先週届いたって……。」
私はうつむいたままぎゅっと拳を強く握った。
もし大切な命が宿っているのなら、私がしっかり守らないと。
私は勢いよく顔を上げた。
「マーサ、私が伯爵家から持ってきた宝石をいくつか買ってくれない?そうしたら診察も受けられるし、少しの間生活もしていける」
「もー私を誰だと思ってるの?ここの領主婦人よ!困った時はお互い様、診察代くらい私がおごってあげるからその宝石は本当に困った時のために」
強く握りしめた拳をマーサが優しく包む。
「さあ。善は急げ!行きましょう」
マーサに連れられてきた産院で、私は妊娠3か月くらいだろうと診断された。
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身重となり、つわりがひどかった私は、半日だけ働いていたパン屋の仕事もできなくなり、結局マーサの優しさに助けられ、モックス子爵家の離れに住み込んで掃除など簡単なハウスメイドの仕事を貰い、食事も賄いでいただける様になった。
一人で暮らしているよりも安心でとても助かる。
妊娠がわかってから4カ月、お腹がだいぶ目立つようになってきたが、体の不調は良くなりハウスメイドの仕事もこなせるようになってきた。
「エスタ、だいぶ仕事もできる様になってるしお給金だって出すのに、本当にいいの?」
「もちろんよマーサ。ろくに働けない私にこうして住む場所と食事を提供してもらうだけで、私もこの子も助かってるんだから」
お腹をさすると、ぐ~と押されるような大きな体動がした。
「わあ。エスタが痩せているのもあるけど、もうすっかり体動が外から見てもわかるわね、それも元気!男の子かしら?」
カランカラ~ン。カランカラ~ン。
領地に乾いた鐘の音が響く。
私は窓の外に眼を向ける。
「また誰か無言の帰宅……。」
領地内の誰かが、戦死して帰宅するとあの鐘が鳴らされて弔いの列ができる。
「シャーロンのご主人よ……毎週送られてきた手紙が3週間前から届かなくなって、昨日……訃報が届いたの……。」
「シャーロン……大丈夫かしら……。」
私は思わず自分の膨らんだお腹を抱きしめた。
片田舎には戦況がなかなか伝わってこない。
「ほらほら、便りがないのは元気な証拠よ、お母さんの元気がないと赤ちゃんも不安になるわ!
それにしてもエスタをこんなに悲しませるんだから、サイラスは帰ってきたらこの私がただじゃおかないんだからね」
「ありがとう。マーサ」
マーサと2人声を出して笑う。
笑ったら少し元気が出た。
この子を守り、サイラスを信じて待つ。
マーサの言う通り、何も連絡してくれなかったことはグーパンチ!一発で許してあげよう。
私達の笑い声は、薫風と一緒に空に消えて行った。
✿ ✿ ✿
空の色が薄くなり肌寒くなた頃、私は元気な男の子を生んだ。
髪と眼の色は濃いブロンドに青い瞳でサイラスと同じ。
私は男の子に幸多い人生を願い、アシェルと名付けた。
「もーイラっとするくらいサイラスに似てる~」
マーサがアシェルを覗き込み、ぷにぷにの頬を突く。戦場に行ってから一度も手紙もお金も送ってこないサイラスの評価はマーサの中で地に落ちている。
「もうマーサ、アシェルがお父さんを嫌いになったら困るわ」
「もう本当にエスタは……私がいい男見つけてこようか?」
「私はサイラスを信じているわ」
アシェルがぱちりと眼を開けた。
「本当にお父さんにそっくりね」
~ ~ ~
アシェルのお世話にあわただしく月日は流れ、気が付けば冬枯れも終わり暖かな日差しを感じられる季節になっていた。
「アシェル。今日はお散歩に行こう」
私は山吹の咲く道に向かった。
領地の入り口は小高い山があり、その山を越え王都に道が続いている。
山を登る道の脇にはこの季節、山吹が咲いて風に揺れている。
「わあ。今年も綺麗に咲いているわ。アシェル見える?」
アシェルはすやすやと眠っている。
あれからもう一年……マーサには大丈夫と話すけど……。
サイラスを思い、涙が溢れそうになった。
私は涙がこぼれない様に空を見上げる。
この空はサイラスのいる戦場にも続いている……サイラス……元気なの?
