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◆5.わたしは何年続けるでしょうか


 新部和葉:「これでバッチリです」


 渡瀬チサ:「はあ…?〔首をかしげる〕 一体何が何だかサッパリなんだが…?」


 新部和葉:「このフォーチュンハート王国の島の形状を見てから、地球儀の南大西洋を見てください」


 渡瀬チサ:「いや、こんなの見たからって…、はああああああ!!? どっ…!? どうなってるんだ一体…!? いやいやいやいや!? さっきまで…、南大西洋のド真ん中に、こんな島国なんて…、無かったハズだぞ…?」


 新部和葉:「これが世界規模の認識阻害なんです。それなのに、フォーチュンハート島が描かれてる地球儀がわたしのもとまで来て、本っっ当に幸運でした。これが無かったらわたしは…、記憶を取り戻すこともなく、きっとまだお猿さんのままでした」



 それは本当に偶然起こった出来事なのかと思いはしたが、渡瀬は言葉を口にしなかった。


 あれこれ考え出したらキリがないからだ。



 渡瀬チサ:「と言うかだ…、その認識阻害ってのは一体なんなんだ?」


 新部和葉:「それはわたしにもわかりません。ただ、あの島には何かがあるはずなんです。それも、異世界アースセザード由来の物が…」


 渡瀬チサ:「じゃあキミは、国王から何も聞かされていないんだな?」


 新部和葉:「はい。わたしが教えてもらったのは、島の正確な形状を見せることで、他人の認識阻害を解くことができる、くらいのことです。しかもそれを教えてくれたのは側仕えのサージだったので、彼女自身も人から聞いて、どうしてそれで解けるのかはわからないと言ってました」


 渡瀬チサ:「となると…、転生する前提でトレーニングを受けさせられたと考えた方が自然になるわけか」


 新部和葉:「はい、そういうことです。それにですよ? もしお父様から打ち明けられていたとしても、転生した後に、肝心の秘密兵器が出力不足になってしまう事情があったので、だからこそカズハさんも、わたしに黙って立ち回っていたんです」


 渡瀬チサ:「秘密兵器だって…? 何か問題でもあったのか?」


 新部和葉:「はい。ものすっごく強い武器や防具を作れる場所があったんですけど…、悪用を防ぐための工夫がほどこされてまして、武器や防具を作った本人や、その製作者さんの事情を 知っていた 人が使おうとすると、性能がいちじるしく下がってしまう『魂の制約』がかかる仕組みとなってたんです」


 渡瀬チサ:「へえ? 製作者本人や、そいつの事情を知ってると使い物にならなくなってしまうわけか。なるほどな。最高な武具を作らせてやらないでもないが、そう簡単には利用させてやらないぞと」


 新部和葉:「はい。そこで必要となるのが〝製作者の事情を知らなかった人〟になるわけです」


 渡瀬チサ:「ほう…? ということは? 赤の他人である必要もないってわけか」


 新部和葉:「そういうことです。事情を知らなかった時点で持たせたり装備させてしまえばOKなので、身に付けさせるそのときまでに秘密にできれば、後は最強装備を使いたい放題になるんです〔剣を振るようなポーズを取ってみせる〕」


 渡瀬チサ:「それでか? 異世界の出来事を、乙女ゲー・フォーマットに落とし込んだプリマメが必要となるわけは」


 新部和葉:「ですですっ。ストーリーや設定が微妙に違ってしまえばいいわけですからね」


 渡瀬チサ:「なるほどな…。世界観さえ把握させておけば、後はいくらでも修正が利くと。システムの穴を突く方法を考えたわけだ。しかし…?」


 新部和葉:「何か問題でも?」


 渡瀬チサ:「問題大アリだろうが!」



 テーブルを叩きそうになって、渡瀬は静かに拳を下ろした。



 渡瀬チサ:「百歩ゆずってココまではいい。二十歳を迎えたサラサが、誕生記念祭当日にカズハによって刺し殺されるココまでは」


 新部和葉:「その後の何がいけないんです?」


 渡瀬チサ:「決まってるだろ! サラサを刺し殺した後、カズハも自害して異世界アースセザードへ転生すると書かれてあるが、サラサよりも一足先に235年も前に転生して、235年もの歳月をかけて事前準備を済ませるだとか正気か!? 寿命うんぬんの話は異世界のことだからわからんが、今年の2001年から単純に計算してもみろよ」



 新部和葉:「265年です」



 感情という感情が一切感じられない声色に、渡瀬は毒気を抜かれた。



 新部和葉:「わたしのカズハさんは、265年もの年月をかけて、たくさんのお膳立てをしておいてくれました。それなのにわたしは…、ナノくんを…、ヒーロー達を救うことができなかったんです」


 渡瀬チサ:「でもそれは…、キミだけのせいじゃないだろう?」


 新部和葉:「……」


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