◆54.トアの〝あれ〟はガチで謎なんだよね
つまりこの〝演出〟は、和葉なりに考えがあってのことだろうと歩き出し。
†エマ†に向かっていたはずの住和は。
いつの間にやら、自分の歩みが それていた ことに気がついた。
住和トア:「――は?」
†エマ†の足元に置かれているランタンは、小規模な範囲しか照らしていない。
そのせいで、今まで見えなかったのだろうか?
住和が立ち止まった目の前には、こつぜんと『石の杖』が突き立っていたのである。
住和トア:(な…にコレ…? こんなもの、さっきまであった?〔杖が刺さっている砂浜の地面に目をこらし〕って、どういうこと?)
住和は上着のポケットからガラケーを取り出し、それでライトをつけて地面を照らし出した。
住和トア:(この杖…、無造作に突き刺してあるんじゃない…)
かがみ込み、杖の 根元の 砂を払っていけば――――。
それが石の台座と 一体化している ことがわかった。
しかも、いびつなアルファベットで名前が刻み込まれている。
住和トア:(ワンドシューター…よね? なんだかすごく古そうなものに見えるけど…――って、この台座、ひょっとして? 地続きになってる?)
そう。その台座は、ゆるやかなカーブで半円の弧をえがくようにして伸びている。
左は†エマ†が格闘している『石の剣』の方へ。
そして右のもう一方はと言えば――。
さすがにそんなわけないよね? と急ぎ、駆け寄ってもみれば、住和の予感は的中してしまった。
住和トア:「武器のどれかとは思ったけど…〔根元の砂を払い〕これは…ピアーストライクか。まあ、どこからどう見ても槍よね」
となれば必然的に、中央に位置している『石の剣』の〝向こう側にも〟武器が並んでいる可能性が高い。
住和トア:(これはアレか、今は石化している伝説の武器ってやつか。またベタな物を用意しちゃってからに)
そう思いかけて、住和は自分の考えを否定した。
住和トア:(待って? 武器を浜辺に突き刺しておく〝だけ〟ならまだしも、この『石の槍』だって台座と一体化してるのよ?〔試しに引っぱってみるも〕やっぱりビクともしない…。考えられるとしたら、よっぽど大きな岩からコレらを 削り出した? としか考えられない代物なんだけど…)
武器が一体化している台座は、端から端まで恐らく10メートル弱はある。
いくら和葉の仕掛けだとしても、こんな大規模な工事をできるはずがない。
【カメラ:住和の頬に、ひとすじの汗が伝うさまがアップで映る】
住和トア:(オーケー…わかったわ。だからそこのエマは、一つのことに気を取られてるわけね。それがイレギュラーな事態ともなれば、こちらに気づくわけもないと。それは解釈一致だからいいとして…。じゃあ何よ? これらの武器は、たまたまココに用意されてたってわけ?)
ともなれば脳が警鐘を鳴らし始める。
武器が用意されている、ということはつまり、武器が必要となる状況が起こり得るかもしれないからだ。
住和トア:「いやいやいや…馬鹿馬鹿しい。この現実で? 突然魔物が現れたりするわけないじゃないのよ〔少し自信のなさそうな声になって〕ないに決まってるし…」
今まさに、自分がフラグを口にしていることを悟った住和は、『石の杖』に駆け寄ると、自分も†エマ†と同じように引き抜きにかかった。
しかし。
住和トア:「ほ、ほら…! こっちだってビクともしないじゃない。つまりあたしは当事者じゃないってことよ〔ハァーと息を吐き出して〕あー良かった~…。なんか壮大な物語でも始まるのかと思っちゃったわよ」
それもこれも、和葉というおかしな存在が身近にいるせいだと。
こんなことに気を取られるのはいいかげんにして、†エマ†に声をかけようとして顔を振り向かせた住和は。
何か〝ありえない〟ものが視界の端に映った気がして。
何だろう? と『石の杖』へ視線を戻すと。
まさかねと思いながら、再びガラケーを取り出し、ライトで照らし出してみたところ。
TOAという自分のサインが、すんぶんたがわぬ 筆記で 杖に彫り込まれていて。
ビクッとした彼女は手からガラケーを落としてしまった。
住和トア:(なんで…!? あたしのペンネームが…?)
この長年、イラストなどを描き上げた際に残してきた、いわゆる絵師特有のサインである。
つまりは、見る者が見れば――、それどころか描いてきた本人が見れば一目でわかるものなのだ。




