◆44.私だって思い出し怒りくらいするよ
新部和葉:「やっぱりこのスカート…! とんでもない作りしてる…」
それがどういうことかと言えば、宙に浮くことを 想定した 作りともなっているからだ。
瑠東ルナ:「って言うかさ! なに今の…? スカートの動きがメチャクチャ綺麗だったんだけど!」
住和トア:「うん……信じ難いけど、現実のスカートをアニメみたいな動きになるよう設計してあるんだと思う…。いやそれ以前に、あたし気のせいかパンツ見えなかったんだけど?」
瑠東ルナ:「あたしも見えなかった!! あんな宙返りしたら絶対見えるのに!」
新部和葉:「お二人さん? なんならほら、こんな風に……バレエのデヴェロッペ――ハイキックしても見えないでしょ?」
住和トア:「なんなのよその鉄壁スカートは!?」
瑠東ルナ:「え~~!? 一体どうなってんのそれ?」
米陀は米陀で、ただのバク宙では〝しない〟スカートの動きに理解が追い付かず驚いていたのだが。
さすがに〝ここは〟口を挟まざるを得なかった。
米陀ヨネ:「新部ちゃんはさ…。男子から何か言われたりしたんじゃない? 足を上げざるを得なかったときに」
和葉の眉間にビキリとシワが寄った。
新部和葉:「言われました…。それで取り返しのつかない間柄になりまして…。あのとき、このスカートだったらどれだけ良かったことかと…! すごく腹が立ったんです!」
米陀ヨネ「やっぱり…。そういうときの男って、どうしてそうつまらないことを言うのかしらね?」
新部和葉:「まったくですよ…! 見えても見えなかったフリをしてくれたら良かったのに、やれ淑女らしくないだの、やれ女性として有り得ないだのと! こちとらテメエの命を救うために出した蹴りだろうがよおおお!!!!」
あまりの絶叫と地団駄に、住和・瑠東・米陀の3人は顔を見合わせ。
本気で腹に据えかねるからこそ、このコスプレ防具に和葉がこだわっている理由を察した。
瑠東ルナ:(にしても…じゃあ? 助けた人からパンモロはNGってダメ出しを喰らったってことだよね?)
住和トア:(何かあたし達に打ち明けてないことがあるとは思ってたけど…、ここまで我を忘れるのはよっぽどね…。フォローできるかはわからないけど)
住和トア:「でもさ? 世界広しと言えども、そんなスカートはここに一品しかないわけじゃない?」
新部和葉:「そんなことないんだよ! そんなことなかったの! だって私、この服を作った人の 別の服 を着たことがあったんだもん!」
米陀ヨネ「――え?」
そんなわけがない。
米陀の〝信念〟は商品として出品していない。
何かの間違いであるはずだった。
しかし。
新部和葉:「この防護服を着てみて確信したんだよ! あのエマ・ティンゼルの衣装は絶対に同じ人が作ってるって!」
住和トア:(あ、そっか…! 前世界線での未来の話だから、プリマメが世に出た後に作られた衣装なのかも? ゲームの人気が出れば、割かしゲームショーなんかで着てたりするし。そのときの分を着せてもらったのだとしたら無くはないかもしれないけど…。そうなると……、同じ製作者の服がここにあるということは)
新部和葉:「それに私、製作者さんの名前は知らなくても、ブランド名と二つ名は知ってるんだから。あの、ヨネ姉さん? Duranciaってブランド名なんですけど、どこかで聞いたことありませんか? 耐久性と優雅さの英語をかけ合わせた造語…だったかな?」
米陀ヨネ:(ウチだわ…!!)
新部和葉:「そこのブランドで、確か…糸の守護者さんか、美の鎧職人さんって人が服を作ってるはずなんですけど、このコスプレ防護服も、その人が作ったものだと思うんです」
米陀は、和葉の両肩に掴みがかりたくなる衝動を必死に抑えた。
たとえ心は女のつもりでも身体は大男だからだ。
硬い布地に針を通すのは楽でも、ちょっとした弾みで誰かを怪我させかねない。
ゆえに、感情が高ぶってしまったときには注意が必要なため。
一度、静かに深呼吸してから、米陀は自ら切り出した。
米陀ヨネ:「糸の守護者ってのは、前にあたしが有名ブランドにいたときの呼び名だったのよ」
新部和葉:「・・・、え?」
米陀ヨネ:「デュランシアってブランド名も、本来であればあなたのような子が知れるはずのない名前なのよ? そのコスプレ防具に関してもそうだけど、どうしてそんなに詳しいのかしら? お姉さん気になっちゃうわあ☆〔パチリとウインクしてみせる〕」
新部和葉:「・・・・。え~と…〔気まずそうに住和へと顔を向ける〕」
住和トア:「こっち見んな、ったく…、わかりやすいボロ出しちゃうんだから」
瑠東ルナ:「え? じゃあこれって…? ヨネ姉に説明しなきゃいけない流れなんじゃない?」
新部和葉:「待って! 待って二人とも! 私はまだやらかしたわけじゃないから!」




