2007年◆34.中学デビューは念入りに準備したね
―――◆第3章◆第1幕―――
2007年、4月。
とある中学の、とあるクラスにて。
その日、新入生を迎えたその教室では。
入学式後の恒例の自己紹介タイムが設けられていた。
しかしそれが、わざわざ黒板の前に立って自己PRし。
クラスメイトたちから質問を受け付けるという、しち面倒くさい方式で。
手短に済ませようものなら、担任から趣味などを掘り下げられる、余計なお節介つきだったのである。
そこで 住和トア は、嫌々ながらも仕方なく、少しでも長く話そうと。
自分は絵を描くことが好きで、イラスト部に入る予定であることを述べたところ。
住和トア:(はぁ~~…。なーにが〝普段どんな絵を描いてるのか後ろの黒板に描いてみてくれない?〟よ!! いくら顔が整ってる上位カーストだからって、無茶振りにもほどがあるでしょ! もしあの メガネの子 が〝黒板でも同じように描けるとは限らないんじゃなーい?〟ってフォローしてくれなかったら、危うく描く流れだったじゃない! 担任もノホホンと見てないで止めてよ!? あーもう最悪…! 最悪のクラス分けだわ…。これ絶っ対イジメられる流れじゃん、最悪…)
クラスで幅を利かせる女子というものは居るところには居るものであり。
大抵そういう垢抜けている女子は、少しでも不機嫌を買おうものなら厄介な存在である。
ゆえに住和は目を付けられぬよう、おとなしく学校生活を送ろうと考えていたのだが。
こんな望まぬ自己紹介の機会で、つまらぬスタートを切ることとなってしまったのだ。
こと中学という多感な時期は、校内での身の振り方一つで、その後を左右されることだってある。
それを女子特有のネットワークで、男子などよりも早く学んでいたからこそ、住和の落胆は大きかった。
自分の席に戻ってからは、その後のクラスメイトたちの紹介なんぞ、耳に入らないくらいには頭を抱えていた。
しかしだ。
周りが にわかに ザワつき始め。
黒板にチョークを突き立てる音だけが、教室を支配すると。
落ち込んでいた住和も、さすがに何だろうと顔を上げることとなった。
メガネの子:「はい、とまあこんな感じでね…〔チョークの粉を払いつつ〕住和トア〝先生〟だって、何度か黒板で描く経験を積めば、こんなの朝飯前に描けちゃうわけなんですよ」
そこには――――。
ティーンズファッションに身を包んだ、少女の姿が描かれていた。
しかもその少女の顔は。
先ほど住和に無茶振りを吹っかけてきた 上位カーストの女子 だと、一目でわかるクオリティーに仕上げられていたのである。
メガネの子:「私のこれは小学校を卒業する前に猛練習しておいたから描けるってだけの話で。つまり何が言いたいのかと言うと、普段机に向かって絵を描いてる人に、いきなり黒板でも描いてよーと言うのは、良い場合もあればNGの場合もあるってわけです。特に、まだ12歳にして、プロのイラストレーターにも引けを取らない〝住和トア先生〟にお願いするのは、正直言って失礼な行為に当たるかと」
住和トア:(え? 待って…? 何を言ってるの?)
あまりにもツッコミどころが多すぎて、住和は脳の処理が追い付かなかった。
それどころか突然注目のマトとなり。
あらゆる方角から視線を感じて、本人でさえよくわからない汗が吹き出し始める。
メガネの子:「それにね、瑠東ルナさん?」
瑠東ルナ とは、黒板に描かれている――、先ほど住和に無茶振りしてきた女子のことだ。
メガネの子:「そう遠くない未来、トップモデルのスターダムへとのし上がるあなたにとって今年は凄く大事な年なの。この学校に入学したことがいくら不本意だからって、今は誰かに当たってる場合じゃないんだよ?」
瑠東ルナ:「〔両手を机に叩きつける形で立ち上がり〕あなたっ――、名前は!?」
問われ。
開け放たれていた窓から一陣の風と桜吹雪が舞い込み。
セミロング丈の髪とセーラー服をなびかせながら。
不敵にもほほえんでみせた彼女はこう答えたのである。
メガネの子:「私の名前は新部和葉。あなたをトップモデルへと導き、住和トア先生とゲームを作って世界を掴む女よ」
住和トア:(なっ…!? なんなのよあの子は~~!?)
あまりにも状況がワケわからな過ぎて、住和は白目を剥くほかなかった。
―――◆第3章◆第2幕―――
放課後。
と言っても、入学式とホームルームの予定しかなかったことからまだ昼前の時間帯。
担任とクラスメイトたちが教室を後にし。
残ったメンツは当然のこと、和葉 と 瑠東 と 住和 の3人となった。




