メイドは知っている
私は今、幸せです。好きな人と同じベッドで寝れている。こんな幸せ、そうそう味わえません。
『あー、今日の寝顔も可愛い…』
その人の寝顔は目に入れても痛くないほどに美しく、愛おしい。
「うぅん…」
そんな感じでその人が目を覚ます。目覚めたばかりで目を擦り、細めで覗くその瞳すらも宝石のよう。
「おはようございます」
「…何やってんだ!」
怒ってる姿も美しい…
私は玲奈、メイドです。苗字はありません。今はご主人様と同じ柳の名を語らせていただいています。これって実質結婚ですよね。私が全てを尽くす相手、それは私のご主人であり、柳家の長男、柳雪様です。
『あー、髪をかきあげる姿も愛おしい』
雪様は数年前から実家を出て、暮らしています。実家を出たとはいえ、暮らしているのは別荘、かなりの広さのため、数人のメイドや執事などは存在します。その中でも私は上位の立場にいます。雪様とは何年もの関わりで、柳家の現当主であらせられる柳玄一様からもお墨付きをいただいています。
「窓に汚れが残っています。ここは雪様が通る可能性が高い場所です。後で綺麗にしておいてください」
「わ、わかりました」
ここのメイドや執事は新人が多いです。故に私が教育することも少なくはありません。本当なら全部私がしたほうが早いのですが、昔、それをした時に私が過労で倒れたことがあり、ご主人様から禁止されてしまいました。なので新人のメイドたちにもやらせているのですが手際がとても悪い。窓ぐらい常に清潔を保って欲しいものです。
「ご主人様、紅茶を持ってまいりました」
「…何も言ってないんだが?」
「そろそろ紅茶が必要になるかと思っていたのですが…違いますか?」
「いや、あってるが…何故わかったんだ?」
「ご主人様が作業中にお飲み物を欲するのは作業を始めてから2時間から3時間経過時がほとんどです。現在は作業開始から2時間ちょっと、このタイミングで渡していくのがベストだと考えました。また、昨日はコーヒーでしたが、あれは作業が長引いていたため、本来のご主人様は甘いものが好み、砂糖や牛乳が入っていようとも好き好んでコーヒーは頼みませんから。そして昨日の時点でその作業が終了したことも把握済みです。ならば甘いものをとなりがちですが、ご主人様はそういう時はコーヒー、紅茶、ココアの順番で落としていく傾向にあり、もし、朝起きた時点で、まだ疲れが残っているようでしたら、ココアにするつもりでしたが、ご主人様はちゃんと疲れが取れていそうだったので紅茶にさせていただきました。」
「あー…本当にお前は怖いな…」
「いえ、愛しのご主人様のためです。これぐらいできて当然です。できないものたちはご主人様への愛が足りないのです」
「お前はありすぎると思うんだがな…」