今どこにいるの?
私達の宝物が産まれたんだよ……。
せっかく上を向いたのに、涙が溢れだす。
春疾風が山吹を揺らし黄色い花びらが青い空に舞い上がった。
「…………サイラスのバカーーー。」
叫んだら少しすっきりした。
アシェルがニコニコして私に両手を伸ばす。
「お父さんも頑張ってるから私達も、もう少し頑張ろうね」
✿ ✿ ✿
アシェルがハイハイをしだしたころ、一進一退を繰り返していた戦況も我が国が勝利を収め終戦直前だと吉報が届いた。
「あいつ!こんな状況になっても何も言ってこないなんて」
暑い日差しを避けて子爵家の庭先で桶に水を溜め、ルナちゃんとアシェルを水遊びさせながらマーサはプリプリと怒っている。
最近のマーサはサイラスを名前でも呼ばなくなった。
「マーサが怒ってくれるから私が冷静でいられるわ」
視線の先でモックス子爵家の門前に大きな馬車が止まった。
馬車からきらびやかな女性が降りてくる。
女性はどんどん近づいてきて私の前で止まった。
「あらエスタ、こんなところに居たのね、ハウスメイドのワンピースが良く似合っているわ」
マーサがグイっと前に出る。
「あらボルジア侯爵令嬢のマリア様が、モックス子爵家の領地になんの御用ですか?」
マリアも王都学院の同期で、悪評が高く顔は知っている。
「おほほほ。やっぱり知らなかったのね、私とサイラス様が結婚することになったのよ、彼は今回の戦で戦果を挙げて、今や英雄。
ライト侯爵様も過去の失態は許してサイラス様は晴れて侯爵家に戻るの」
マリアが私に金貨がたくさん入った袋を投げつけた。
「痛い」
袋は私の肩に当たり数枚の金貨が飛び出す。
「これはサイラス様からの手切れ金よ、受けとりなさい」
こぼれ落ちた金貨を拾い集め袋に入れてマリアに突き返す。
「私はサイラスを信じています。そして今も夫婦です。離婚するにしてもサイラスから言われた言葉しか信じません」
「伯爵令嬢ともあろうものが、お金がないからそんなみじめに働いているんでしょ。受け取りなさいよ!そして私にサイラス様を寄越しなさい!元々サイラス様は私がずっとお慕いしていたのよ」
マリアは扇子を振り上げ思いきり私の頬を打ちつけた。
「…………私はサイラスの妻です、彼以外の言葉は信じません」
マリアは扇子をミシミシとへし折り投げ捨てる。
「受け取らなかったことを後悔するといいわ」
「あー」
私の方へ、アシェルがハイハイで近づいて来る。
「あら。もしかしてサイラス様の子供?庶子が居たら厄介なんだけど」
私の足元に届く前に騒ぎを聞きつけて駆け付けていたフレディー様がアシェルをひょいと抱き上げる。
アシェルは抱っこしてもらってご機嫌でフレディー様の髭を引っ張る。
「あーあー」
「ボルジア侯爵令嬢、この子はモックス子爵家の大事な跡取りで私の息子です、そちらの問題に巻き込まないでもらいたい」
「あら。マーサの子なの、良かったわ。
エスタ、後悔させてあげるから待ってなさいよ」
マリアは大声で私を罵り馬車に乗り込み去って行った。
「エスタ、大丈夫?頬が腫れてる」
マーサが駆け寄りそっと頬に触れる。
