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50/61

◆50.もうやってやるしかないと思ったね


 住和トア:「はあ…!? なんっ…! なんですって~~!?」


 崎戸ミヤ:『ばっ…!? リタお前っ!!〔八牧を羽交い締めにかかる〕』


 倉津サナ:『そういう言い方はやめようねって打ち合わせしたじゃないのよ!』


 八牧リタ:『止めてくれるな二人とも! あの女には一言突きつけてやらねばならないんだ!』



 そんな3人のやり取りを、和葉はテーブルを叩きつけることで制止させた。



 新部和葉:「わかったから…。話してよリタくん? どうしてトアがふさわしくないだなんて言うわけ?」


 八牧リタ:『ハッ〔あざけり笑って〕あなたまでもがその調子とはな…』



 八牧は二人を振りほどくと、よれた衣服を正してから声を大にした。



 八牧リタ:『既定の輪廻をただ繰り返すだけではなく、新たな未来を導きたいがために、より良いゲームを作るんじゃなかったのか!? あなたが再現した〝住和トア先生〟の完成形に、トアが ただ 追いついた だけ じゃないか!! それは結局のところ、前世界線止まりのクオリティーなんじゃないのか!?』


 住和トア:「ぐがああああ…!!? 言わせておけばぁあああ…!!」


 新部和葉:「それは…、その通りかもしれないけど…。言ってくれるじゃん?」


 八牧リタ:『当たり前だ、ボクを本気にさせた責任は取ってもらわなければ困る。――だと言うのに…! 定例報告会のたびに! 二人でイチャイチャ、イチャイチャと!!』



 ほんの一瞬、こちら側3人の思考が停止した。


 え? といった感じに、和葉と住和が顔を見合わせる。



 住和トア:「えっと…〔首を細かくフルフルと振ってから〕してない。あたし達、イチャイチャなんかしてないよ?」


 八牧リタ:『してたじゃないか!! やれカズハは凄いだの、いやトアの方が凄いよだのとノロケてたじゃないか!』


 住和トア:「いやちょっと待ってよ!? その言い方だとさ? ヤマキがカズハのこと好きで、あたしに嫉妬してるように聞こえるんだけど?」


 八牧リタ:『その通りだが!?』



 キレ気味な肯定の『その通りだが!?』が、和葉の脳内で反響し、和葉は宇宙ネコとなった。


 モニターの向こう側で崎戸は、え? いいのか? 告白がそんなんで? と困惑し。


 倉津は、あちゃ~…と両手で顔を覆い。


 こちら側の渡瀬は、そういうことかと納得して腕を組んだ。



 住和トア:「え…? ええーー!? そうだったの!? …………。へ、へ~…? そうなんだ~~、ふ~ん…?」


 新部和葉:「あのさ? このタイミングで私とリタくんを交互にチラ見するの失礼じゃない?」


 住和トア:「だって! なんか! 意外な組み合わせだなと思っちゃってさ! 決して他意は無いから!〔自分の前で両手を小さく振ってみせる〕」


 八牧リタ:『なるほどな…、理解した。わからないのだろうなキミには。彼女の存在価値が』



 そこで住和は、自分がムッとしたことに初めて気がついた。


 自分だってそのくらいのことはわかっている自負があったからだ。



 住和トア:「いや、そんなことはないと思うけど?」


 八牧リタ:『わからないさ! ニイベカズハと1年も居ながら、別世界線の自分を超えようともしないのだからな!』


 住和トア:「貴様ああああああああ!!!!」


 渡瀬チサ:「待て待て待て!!〔住和を止めにかかりながら〕気持ちはわかるがモニターを殴ろうとするのはヤメろ! ステイ! ステイだ住和!」


 八牧リタ:『あなたもあなただニイベカズハ! あなたは完成形の絵柄を提示し、そこがゴールでいいとトアを甘やかしてしまったんだ! それは前世界線よりも良いゲームを作る目的に反しているんじゃないのか!?』



 さすがにその言葉には、和葉でさえも苦笑いがこぼれた。


 ここまで言ってくれる人間は、そんじょそこらには居ないと感じたからだ。



 新部和葉:「オーケーわかったよ…。リタくん達が 本気で 頑張ってたときに…、私たちがぬるま湯に浸かってたことは認める。その上で、その喧嘩…、買わせてもらおうじゃないさ!」


 渡瀬チサ:「落ち着けカズハ!? キャラ絵のクオリティーアップは避けられない事態だが、ロードマップの計画上、2年後の冬コミには間に合わせないといけない、勝算はあるのか!?」


 新部和葉:「そんなの、あるに決まってるでしょ!? だって〝私の〟トアだもの! たとえ相手がリタくんであろうと前世界線のトア先生であろうとも、負けるわけがないんだから! この私が、絶っっっっ対に負けさせやしない!!」


 住和トア:「カズハ…!?」


 八牧リタ:『妬けさせてくれるじゃないか! しかしだ! ボクの時と違って同じ手段は使えないはずだが、違うか!?』


 新部和葉:「その通りだよ…。プリマメは創作物だもん、現実とは別物だからね…」


 住和トア:「ちょっと? なにを当たり前なこと言ってるのよ…?」


 渡瀬チサ:(なるほどな…。過去を追体験することで〝現実の〟ヒーロー像を見知ってしまえば、背景画担当の八牧と違い、住和の描くキャラ絵には大きな影響が出るはずだ。それだけは避けなければならない。その上でどうするつもりかというわけか)



 ゆえに、すべてを打ち明けるにしても、プリマメを一旦作り上げてからが望ましいわけである。



 新部和葉:「だから私は、別の方法でトアの実力を引き上げてみせる! この子がキャラデザに相応しくないだなんて言葉、撤回させるから、覚悟しといてよねリタくん!?」


 八牧リタ:『ああそうだとも…! そうこなくてはな!!』



 和葉が浮かべてみせた とびきり のニチャリ顔に。


 八牧は目をカッぴらいて大喜びしたのだった。




====[ティップス・補足情報]====


 八牧がサークルメンバーを 名前で 呼ぶのは、

 ローレライ歌唱法で、和葉の前世であるサラサ0の過去を追体験した際に、


 異世界アースセザードで、

 サキト・アトランティカ、クラツ・アトランティカ、

 スミワ・アトランティカ、ヤマキ・アトランティカと敵対していたことから、


 自分たちの名字と名前が同一の彼らを思い出させないようにしたいから、が理由である



 また、地球側の自分たちと顔立ちも似ていることから、

 どういう偶然か運命かはわからずとも、


 自分たちは和葉の味方であり、

 異世界の奴らとは違うことをアピールしたいがために、


 崎戸と倉津にも互いのことは名前で呼び合うように、理由はいつか説明するという条件でお願いしている



 ちなみに、八牧が和葉のことを ニイベカズハ とフルネーム呼びするのは、

 初めこそ警戒し、距離を取るためであったが、


 サラサ0の過去を追体験した際に、

 ヒロイックな大立ち回りをしてみせた彼女に胸がときめいてしまったため、


 自分にとって特別な存在となったがゆえに、

 気安くニイベともカズハとも呼べなくなってしまった事情がある


=======[END]========


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