◆▲29.歌の魔法は同じ魂だから引き継げる
====[ティップス・補足情報]====
サラサ0の〝ゼロ〟とはすなわち、前世界線のサラサのことだ
正確に表記するなら サラサ38 なのだが
べんぎ上、前世界線のサラサを サラサ0 と表記し
今世界線の未来に生まれる サラサ39 を、番号の無いただの サラサ と表記する
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そうして〝彼女〟の黒髪と黒目が、金と青にうっすら変わりかけた瞬間。
本能的に、八牧は席を立って。
パソコンのスピーカーから距離を置こうとしたが、そこはもう〝サラサ0〟の間合いであった。
前任のカズハ達から、代 々 引 き 継 ぎ し 魔 法 ――。
サラサ0:「 ロ ー レ ラ イ 歌 唱 法 、行きます!」
―――◆第2章◆▲第8幕―――
サラサ0:「━━━━ 救って Your Sea ━━━━
━━━━ 針を 戻して ━━━━
━━━━ 繰り返す 時を超えて 何度でも ━━━━」
歌声に仕込まれた呪文が、空気中のエーテルと反応を起こし。
八牧の部屋に 風の魔法 を巻き起こした。
スピーカーから突如吹き荒れた猛風に。
両腕を交差させて防御体勢を取った八牧は。
吹き飛ばされまいと踏ん張りながら、我が耳を疑った。
サラサ0:「━━━━ 吹き付ける雨風 揺さぶられる船体 ━━━━
━━━━ 暗き 荒海に 投げ出された ━━━━」
歌声に仕込まれた呪文が、オーケストラの演奏を奏で始めたからだ。
しかも映画館のような5.1chサラウンドシステムを設けているわけでもないのに。
全方位から聞こえてくる楽器の音色は一体どういうことか?
それは空気を震わせる音の波ではないからだ。
言ってしまえば、幻聴を聴かせる デバフ魔法 に等しく、彼の脳内に直接響いているからである。
なにせ、海中でも対象にクリアな歌声と演奏を届けられるよう〝前任のカズハたちが代々〟改良を続けてきた〝継承魔法〟の たまものだからだ。
そのローレライ歌唱法は、サラサ0に引き継がれた時点で。
サラサ0が過去に体験してきた出来事を、他人に追体験させる 幻覚魔法 までもが備わっている。
ともなれば。
プリマメという 創作 の主題歌を聴かせながら、アースセザードでの 現実 を見せることだって可能なのだ。
つまりは、ここからがサラサ0の本気である。
サラサ0:「━━━━ もう無理と 諦めた そのとき ━━━━
━━━━ 抱きしめてくれたあなた 励ますその声に ━━━━
━━━━ わたし また会いたいと 望む ━━━━」
足裏からフローリングの感触が消失した次の瞬間。
八牧はいつの間にやらアクアマリン色の 海の中 に居て。
生まれて初めて驚天動地な衝撃を受けた。
とっさに息を止めるも、とてつもなくクリアな視界と聴覚がウソっぽいのに。
海水の感触だけはやけにリアルで、あまりのチグハグさにワケがわからなくなった。
だというのに八牧は、自分自身がワクワクし始めていることに気がついた。
〝彼女〟がもたらしてくれるであろう〝漠然とした何かを〟期待していたからには。
それを見逃してしまっては意味がない。
そうして、よく意識してもみれば、――見えた。
この〝視界の持ち主〟が、猛スピードで向かった先に。
朱髪の メロウ 分隊によって。
今にも取り囲まれそうになっている蒼髪の マーメイド の姿が。
====[ティップス・補足情報]====
※メロウ = 遺伝子操作で造られた人魚
※マーメイド = メロウと人の間に産まれたハーフ
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アーラウ0:「ナノくん! 下がって!!」
勢いよく薙ぎ払われたリヴァイアソード――蛇腹剣が放射状に広がり。
メロウたちの包囲網を、ただの一撃によって切り崩した。
その一撃をどうにか剣で防いだ〝サキト〟が声を荒げる。
メロウの第二皇子サキト:「アーラウ・ニーベルンだと!? なぜ貴様がここに!!」
無論、その中身はサラサ0であるわけだが、連中が知るよしもない。
マーメイドの第一皇子ナノクス:「なっ…!? どうしてあなたがここに!?」
アーラウ0:「話は後です! 今は撤退を!」
サキト:「竜の呪いを笠に着た魔女風情が! おめおめと見逃すとでも思ったか!?」
斬りかかってきたサキトを、ただの1・2回斬り結んだだけで、アーラウ0が勢いよく弾き返してみせる。
サキト:「馬鹿なっ…!? 海中でメロウの剣を上回るなんて…!!」
アーラウ0:(顔だけじゃなくて! 声まで崎戸さんソックリじゃないですか!?)




