◆55.フォーチュンハート王家の
住和トア:(見まちがえるはずがない…〔ガラケーを拾い上げ、もう一度確認する〕うっわ! ガチであたしのサインじゃん…。どうしてこんなものに、あたしのサインが?)
そこまで思って、脳裏で つながる 答えがあった。
†エマ†が何故、台座と一体化している『石の剣』を抜こうとしていたのか。
どう考えても抜けるはずのない剣を、わざわざ抜こうとしたのは〝それなりの〟〝自分と同じような〟理由があるからだ。
見やれば、†エマ†は今もなおランタンをかかげて『石の剣』を食い入るように見つめている。
住和トア:(役に入ってるのもあんでしょうけど、こんなにもこちらに気づかないのはそういうことよね…)
住和は遠慮なしにズカズカ近づいていくと。
ランタンの明かりに照らされている『石の剣』を横からのぞきこんだ。
†エマ†:「ひえああああ!!?」
するとようやく住和に気づいた†エマ†が飛びのいたのである。
目を飛び出さんばかりに真ん丸にして、心臓がバクバクしているのであろう、服の胸元をギュッと握りしめている。
†エマ†:「とととトアちゃん!!? いいい一体いつから!!?」
目をぐるぐるとさせて口まであわあわし始めると、やはり本物なのではないかと錯覚しそうになるが。
ガラケーのライトで『石の剣』を照らしてみると。
そこには、住和にとって〝まったく見覚えのない紋章〟が刻まれていたのである。
住和トア:「王冠に大きくかぶせるようにした四葉のクローバーか…。この紋章はプリマメの劇中に出てくるレムア共和国でもアトラ帝国でも、メガラ公国でもパシフィ王国のどれでもないわよね?」
見覚えのない紋章を指し示してみせれば。
†エマ†がギクリとしたので、もう答えは出たようなものである。
住和トア:「それで? これはあなたにとって何のマークなわけ? カズハ」
†エマ†:「や――、やだなあトアちゃん、わたしはエマだよ? エマ・ティンゼル」
住和トア:「そういうのはいいから――ああいや…、役作りに関してはホントすごいと思ってる。初めはエマが実在したのかってビックリしちゃったくらいだし。なんならキショいくらい本物っぽいから」
†エマ†:「キショいは褒め言葉じゃないよ!?」
住和トア:「むぅ…? これでも役作りが解けないなんて、ホント多才なんだからもう〔一つ息を吐いて〕まあいいや。それで? この紋章はなんなわけ?」
†エマ†:「それは~…〔仕方ないと観念した表情になって〕いずれ話すことだから今は詳しく説明しないけど、前世界線でわたしとゆかりのあったマークなの」
住和トア:「ほ~ん、やっぱりね。だったらやることは一つよ」
ガラケーを構えたまま、ツカツカと歩いて行った住和は。
端から『石の双剣』『石の拳鍔』『石の剣』『石の杖』『石の槍』にあらゆる角度からシャッターを切って写真に収めた。 ※拳鍔 = けんつば
何枚も色んなアングルから撮ったのは単なる絵描きの癖である。
ネット社会が浸透してきたとは言え、検索すれば欲しい参考画像が出てくる時代にはまだ遠いからだ。
【伏線:しかしまさか、後々にこの写真が活きることになるとは思ってもみなかったわけだが】
住和トア:「とりま、証拠は収めたからコレでいいでしょ〔端から順に五つの武器に視線をめぐらせて〕それにだけど…、今のところ何か起こる気配も無さそうだし」
海も穏やかな潮騒を奏でているばかりで。
急に〝天候が悪くなりそうな〟きざしも見られない。
単純に言ってしまえば、武器が五つ立ち並んでいるだけで、いたって平穏な光景である。
住和トア:「だからさ。なんかよくわからない物は置いといて、あたし達にはやるべきことがあるんじゃない?」
そんな住和の態度に、†エマ†はハトが豆鉄砲を喰らったような顔をして。
直後に一転し、ひまわりのような笑みを咲かせたのである。
†エマ†:「たはははは! それもそうだね」
住和トア:「えっと…? あたし、何かおかしなこと言った?」
†エマ†:「ううん、そうじゃなくて。なんだかんだ言いつつも、わたしのことをちゃんとエマとしてあつかってくれるんだなって、嬉しくなったの」
【背景演出:彼女の背後に白い花々が咲き乱れた気がして、住和は少しだけドキッとした】
住和トア:「〔早口で〕や、こうでもしないと話が進まないと思っただけのことよ〔視線をそらし言い訳するように〕こういうときの〝あんた〟って…、マゴついちゃうタイプだから…」
†エマ†:「そうだね、おかげで助かっちゃった。でもここからは予定通りに、わたしがトアちゃんを案内するよ。見てて?」




