◆42.米陀ヨネさんはオーナー兼デザイナー
住和トア:「あの子ってば…〔ちょっと照れくさそうに〕あたし達がどんな人柄か、説明もせずにそんなこと話してるんですか?」
米陀ヨネ:「だって、毎日が友だちとの楽しい日々なのよ? そんな青春の1ページを刻んでいたら誰だって話したくなるものよ。だからあたしは、よっぽどイイ出会いがあったのねって、ルナちゃんに言ったの。そうしたらあの子、なんて反応したと思う? 視線を泳がせた挙げ句、口をモニョモニョとさせて、ちょっと事情がありまして、なんてはぐらかすじゃない! 普段は竹を割ったような子が慎重になるだなんて、これはよっぽどのことだと思ったのよ」
住和はスー…ッと深呼吸して、安易に悟られぬよう、自分の表情筋に注意を払った。
住和トア:(そっか…。どうしてあたし達がお呼ばれされたのか理由がわかったわ…。まあ、読モの編集者が取材に行く先々で、必ずと言っていいほどルナと出くわしてたら、そりゃ疑問に思う人の一人や二人出てきてもおかしくはないわよね…。更にそれにプラスして、お店に招かれて付き合いも長くなってくれば、その分ボロを出す機会も増えていくと…。まいったな。あたしがここで黙ったら肯定するようなものなのだから、何かそれらしいことを言って誤魔化さないといけないのに――)
――そうか、あたしは絵が描けても、こういうことには経験不足なのかと、住和は痛感した。
だが、どんなに返答が遅れても、悪足掻きでもいい。
和葉であればこんなとき、なんて気の利いた言葉を返すだろうかと。
住和がシミュレーションしようとした、そのときだった。
―――◆第3章◆第6幕―――
なんと魔法少女が現れたのだ。
カーテンをシャッと言わせて。
となりの試着室から。
グローブの付け心地を確かめながら。
金髪・青目の、リリカルな魔法少女が、スッと姿を現したのである。
金糸の髪と青玉の瞳は、エーテルのきらめきで またたいて おり。
そこだけが背景から浮き彫りとなっている。
そしてそれは米陀ヨネにとって完全な不意打ちであった。
なぜならとなりの試着室には、新部和葉が入っていたからだ。
それが一体どういうことか、自分が仕立てた〝 コスプレ防具 〟を身にまとって。
端麗な顔立ちには憤怒を宿し。
今にも戦場へおもむかんばかりの空気を発していたのである。
それは米陀ヨネにとって――――、人生初の解釈一致でもあったのだ。
◆
有名ブランドのリーダーは言った。
ファッションとは、刹那的であっても写真に残せるならば、それはアートであり価値あるものだと。
極端な話、デザインさえ優れていれば、着れるのは一日でも構わないという設計思想である。
それは、たった半日で枯れてしまう生花でさえも装飾と見なすブランド方針となったのだ。
しかし米陀ヨネは、その方針に賛同できなかった。
ファッションとは一過性ではなく、時を超えて存在するものなのだと。
いずれリバイバルすることさえある可能性なのだと。
ゆえにファッションとは、単なる美しさを求めるにあらず。
実用性や耐久性も兼ねてこそ、衣服とはその本来の役割を果たし。
美をいろどる ファッション たり得るのだと。
有名ブランドのリーダーと袂を分かった創設者メンバーの米陀ヨネは。
一から新規ブランドを立て直し、今の地位にまで登り詰め直した。
そうして苦しいときこそデザインを起こし。
パターン――型紙を切り出して、自ら縫うことを繰り返した。
それはもう、何度も何度も。
ファッションの本質とは何か?
その問いを何度も己に繰り返し。
そのつど自分なりの答えを出してきた。
その一つが、米陀ヨネの仕上げたコスプレ衣装ならぬ、コスプレ防具だったのである。
キャラクターにとって身を守る装備なら、防護服として機能してこそ意味を成すと。
コスプレ衣装と防具の概念を融合させた――、言わば米陀ヨネのアートであり、自己満足の逸品でもあったのだ。
その作品は確かに、この店にあった。
誰の目にも留まらぬよう、他の衣服たちの中にまぎれ込ませ。
自分の信念など、誰にも理解されずとも良いのだと。
それでもこれが自分の言うところのアートでありファッションなのだと。
声高に語らずとも、自分の信念を象徴する作品として、この店に置いていたのだ。
ゆえに商品ではない。
誰に着られることすらない。
少女たちの目に留まったならば、ちょっとした小ネタくらいにはなるだろうと。
その程度のモノであったはずなのだ。
それがどうか?




