◆39.絵描きが未来の情報を知ったらさ
◆
住和トア:「ウっソでしょ…!? 乙女ゲーって聞いてたのに…何よコレぇ!!?」
新部和葉:「〔しれっとした顔で〕CGコミックで楽しめる乙女ゲーだけど?」
住和トア:「〔もはや悲鳴に近い声で〕コミックどころか疑似アニメーションしてるじゃない!! 〔涙目となって〕どれだけ枚数かかると思ってるのよぉ!!?」
新部和葉:「およその枚数はちゃんと把握してるよ? もう聞いちゃう?」
住和トア:「ひっ…!?」
その日、住和は。
いずれゲームディレクターとなる親友の家で泡を吹き、倒れてしまったのだった。
―――◆第3章◆第4幕―――
新部和葉:(CGの枚数を聞く前にブッ倒れたときには心配もしたけど…)
和葉がアナログとデジタルの両方で絵を描き、実演してみせると。
住和はギラギラと目の色を変えてみせたのである。
住和トア:「イラスト部に入って、ちょっとばかしチヤホヤされようかなーなんて考えてた自分がおろかしいわ。まさかこんなにも上の描き手から手ほどきを受けられるなんてね。あたしはデジタルがからっきしだから、イヤというほど叩き込んでちょうだい? 必ずあなたを上回ってみせるから!」
絶対に負けないと、瞳に闘志を燃やした住和は凄かった。
放課後は和葉の家に寄って、液晶ペンタブレットにかじりつき。
時間が許す限り、グリップペン = マウスの感覚を手になじませ。
筆圧の設定なども可能な限りアナログに近づけ。
左手デバイス = 電卓のようなキーボードによるショートカットキーの使い方を覚えてからは。
それはもう一心不乱に。
最低でも、今の絵柄を短時間で描き上げられるようには特訓を続けたのである。
新部和葉:(毎日じゃないのにホント呑み込みが早いわ…。ま、アナログで5年、それも小学生の5年間だもんね。それだけの密度でアナログやってたら、デジタルの有り難みがイヤというほど身に染みるものよ)
アナログで絵を描ける人間が同じくらいデジタルで描けるようになると、それはもう万能感が増すのだ。
修正が利かないわけではないが、アナログは基本、ペン入れなど失敗を許されない技術力が要求される。
欲を言えば、絵を仕上げる最後まで修正やミスをしない腕前が求められるのだ。
しかしその点、デジタルならワンクリックやCtrl+Zで、やり直しが利く。
ただの直線を引くのにインクが垂れないよう、定規の斜め部分を利用したり。
ペン入れのつど、ペン先を筆洗いでそそいだり。
ティッシュで拭いたり、ましてやペン先を交換する必要もない。
無論、ペン先のケアなどせずとも綺麗な線を描けてしまう強者も存在するが。
基本的には手間を惜しむと、線がガタガタになってしまうものなのである。
ゆえに、デジタルにはそういった手間がかからないからこそ。
アナログと同じ要領で描けるようになれば、時間を短縮できる以上に、思い通りに 描き続けられる快感が どんどん増してくるのだ。
新部和葉:(携帯ゲーム機で遊んでる男子じゃあるまいし、目を輝かせちゃって)
住和トア:「…うん? どうかした?」
新部和葉:「いんや〔首を振ってみせる〕トアはやっぱり、絵を描くのが好きな側の人間だと思ってさ〔液晶ペンタブレットの隅を指でさし示してみせる〕」
住和トア:「何を今更そんなこと――って、もう8時!? え…? え!? だって! さっきまで4時だったじゃない!!」
新部和葉:「今日は過去一没頭してたからね」
和葉の母:『〔階下から〕カズハちゃんトアちゃ~~ん、そろそろ晩ご飯にしましょ~~』
新部和葉:「は~~い!」
住和トア:「え~~!? もう終わりだなんてそんな…。う~! もっと液タブにさわっていたいよ~!」
新部和葉:「ま、この調子で1学期の終わりまでは頑張ろうよ? そうすれば、オバさんの信用も得られるし、お古をあげるって名目でパソコンと液タブも置けるようになる。それどころか、試験前に一々勉強する必要すら無くなるじゃない。言うなれば一石三鳥だよ」
住和トア:「だからって、勉強会と絵の特訓を、毎日毎日交互に互いの家で続けるのは正気の沙汰じゃないわよ…。カズハに勉強見てもらうと頭がパンパンになるんだから」
新部和葉:「そりゃ、中三の後半から高一の冬まではプリマメの追い込みで、勉強なんてしてられない状況になるからね。まあ、みんなの進学先はメチャクチャ楽だから心配はしてないんだけど、一応一通りはやっとかないとだし?」
住和トア:「一通りと言う割には手抜かりもなく教え上手だけどね…。それでいながらあたしが勉強してる横で テキスト起こし までやってるんだもん。化け物よ化け物」
無論、住和宅にノートパソコンを持ち込んで、のことである。
トゥルールート のテキスト起こしは、空いている時間に少しでも進めておくことにしたのだ。




