◆9.クリスタも液タブも2001年には無いけれど
新部和葉:「ヘイ…! 落ち着けってチサ兄? 続編が始まるのは今から15年後のことだから」
渡瀬チサ:「ふはははは! だまされんぞ! そんなウソにはな!!」
新部和葉:(ウソじゃないんだけどな~。この分だと、ハンターハンターがどうなってるか知っても大騒ぎしそう)
この頃から既に、今週はハンターハンターが掲載されるから久々にジャンプ買ったわ、などと話題になり始めていた時期だったりする。
未来の事情を知っている和葉からすれば、事実は小説よりも奇なりだ。
渡瀬チサ:「お? それはそうとだ。フォトショとワコムのタブレットも用意したんだから、こっちも使えよ? デジタルの方が得意なんだろ?」
17インチのブラウン管モニター付きのパソコンをポンポンと叩いてみせたイトコに。
和葉は声を大にして言ってやった。
新部和葉:「未来と全っっ然! 使い勝手が違うんだけど!? デジタルペンは死ぬほどツルツル滑るし! 紙を貼り付けて滑り止めにしてマシになったかと思えばやっぱりポインタがズレてうまく描けないし! なによりもペンタブの範囲とモニターが狭すぎて、こんなのやってられっかってーの! フォトショもせめてベクターレイヤー搭載してから出直して来いやーー!!」
渡瀬チサ:「わかった! わかったから落ち着けって! 未来はそんなにも使い勝手が良くなっているのか…。だったら、今は手を付けなくてもいいのかもしれないな。…って? なんでスリープモードにしてあるんだ?」
新部和葉:「そりゃ…、これだけ用意してもらって、やっぱり使いませんじゃ悪いじゃん。それに、私が使ってたクリスタが発売されるのは今から11年後だし」
と言うことは、悪戦苦闘しつつも何か描いてはみたのだろうと、渡瀬はパソコンのスリープを解除してみた。
パスワードを要求されることもなく、デスクトップがすんなりと表示される。
そこには――。
新部和葉:「泣き言は全開で言うけど、やらないわけにはいかないでしょ?」
デスクトップの壁紙には、美麗なパッケージアートが設定されていて。
プリンス・オブ・マーメイドというタイトルロゴが目に入り、渡瀬は腰を抜かして尻餅を突いた。
それでも、ブラウン管から目を離すことができなかった。
渡瀬チサ:「これは…! お前が描いたのか…!?」
新部和葉:「そだよ? まー、再現度50パーも行ってるか怪しいけどね」
渡瀬チサ:「50パーもなにも…! こんな塗りの絵、見たことがないぞ?」
新部和葉:「そりゃ、今の2001年から、30年後の技術やノウハウを再現してんだもん、目新しくて当然よ」
渡瀬チサ:「いやでもコレ…、今すぐにでも買い手が付くレベルだぞ?」
新部和葉:「やめてよ、こんなの 住和トア先生 の足元にも及ばないんだから」
渡瀬チサ:「住和トア…、これから先の中学校で一緒になる子、だったか」
新部和葉:「そだよ? で、その住和トア先生に本物を描いてもらうためにも、アナログ絵は当然として、私は背景も描けるようにしとかないといけない。異世界アースセザードの光景を知ってるのは、私しか居ないからね」
渡瀬チサ:「そうか…。ゲームで異世界の光景を知っていれば、向こうで転生した後にも何かと役に立つということか」
新部和葉:「そゆこと。現に私も助けられた口だし。…とは言え、3Dアクションゲーム程度じゃあ、足りない部分もあったからね」
渡瀬チサ:「それでフルダイブVR化を目指すわけだからな。やることはてんこ盛りだが」
新部和葉:「だとしても、私にしかできないんだから、私がやるしかない」
和葉は、尻餅をついたままでいた渡瀬に手を差し伸べ。
まだ身体が小学1年生なのもあって、全力でもって彼を引っ張り立たせてやった。
新部和葉:「それと、適度な運動もっ…、欠かさないようにしないと!」
渡瀬チサ:「っと…。クリエイターは身体が資本だからな」
新部和葉:「まあ、それもあるんだけど…。ゆくゆくは、民間軍事会社のPMCトレーニングに付き合うはめになるから」
渡瀬チサ:「まったく…。目まいがするようなスケジューリングだな?」
新部和葉:「他人事じゃないんだよチサ兄? 色々と当てにしてるんだからね?」
渡瀬チサ:「わかっているさ。こんなパッケージアートを見せられたら、僕だって全力を出さざるを得ない。…と言うか、この彼なんだろ? ナノクス・アトランティカは」
新部和葉:「そそ。よくわかったね? アトラ帝国の第一皇子。私がホムンクルスのボディで自爆特攻をかけて消し飛ばしたタイダル皇帝の実の息子さん。生物兵器として作られた人魚 メロウ と人間のハーフがナノくんで、メロウが暴走したときの保険がそのハーフの マーメイド ってわけ。だから第一皇子なの」