「さっき王都のタウンハウスから早馬が来た。サイラスからだ」
小さく折りたたまれた紙を開く。
=直ぐに向かうが、ボルジア侯爵令嬢に気を付けろ=
久しぶりに見るサイラスの字だ。
急いで書いたのか、字が斜めになっている。
「あの様子だと何か仕掛けてくるぞ」
フレディー様がメモを覗き込みつぶやく。
「エスタ、アシェルを連れて脱げなさい」
マーサが私の肩を掴む。
「でもマーサやフレディー様に迷惑が掛かる」
「俺たちは大丈夫だ、任せろ。俺の実家のオーグ伯爵家は隣の領地にある、直ぐに連絡しておくらか夜に紛れて伯爵家に迎え、伯爵家に居ればサイラスが戻るまで二人を守れる」
「従者のマイクは信頼がおけるし武術にもたけているわ、伯爵家までついていかせましょう」
私はフレディー様からアシェルを受け取りぎゅっと抱きしめる。
日が落ちるのを待って私はすやすや眠るアシェルを抱き、マイクと共にモックス子爵家を後にした。
✿ ✿ ✿
「おい!エスタという女を出せ!」
真夜中、モックス子爵家は黒ずくめの騎士たちに踏み込まれていた。
「人の家のドアを壊しておいてただで済むと思わないでよ」
マーサが鍬を振り上げる。
「おい。マーサやめろ、相手は騎士だぞ」
フレディー様がマーサの振り上げた鍬を掴む。
「ボルジア侯爵家の騎士の皆さんですか?令嬢もいるのでしょう。我がモックス子爵家はもめごとに係わりたくありません。エスタには申し訳ないが、これ以上は無理だマーサ。
エスタは裏の小屋に監禁しています。簡単にはでられない様に柱に括り付け、ドアの鍵は蝋で詰めた。小屋ごと燃やしてもらってかまわない」
「フレディー考え直して」
マーサがボロボロと涙を流す。
「おほほほ。エルダも最後に親友の夫に裏切られるなんてね」
騎士達の後ろからマリアが姿を現す。
「モックス子爵。その小屋に案内して頂戴」
フレディー様が誘導する。
「こちらです。ボルジア侯爵令嬢」
「やめてフレディー」
泣き叫び、駆けだすマーサを侍女が抱きついて止める。
「奥様!子爵家のためです」
「エスター」
ボルジア侯爵令嬢が高笑いをして部屋を出ていく。
「…………」涙がぴたりと止まったマーサが壊されたドアに向かってあかんべーをする。
「奥様。迫真の演技でした。あとは旦那様ですね」
~ ~ ~
「ボルジア侯爵令嬢、ここから覗いてみてください、柱に縛ってあります」
壁の隙間から柱に縛られた人影が見える。
「まあまあ。あの忌々しいプラチナブロンド!確かにいるわね。 みんなこの小屋を燃やしてしまいなさい」
指示を受け騎士たちが小屋に油を撒いて火を放つ。
小屋はみるみるうちに炎に包まれた。
「あはははは。これでサイラス様は私のものよ。モックス子爵~。後始末はよろしくね」
小屋全体に火が回るのを見届け、ボルジア侯爵令嬢は上機嫌で帰って行った。
✿ ✿ ✿
同じころ私はひたすら伯爵家を目指して山道を歩き続けていた。
「もうすぐ、伯爵領に続く大きな道に抜けるはずです。
モックス子爵領にも続く王都からの道です。エスタ様、お体は大丈夫ですか?
