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命令するなと言っただろ!?  作者: 米。


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1/3

(1)従者になった日

「ブルーフレイムバースト!」

「あっつ!初心者相手に卑怯だろお前ら!」

俺はあたり一面に広がる晴天のような青に怯えながら逃げる。後ろを振り返ると血相を変えて追いかけて来る野郎共が1、2、3・・・。何人だ、ありゃ。

それに引き換えこっちは俺と見知らぬ少女一人。

「ねえ、ここからそうやって抜け出すつもりです?」

明るい緑の髪をした少女が場違いなほど明るく問いかけて来る。

「知らねえよ!お前を助けたからこうなったんだよ!」

「大変ですね・・・。」

「こいつ、めっちゃ他人事!」

どうしてこうなったんだ・・・。



正月が終わり、時折見せる街の白景色に嫌気がさす今日この頃。

「げ、外出られねえじゃん」

そうつぶやく俺の声すら薄く冷え切って聞こえた。

ここらでなにか新しいことでも始めるか・・・。そうして重い腰を上げて、PCの電源をつけた。といっても俺の思う新しいこととは大抵二つ、見たことのないアニメを見るかやったことないゲームをやるか。今回は後者の予定である。


あー。最近はやりの。MMORPGか。

Ewigkeit Servant (エイヴィヒカイトサーヴァント)略してエビサバ。ファンタジーの世界に自らが入り込めるらしい。全世界が熱狂してプレイしているそうだが、こういうのはワンプレイが長くなって時間が奪われると俺は拒否していた・・・。が、新しいことを始めるのならこのくらいはしないとな・・・。


俺はゲームのアイコンにダブルクリックをした。そうするとゲーム画面がPCに映し出されたかと思えば、それがあたり一面に広がり、空気や温度、気候すらも変えてしまう。鼻先をかすめる野原の匂いに、雲一つない風景。空の天井を邪魔する大きな建物なんてない。まさに都会では得られない景色だった。

「やあ、君は初めてログインするプレイヤーだね。」

声のした方を振り向くと何やらぷにぷにとした白い物体がしゃべっていた。

「しゃべる餅・・・?」

「餅じゃない白スライムだ!この世界に一体しかいないレアキャラなんだぞ!間違えるな!」

「ええ・・・」

(自称)白スライムは自身の体が真っ赤に染まってしまうほどの怒りを見せた。いや、何が禁句なのか分かんねえ・・・。

「僕はこの世界の案内人だ!この白スライム様に直々に案内してもらえるなんて運がいい!感謝するんだな!」

「へえ、へえ。」

ちっこい餅は飛び跳ねながら、説明を続ける。

「この世界は自由に冒険していいんだけど、一つ決めるべきことがある!」

「決めるべきこと?」

「そうだ!それは従者だ!お前と共に旅をする存在で、どんな苦難もともに乗り越える必要がある!要はパートナーだ!」

「パートナー・・・。それをここで決めると。」

「そうだ!まあ、冒険の途中にも決められるんだがな。ただし、プレイヤー一人で始めるのは難しいから先に選ぶことをお勧めする!方法は従者にしたい奴に向かってそいつの名前を言ったのち従者契約をすると指をさせ。そうしたらもうそいつは従者だ。相手に拒否権はない。しかし、従者は何人も作れるわけではなく、一人だけだ。まあ、今ならこの白スライム様がついて、餅ではないことを証明・・・」

「や、いい。冒険の途中で見つけるわ。」

「あ!ちょっと!」


俺がパートナーを選ばないことを宣言すると視界に白い靄がかかっていく。なるほど、選択は俺の言葉だけで選べるのか。便利だな。

遠のいていく白スライムの声を横目に、これから始める冒険に胸を膨らませていた。


―――


瞼の裏に流れ込んでくる光に気が付き、目を開けた。

西洋風の街に重々しい甲冑をつけて歩く男性プレイヤー。その肩に乗っかる羽をつけた白熊(おそらく従者だろう)と、隣にいる杖を持った魔導士っぽい女性プレイヤー。

きたきたきた!冒険の幕開けってやつだ!テンションが上がる。


・・・にしてもどこに行けばいいんだ?こういう時は人に話しかけて道を聞くのが一番なんだろうけど、俺にそんな勇気はなかった・・・。情けない。

しかたがないから俺は勘で進めることにした。

ええっと、所持金はゼロだから・・・。ここは敵を倒しに森とかダンジョンに行くか、町にあるクエストを攻略してお金を稼いで、装備を整えるかだな。さすがに、何の装備も無しじゃ死にそうだからお金を稼ぐか。

初期位置は街の広場みたいなもので、真ん中に噴水とベンチがちらほら。そして掲示板のようなものが貼ってあった。掲示板の内容を見てみると、「ドラゴン討伐 推奨レベル35」などのように依頼内容と推奨レベルが書いてあった。

