◆45.私だってあんな理由で喧嘩したくなかったよ
米陀ヨネ:「美の鎧職人に関しては初耳なのよね~。…ひょっとして? そのコスプレ防具に何か関わりがあることなのかしら?」
和葉は滝汗をダラダラとかきながら尋ねた。
新部和葉:「この防護服を仕立てたのって、ヨネ姉さんなんですか?」
米陀ヨネ:「そうよん☆ 一から百まで、あたしの信念であり趣味の塊」
新部和葉:「マジすか…。――うん? てことは…? デュランシアのオーナーさんってことですか?」
米陀ヨネ:「そうなのよ~。一からブランドを立て直したから、資金繰りでてんてこ舞いしてるの」
そのとき、和葉の脳裏にひらめくものがあった。
新部和葉:「そうだよ…! ドレスアーマーをヨネ姉さんに設計しといてもらえば、あんなことにはならなかったじゃん!! どう考えてもルナつながりで衣装の発注をかけてるのに…、何でカズハさんは思い当たらなかったんだろ?〔激しい怒りの形相となって〕居るじゃんここに適任が!!」
米陀ヨネ:「ヒッ…!?」
住和トア:「落ち着いてカズハ! さしものヨネ姉さんも引いてるから!」
新部和葉:「おっと…! ごめん助かる…〔気まずそうな顔をして〕事情もろくに説明してないのに…、ありがと」
住和トア:「まったくよホントに…。あたし達だって気にならないわけじゃないんだからね?」
新部和葉:「うん…、その点については追々! ルナもごめん、今は待って!〔手を合わせて拝んでみせる〕」
住和トア:「調子いいんだから…」
瑠東ルナ:「まあまあいいじゃん、話してくれるならオッケーよ。それにカズハの様子からして、未来がより良くなりそうなんでしょ?」
新部和葉:「うん…。ヨネ姉さんの協力を得られたら、かなりいいかもしれない」
米陀ヨネ:「あなた達…、未来だとかドレスアーマーだとか? 一体何を言っているの?」
理性ではそう言いながらも、米陀にはなんとなくわかっていたのだ。
こういうときには決まって、大きな仕事が舞い込むものだと。
新部和葉:「ヨネ姉さん、私のイトコがデュランシアの出資者となります。別世界線の未来で、美の鎧職人と呼ばれていたあなたの力を貸してください」
米陀ヨネ:「…………。その話、詳しく聞かせてもらえるかしら?」
―――◆第3章◆第7幕―――
数週間後、ひと気の無い私有地の、山奥にて。
和葉はくだんのコスプレ防護服を着て、飛行魔法や、攻撃魔法を披露し。
米陀ヨネと、デュランシアの中でも信頼のおけるスタッフ2名に、一から百まで事情を打ち明け。
和葉のイトコである渡瀬チサが、ドレスアーマーの製作依頼を持ちかけ。
2031年までにという、24年間もの長期契約を交わしたのだった。
そして、その契約の決め手となったのはやはり。
ハイキックの際にパンツが見えたくらいのことで、ヒーローの二人と大喧嘩になってしまったことだ。
和葉――もといサラサ0からしてみれば、ルド・キャンベマンの命をかろうじて救うこととなったファインプレーの蹴りであったはずなのに。
感謝されこそすれ、ハしたないだのなんだのと顔を真っ赤にして怒られる理由がわからず。
サラサ0はそこで頭に血がのぼってしまい。
それまで演じてきたヒロインの態度を捨てて口論になったところ。
追加でファッツ・リベインまでもが、サラサ0のことを批難しだしたため。
それからというもの、これからみんなで世界を救おうというのに、チームの雰囲気がギクシャクすることとなってしまったのだ。
ナノクス・アトランティカとニュビズ・オラージュの二人は、いやそれはおかしい、サラサ0だってルドを助けるための不可抗力だったのだから、責められるいわれはないだろうと庇ってくれたのだが。
ルドの砂漠地方では女性の露出が厳禁であり。
おんなっ気の無い人生を送ってきたせいか、免疫の無さが悪い方へと働いてしまったのである。
ファッツはファッツで、亡き双子の妹の名誉を守るべく5年ものあいだ淑女のフリを徹底していたため。
咄嗟のハイキックにも引っかかりを覚えていたのだが。
サラサ0の〝急な〟女性らしからぬ態度に、それは本物の女性としていかがなものなのかと。
長年の女装生活で歪んでいた精神が、どうしてもそれを許容できなかったからである。
とは言え、じゃあ? パンツを見せないように見殺しにすれば良かったのかという話になりかねず。
自分を抑えなければならなかったのはルドとファッツの二人で間違いなかったので。
何言ってんだ童貞が!! と、サラサ0――もとい和葉はブチギレることとなってしまったのだ。