アシェル様を私が背負いましょうか?」
「ありがとうマイク。大きな通りに出たら少し休んでいいかしら」
「もちろんです。子爵家を出たてからアシェル様を抱えて歩き詰めです、少し休みましょう」
大きな通りに出ると、道沿いに小さな公園がありマイクとベンチに腰掛ける。
水筒の水を飲んで一息つくと、大きな馬に乗った騎士様が私達の前を駆け抜け、少し先で止まり引き返してきた。
「こんばんは、こんな夜中にどうしました?なにかお困りですか?」
騎士様は大きな馬からひらりと下りて私の前に跪いく。
騎士様の黒髪に月明かりが色を差した。
騎士様は私に抱かれて眠るアシェルをまじまじと覗き込み。
「おやこんなところに小さなサイラス」そう言ってアシェルの頬を突き、私に眼を向ける。
「もしかして、ウイルソン伯爵家のエスタ嬢?」
知らない騎士様に名前を呼ばれ、私はアシェルをぎゅっと抱きしめる。
「ああ。怖がらせてごめん。俺はアンダーソン公爵家のフレッド。
サイラスの幼馴染で悪友……これを見せたら信用してもらえるかな?」
フレッド様は上着の内ポケットから汚れてボロボロのブレスレットを取り出し私の手に握らせた。
「サイラスから預かった」
私の眼から大粒の涙が溢れる。
サイラスが出立する日に、私がお守りに渡したブレスレット。
組みひもの中心に小さなガーネットが編みこんである。
「フレッド様。サイラスは……。」
「無事だよ。今はライト侯爵家に足止めされているが、きっちり片を付けてくるはずだ。
戦争が終わり王都に戻るとサイラスの元実家である、ライト侯爵とボルジア侯爵家が策謀していることがわかってね。戦時中サイラスからお金も手紙も届かなかったろ?」
私は大きく肯く。
「私が出した手紙もみんな戻ってきてしまって……。」
「どうもボルジア侯爵家が郵送部隊を買収して、サイラスが送ったお金も手紙も奪っていたみたいなんだ」
サイラスは……。ずっと信じていてよかった。
私は、アシェルを抱きしめ声を上げて泣いた。
アシェルも驚いて泣き出す。
「頑張ったな」
フレッド様の大きな手が私の頭をごしごしと撫でた。
私が泣き止むのを待つ間、マイクが今までの事情をフレッド様に説明する。
フレッド様は直ぐに、マイクに伯爵家へ行き今回の出来事をアンダーソン公爵家に早馬で伝える様指示を出し、私とアシェルはフレッド様の馬に乗りモックス子爵家に戻ることにした。
✿ ✿ ✿
モックス子爵家に戻ると裏の小屋が焼け落ちて、くすぶっていている火の始末を従者がしていて私たちに気づいてマーサを呼んだ。
マーサが家から駆けだしてきて私に飛びついた。
それからモックス子爵夫妻の武勇伝を聞き。
フレッド様は追加の情報をアンダーソン公爵家に伝えるため早馬を手配した。
「あの……フレッド様はこのままここに残られるのですか?」
マーサが大きなフレッド様を見上げて尋ねる。
「ああ。サイラスが来るまでエスタを守らないといけないからな、エスタに何か合ったら俺がサイラスに殺される」
「我が子爵家に、公爵家のご子息様に泊まっていただけるようなお部屋は無いですよ~」
マーサは慌てるがフレッド様は公爵と言っても自分は次男だし、戦場に比べたらどこでも天国だとモックス子爵家に留まることを決めた。
フレッド様はとても気さくな方で直ぐに子爵家の暮らしに馴染み、ルナちゃんやアシェルと遊んでくれる。
穏やかな毎日が続き、あの日から半月ほど経った良く晴れた午後。
私はマーサと子供達を連れて子爵家の庭で遊んでいた。
フレッド様はニコニコとその光景を眺めている。
「ほらアシェル。いちに。いちに」
つかまり立ちを始めたアシェルは手を引くと数歩足が出る様になった。
「アシュじょーじゅじょーじゅね」
ルナちゃんも手を叩き応援している。