初心者にもできそうなものはっと・・・。ざっと見た感じ「魔石集め 薬草探し スライム討伐」か。とりあえず、全部引き受けておいて順序適当に攻略するか。


広場から外へと出る道の先には洞窟のようなものが見える。よし、じゃあまずは魔石集めからだな。

この時はまだ知らなかった。この選択があんな面倒くさいガキンチョに出会うきっかけになるなんて・・・。



「ん?おかしいな・・・。」

依頼には洞窟の入り口付近で見つかる魔石の回収と書いてあったのだが、一時間探索しても見つからない。やっぱり人が多いからみんな取っちまったのか?しかし、ここで収穫なしに引き返すことは大きなタイムロスになるからと前に進み続ける。が、奥に進むにつれて空気も薄く、鼻からすり抜ける空気は体全体を冷やすほど冷たくなってくる。いい加減見つけたいところだ・・・。

「おい!おまえだろ!ここら一体の魔石を取ったのは!」

「痛っ・・・。」

何やら男性の怒号とそれに怯える少女の声が聞こえてくる。走って現場に向かうと大柄な男たちが少女を取り囲み、詰め寄っていた。

「俺たちはな、ここの鉱物や魔石を採掘するために雇われてんだよ。それなのにお前さんが全部奪っちまうから仕事できないだろうが。」

「・・・ごめんなさい」

男たちに目を合わせず、眉間にしわを寄せた、不服そうな顔で謝罪していた。

みたところただのひ弱な少女だ。魔石を持っている様子はないし、魔石を取れるだけの腕力もなさそうだ。

俺は人に話しかけることのできないような弱い人間だ。ましてや、人を助けるなんてできはしない・・・。そうスルーしようとしたが。ここで、通り過ぎたら明日の目覚めが悪くなる気がして声をかけた。

「ちょっと。よってたかって卑怯じゃねえか?」

「ああ?」




・・・結果、こういう事態になったわけだが。

「困ったものですね」

背中に背負っている少女がつぶやいた。いや、お前が言うなよ。

「全く、こんな魔石のために何をそんなに怒っているのか。」

少女はポケットから青色に光る水晶のようなものを取り出し言った。・・・ん?

「いや、お前魔石取ってんじゃん!!!」

「え?あ、はいそうですよ?」

「そうですよじゃねえよ!」

なんてことだ!俺は罪のない少女を助けたんじゃなくて罪のある子を助けていたのか・・・重犯罪じゃねえか・・・。

「大丈夫大丈夫。心配しないの。」

「なにがだよ!?」

「それにしても・・・。おいしそ~!!!」

この少女、俺の話なんて聞いていない。どうなってんだこいつ。

「いただきまーす!!!」

そういって手に持っていた魔石を食べ始めた。は?

「吐き出せ!吐き出せそんなもの!」

「おいしーんだもん!!!」

ごくん!

少女は舌をべっとだす。

「残念でしたー。のみこんじゃったもーん。」

「こいつ・・・吐き出せ!吐き出せ!」

俺は背中を激しく揺らして吐き出させるよう促す。

「やーーだもーん、きゃはは!」

満面の笑みで、まるでアトラクションに乗ってるかのように楽しんでいる。

堪忍袋の緒が切れた俺は突然立ち止まる。

「あえ、どうしたの?」

「みなさん、本当に申し訳ありませんでした。俺が間違っていました。この少女こそが魔石を奪った犯人です。みなさんにこの少女をお渡ししますから、躾くださいませ。」

「ええええええ!ここまで旅してきてそりゃないよ!一生の仲だったじゃん!」

「何が一生の仲じゃ。お前が勝手に振り回してただけだろ!」

「ぐぬぬぬ・・・。もう怒った・・・。お前、私は何もできないと思ってるだろ」

「思ってるよ?」

「思うな!!!いいか!私は一人だと魔法は使えない。でもしもべに魔法を委託することができるんだぞ。こういう風にな!!!」

少女はそういうとポケットをまさぐり始める。いや、ポケットからどんだけ出すつもりだ。もしかして俺が知らないだけであれは四次元につながってたりするのか?

「いでよ!わがしもべ!従者ザ・ベアー!」

そういってポケットから熊のぬいぐるみを取り出した。いや、ぬいぐるみというにはあまりに黒かった・・・。というか、さっきの「ブルーフレイムバースト」で燃えちゃったんじゃね?

「ぐす・・・ぐす・・・。」

ほら、半べそかいてるよ

「もういい加減、大人しく捕まれよ。」

「やだ・・・。やだ。やだ!!!!!!!!!」

声でか。うるさっ。

「もうこうしてやる!お前の名前は!?」

まっすぐに俺に指をさした。正直、答えてやる義理はないのだが・・・。

「はやく!!!」

「・・・早明(はやあき)だけど。」

せかされると判断力が奪われ、つい答えてしまった。

「へえ、早明(はやあき)・・・。では、あなたと従者契約を結びます!」

「はっ!?」

「私、アルム=ベレットが主人!お前がしもべ!」

「ちょ、は!?」

「しもべになった暁には私に変わって魔法を使うこと!いいな!」

「え、いやだけど・・・。」

そこで俺は思い出した。白スライムのセリフを従者契約に拒否権はないことを。つくづく思う。なんで、あそこで白スライムでも何でもいいから従者にしなかったんだと。

「いけ!ファイヤーボンバー!!!」

少女がそういうと俺の手から火の玉が勢いよく飛び出し、相手に向かって爆発した。そこに俺の意志は介入しなかった。


どうして・・・。こんなことに・・・。

絶望した俺を尻目に主人であるアルムはゲラゲラと笑っていた。

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