◆46.次のサラサちゃんには不便を強いたくないんだよ
その顛末の話には、渡瀬や米陀、スタッフの2名も同情の色を見せることとなった。
特殊な状況下にあった18歳のファッツはともかくとして、ルドは最年長の23歳だったのである。
さすがにその年齢で、パンツが見えたくらいのことでギャーギャー騒がれても困る。
次は二度と同じことにならないよう、ルドが若い内にエロ本でも作って送り付けてやろうかと考えていた和葉だったのだが。
米陀のセレクトショップで、どんなに足を上げてもパンツをガードしてくれるスカートの存在に、コレがあのときあったらどれだけ良かったことかと怒りが再燃したわけである。
というわけで、和葉の求めるドレスアーマーは、どんなアクションにも耐えうる 鉄壁スカート が注文内容となる。
その設計図を記憶して、異世界に転生してから向こうで作り上げるわけだが。
当然のこと、異世界へ転生する前に サラサが 着慣れておく必要もある。
それには、ペラい生地で試作品を作るわけにもいかず。
この地球でも、可能な限り防御力を高めた素材で作り上げることが課題となり。
最低でもサラサの分の現物と。
欲を言えば民間軍事会社のトレーニングで〝噛ますための〟和葉の分も必要となる。
更に言えば、24年もの月日が素材や縫製技術を進歩させていくこととなる。
つまりは、未来の2031年の直前に作ってハイ完成、で済めば問題は無いが。
こんな特殊な注文がそう上手くいくはずもないので、ただちに作製・研究を始める取り決めとなり。
米陀と2名のスタッフには、年に一着、試作品を仕上げてもらい。
年に一度、魔法を実演する和葉がテスト着用して、仕上がりを確認する約束となった。
無論、これだけの内容であれば、鉄壁スカートの製作に24年も必要か? と思われることだろうが。
和葉が出した要望については まだ あるのだ。
南極氷床、機巧都市クラレンツェア。
その 究極工房 で仕上げるドレスアーマーには、形態 換装 機能が備わるからである。
要するに、状況に応じてドレスアーマーの形態をチェンジできる、絵的にも素晴らしい機能なのだが。
新部和葉:「私に用意されたドレスアーマーは形態チェンジできなかったのよ」
渡瀬チサ:「はあ…? 何だそりゃ?」
新部和葉:「そこまで手が回らなかったんだって。まあ、前任には前任の忙しさがあっただろうから、あまりそこまで責められたものじゃないんだけど…。ドレスアーマーには魔科学の産物みたいなコアって装置が付いててさ、そこに別のドレスを取り込んでおくと何着も瞬時にお着替えすることができるのよ」
米陀ヨネ:「あらまあ! それはまた夢みたいな代物ね」
新部和葉:「私も頑固ドワーフの デシンさん から説明を受けたときにはワクワクしたんですけど、バリエーション1つで手付かずのままお前さんを迎えることとなってしまった、すまんと謝られましてね。じゃあ何でそんなできなかった機能を説明したのかと言うと、次に用意する側になったときには頑張ってくれと、そういうことだったんです」
和葉の話に、場の空気がどんよりとした。
女スタッフ:「〔静かな怒りを込めた声で〕何ですかそれ、無責任じゃないですか」
新部和葉:「ええ。そんなことを説明されて前線に立てば、せめて水中戦用だけでも用意してほしかったと、考えても仕方のないことが頭をよぎりまして。空でも海の中でも、ず~~っと最期まで地上戦用のドレスアーマーで戦い抜きましたから。そのうえでパンツが見えただなんだのと騒がれたものだから殴り倒したくなったんです!」
渡瀬チサ:「わかった、お前の怒りはもっともだから、その握りしめた拳は解け。お前はよく頑張った、偉いぞ? 前任の準備不足に合わせてやったんだ、褒められていい、よくやった、よくやったんだ」
新部和葉:「…………。ありがと」
怒りに震える拳を渡瀬からポンポンと優しく叩かれ、和葉は少しだけ溜飲が下がった。
男スタッフ:「〔心から同情した声で〕心中お察しします…、大変でしたね」
米陀ヨネ:「前任のカズハちゃんにも色々と苦労はあったのだろうけど…、そうなると男子たちの反応が酷すぎるわ! 怒髪天をつくのも無理からぬことよ!」
新部和葉:「ぁぁ…、わかってもらえて嬉しいです…、ありがとうございます」
いずれドレスアーマーの問題にも取りかからねばと思えどもだ。
和葉にとっては思い出したくもない過去だったのである。
それをようやく誰かに打ち明けられて、理解してもらえたのは有り難いことだった。