「おー。待ち人がすごい勢いで近づいてくるぞ」
フレッド様が遠くを指さす。
道の先には土煙を巻き上げて馬を走らせるサイラス……。
馬はみるみる近づき私たちの前で止まる。
「エスタ!」
馬から降りたサイラス様が両手を広げる。
「サイラス!」
私はぎゅっと握りしめた拳をサイラスのお腹めがけて打ち込んだ。
「がぁは」
不意の攻撃にさすがにサイラスも少しよろめく。
「もう。サイラスのバカバカバカ!」
ぽかぽかサイラスの胸板をたたきながらボロボロと涙をこぼした。
サイラスがぎゅっと私を抱きしめる。
「待たせてごめん」
「あーだ。あーだ」
アシェルがよちよちと歩いて私の足にしがみつく。
抱き上げると同じ顔が二つ並んだ。
「わあ!俺にそっくり」
「アシェル。お父さんよ」
アシェルをサイラスに手渡す。
「だ。だ。だ。」
アシェルはサイラスの顔をバチバチと叩き、伸びっぱなしの髪をぐいぐいと引っ張る。
「アシェル。痛いよ」
「ざまぁみなさいサイラス!妻と息子に何の連絡もしなかった罰を受けるといいわ、私からのパンチもあるからね!」
ルナを抱き上げてマーサが笑う。
「よし。俺をこき使った分もお見舞いしてやる」
フレッド様が拳を突き上げた。
✿ ✿ ✿
それからフレディー様も交えて事の顛末をサイラスから聞いた。
サイラスとフレッド様は、同じ部隊で大きな手柄を立てた。
戦争が終わり王都に帰還すると息子の手柄を知ったライト侯爵は、サイラスに侯爵家に戻りたければボルジア侯爵家のマリアと婚姻を結べと言い出した。
サイラスはきっぱりとライト侯爵にもマリアにも愛する妻と今後も暮らし、侯爵家には戻るつもりがないことを告げるとマリアは逆上し私を始末すると飛び出し。
サイラスはライト侯爵家に軟禁状態となった。
サイラスは、信頼のおける家令にフレッド様との連絡を頼み、秘密裏に走り書きのメモでモックス子爵に早馬を飛ばした。
軟禁中にサイラスは、ライト侯爵家とボルシア侯爵家が戦時に共闘して違法な手段で私腹を肥やしていた証拠をつかんで悪事を暴いた。
両侯爵家のほとんどの者が掴まり、両家は爵位を返上。
マリアも王都に戻って直ぐ、私への暴行、モックス子爵家への放火などなど多くの罪で牢獄された。
「そしてこれ」
金貨がパンパンに詰まった重い袋をサイラスがドカリとテーブルに置く。
「俺が戦時中、エスタに送った金も全額返してもらったエスタの好きにしていい」
「それじゃあ」
私はテーブルの袋をフレディー様とマーサの前に押す。
「アシェルと私のご飯と宿泊代、二人がいなかったら……私とアシェルは生きてサイラスに会えなかった」
「俺からも礼を言う。この金はモックス子爵家のために使ってくれ、ほかにも報告があるんだ」
サイラスがフレッド様を見てうなずく。
「今回の戦果と不正を暴いた褒美に、俺とサイラスは侯爵爵位を授与されることとなった、まあ国も4つしかない侯爵家を二家も返上させたからね」
「わあ。すごいエスタ侯爵夫人になるの!やったー」
マーサが飛び上がって喜ぶと、私はアシェルと一緒に後ろからぎゅうぎゅう抱きしめられた。
マーサがサイラスをぎろりと睨む。
「ところでサイラス!いつまで二人を膝の上に載せてるの!いい加減下ろしなさいよ」
サイラスは座った時からずっと私とアシェルを膝に乗せている。
「マーサそれは聞けない相談だ、今まで離れていた分いっぱい抱きしめないと」
そういってサイラスはまた私たちを抱きしめた。
「だーだ。だー」
アシェルがサイラスの顔をぱちぱち叩く。
「おー。アシェル!いっぱい叩いていいぞ」
ふふ。ようやく家族が一緒になれたんだ。
次の春には三人で山吹を見に行こう。
私はじゃれあう二人の頬にキスをした。
~ 終わり ~
(*^-^*)信じる者は救われてほしい!




