◆40.トアとルナとの中学時代はさ
新部和葉:「いやいや。二週間にたった1日しかない休みを使って、早朝からウチに来て液タブさわってる人には言われたくないよ」
住和トア:「その休みの日にルナの運動に付き合ってやってるあなたは一体なんなのよ? 同じインドアかと思ったのに、早朝ランニングに出くわしたときマジでビビったんだからね?」
新部和葉:「朝からお邪魔してもいいかは聞かれたけど、まさか6時半に来るとは思わないじゃん? ビビる度合いで言ったら、こっちの方が大きいと思うんだけど」
住和トア:「それを言ったらあなたね――」
とまあ、こんな調子で二人は。
デジタル画力と、学力の向上を並行して進めていったのである。
それは学校生活や、たまの休みの日であっても相当うまくやっていたのだ。
和葉は住和や瑠東――、ひいてはクラスメイトたちの様子も気にかけ。
これは調子が悪そうだなと判断したときには。
おまじない と称して、エーテルチャージ を体内に通し、体調を整えてやることに努めたのである。
無論それは ドーピング や 点滴 のようなものではない。
ましてや 状態異常を回復する魔法 でもない。
ただ単に、人の体内をめぐるエーテルの通りを良くしてやるだけの、言わば 気功のような 施術だ。
和葉が異世界アースセザードで、まだサラサ0であったときに。
心象魔法――もとい、無詠唱魔法を習得する際に得た副産物がエーテルチャージなのだ。
つまるところ和葉が何をしたのかと言えば。
不思議なほど長く効き。
身体の調子が良くなって。
その人が本来持ってるポテンシャルを引き上げてくれるエーテルチャージを。
長期間にわたり、クラスメイトたちどころか担任までも含めて、全員にかけてやったのである。
その結果はと言えば、みんなの調子が良くなってハッピーというわけだ。
ともなれば、教室の空気は活性化してゆき。
生徒同士の衝突など起こるはずもなく。
クラスの団結力が高まってゆけば、体育祭なんかでも大活躍したりした。
とは言え、頑張り過ぎというのも禁物である。
たまには羽を伸ばし、張り詰めた糸をゆるめる日も必要なのだ。
瑠東なんかは、和葉と住和に人生を変えてもらった側でありながらも。
二人の鬼気迫る研鑽ぶりには、(コレ、あたしが二人を連れ出さないとダメだわ…)と悟ったほどだったのだ。
和葉からしてみても、空気を読んでタイミング良く誘いをかけてくれる瑠東には感謝しかなく。
何かと外へ出たがらない(※池袋の乙女ロードへ向かうときや画材を買いに行くときは別の)住和を無理やりにでも連れ出して、3人で出かけることもあった。
しかしである。
―――◆第3章◆第5幕―――
いざ出かけてみると、3人の服装センスがバラバラで、連れ立って歩くと悪目立ちすることがわかったのだ。
中でも瑠東は既にストリートスナップをばんばん撮られており。
読モに掲載されるのも当たり前な勢いを獲得している。
良い意味でも悪い意味でも目立つため。
そのとなりを不釣り合いな自分たちが歩くのは、いささか心証が悪いと和葉は判断した。
こと、オシャレ関連でしのぎを削る同性から、瑠東ルナは引き立て役を連れ歩いているなどと、心無いことを言われてしまうのは面白くない。
そこでせめて、私服のセンスだけは合わせておこうという話になり。
3人は、読モ編集者の紹介が無ければ、お店すら開けてもらえない、さながら隠れ家のようなセレクトショップを訪れることとなったのである。
それは言うなれば、店主と予定を合わせた上での貸し切りショッピングとなるのだ。
人様の時間をもらうからには、自分の着こなしに無頓着な住和でさえも、真剣に試着せざるを得なかった。
住和トア:『〔カーテンを閉じた試着室からの声〕とは言え、まさか値札の付いてない服を試着する日が来るなんて思ってもみなかったわよ…。胃がキリキリするんだけど?』
瑠東ルナ:「大丈夫だってば。まだちょっとガサツなあたしでさえ、ここの服はダメにしてないんだから」
住和トア:『〔試着室からの声〕あなたねえ…。いい服着て、大きめの公園なんかでハシャがれると、こっちの方が落ち着かなくなるんだから』
瑠東ルナ:「でも、そのうちイヤでも落ち着かなきゃいけない歳になるんだから、今の内にハシャいでおいた方が得だと思うんだけど?」
住和トア:『〔試着室からの声〕はぁ~…、これだからアウトドア派の 根明 女子は』
※根明の読みはネアカ。根が明るいこと。
根暗=ネクラとの対義語で、今で言う 陽キャ と 陰キャ を指す。




