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52/61

◆52.この時の私は結構緊張してた


 新部和葉:(私が誘導するまでもなくルナは自分から声をかけに行った…。それが運命だとしたら、主人公エマの性格を明るくしたことで、私が挿入歌を作り直すことになったのもまた運命だろう。しかし務まるだろうか、この私に、あの役柄が…)



 なぜならば、現実で会ったことのある本人は 光属性の申し子 でありながら。


 金・金・金の守銭奴で。 ※しゅせんど。ドケチなこと


 光とは金貨のきらめきに他ならず。


 その光を求むならば金を出せと、のたまってはばからない。


 金の亡者エマ・ティンゼル〝本人の〟インパクトがどうしても強くて。


 なまじ実物を知っているからこそ、その印象に引きずられそうになるからだ。



 新部和葉:(明るい性格に書き直したエマ――、その役柄は頭に入ってるけど、リハ無しはさすがにキツい…。たとえアーラウをやるのに慣れてはいても、それが乙女ゲーの主人公ともなれば話は別だ…)


 ※リハ = リハーサルのこと



 なによりも、自分が書き直したからには、キャラの責任でさえも自分が負わなければならない。


 言ってしまえば、ここで住和のインスピレーションをわかせられなければ、この世界線は失敗したも同然となる。


 ゆえに少しでも時間がほしい。


 そう思っていたからこそ、和葉は携帯電話の着信に一瞬で出た。



 渡瀬チサ:『到着までに後20分ほどだそうだ。準備にかかれ』


 新部和葉:「ありがと!」



 米陀たちのドレスアーマー製作班が妙なところで通行止めや渋滞に捕まり。


 どうなるか見通しがついていなかったからこその吉報であった。


【カメラ:絵を描くことに集中している住和の横へと、和葉の歩み寄る姿が広縁の窓の外 から見える】



 新部和葉:(━━ ドリームガイド ━━)



 和葉は無詠唱魔法で住和の意識を奪ってから危なげなく支え。


 さも、こんなこと慣れっこだと言わんばかりに彼女をお姫様だっこすると。


【カメラ:広縁をバックに、瑠東の方へ住和ごと和葉は振り向いた】



 新部和葉:「今私が〝眠らせた〟この子を、3時50分ごろに起こして、4時までに案内してほしい場所があるの」


 瑠東ルナ:「〔今の出来事に驚きつつも〕4時ってそれ…、朝のよね? 日の出前なんじゃないの?」


 新部和葉:「だからちょっと心配でさ…」


 瑠東ルナ:「オーケー。そこであたしの出番ってわけか。どこへ連れてけばいい?」


 新部和葉:「ありがと。そんな遠くじゃないんだけど――」



 和葉は寝室に敷かれていた布団へ住和を寝かせると。


 簡単な地図をメモ用紙に描き起こして瑠東に説明したのだった。




―――◆第4章◆第4幕―――【この先クライマックスにつき特殊描写:限定解放中】




 電柱の明かりの下。



 住和トア:「ってかメチャクチャ真っ暗じゃないのよ! 本当にこの先の海岸まで行かなきゃいけないのあたし?」


 瑠東ルナ:「うん。しかもライト無しで向かわせるようにって」


 住和トア:「はあ~~!? もう何考えてんのよあの子は~~!!」



 スポットライトの如く闇夜から切り出されている中、地団駄を踏んだところでどうしようもない。



 瑠東ルナ:「行くしかないじゃない、このためのセッティングだったんだから。ほら、がんばって」



 瑠東から優しく背中を押され、よろめくようにして数歩あゆんでから住和は振り返った。



 住和トア:「ちょっ、ええっ…?〔一緒に行かないのかと目で問いかける〕」


 瑠東ルナ:「いや、あたしも一緒していいか聞いたら〔上着のポケットからメモ用紙を取り出して〕この地図の、この辺を散歩してから旅館へ帰ることがあなたの役目だからって断られちゃった」


 住和トア:「はあーー!? そんな…、役目って一体なんなのよ?」


 瑠東ルナ:「さぁ…? わからないけど…。あんな真剣な顔をしたカズハからそう言われたら、今のあたしはそうせざるを得ないじゃない。それはトアだって同じでしょ?」


 住和トア:「ぐぬぬ…! 珍しく正論を言いおってからに…。てかルナさ――」


 瑠東ルナ:「うん?」


 住和トア:「いや…〔視線をそらしてから〕この1年で、だいぶ落ち着いたなと思って」


 瑠東ルナ:「そんなことないよ! 今だってトアに付いてきたいもん! でもカズハがきっぱりとダメだって言ったからには、ここはあたしにとっても外しちゃいけない場面なんだと思う」



 言外に、自分もグッとこらえているんだからと伝えられて、住和は少し切ない気持ちとなった。


 なぜならば、常に私たちと居ることがあなたの道ではないよと、和葉が自分たちとは別の道を瑠東に指し示してみせたからだ。


 たかだか1年ちょっとしか、共に過ごしていないというのに。


 住和は、このまま瑠東もずっと一緒にいられるような感覚でいたのだ。


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