◆24.幕間の続きと新メンバーの話だね
それから 半月後 くらいか。
ネイルアート集を作成する上で、和葉から度重なるボツを食らっていた倉津は。
もうどうしたらいいのかわからないと、藁にもすがる思いで崎戸に相談を持ちかけ。
盛大にキレられたことがあった。
崎戸ミヤ:『お前さ! ホントいい加減にしろよ!! 普段から俺なんかにもやってることじゃんかよ! どーしてソレがわっかんないんだよ!! †アーラウ†から口止めされてたけどさすがに限界だわ、いいか? よく聞け!? お前が苦心に苦心を重ねたネイルアートのデザインはホントすげーんだわ! そんなのは凡人を脱そうと日々あがいてる俺にだって一目見りゃわかることなんだよ! だがな? 世間の凡人どもはそーじゃねーんだわ!! お前が必死こいて えがいたデザインに1ミリもピンと気やしねーんだよ! ポイントはそこだ、いいか、よく聞け? お前は普段から俺なんかにも気さくな笑顔を向けてくるが、つまりはそーいうことなんだよ! お前は今なんのこっちゃと思ってるだろうがそういうことだ、そんなんでいいんだよ!! は? って思ってるだろうが、世間様ほどそーいうものがいいんだよ!! 俺たちが常日頃から感じてる、こ ん な ん で い い の ? こ ん な の が い い の ? っていうアノ感覚だ! お前だって常日頃から自分自身に感じてるだろ? あーオレいま安っぽい笑顔浮かべてんなーって! だ が 世 間 は そ う じ ゃ な い !! それが答えだ!!』
倉津サナ:『・・・・・・、マジで?』
崎戸ミヤ:『あああああああ!! これだから天才肌なヤツは嫌いなんだーー!!』
といったてんまつがあった後。
倉津は『大衆受けするネイルアート集』を完成させ。
一週間後に、網屋リクとコンタクトを取り。
見事、告白に成功したのである。
倉津から聞いた話では、目が飛び出んばかりに驚愕した網屋リクいわく、完敗とのこと。
そのセンスを学ばせてもらうためにも、どうか付き合ってくださいと、逆に、悔しそうに歯ぎしりしながら交際を迫られたのだとか。
いやいや、それは本当に付き合うことになったのかと。
はたからすれば心配に思える成り行きではあるが。
前世界線の――、言うなれば二人の未来を知っている和葉からすれば、グッジョブな進展であった。
更に補足すると、例のグリーンネイルに関する助言は相当効いたらしく。
今すぐ和葉に会わせなさいと胸ぐらを掴み上げられてまでガン詰めされたそうなのだが。
オレと末長く付き合ってくれたら考えないでもないよ~と、網屋の足元を見て要求をかわしたのだそうだ。
つまりは、ここから立場が逆転し、倉津の調子乗り人生が始まるわけだが。
他の女の子たちともデートしまくっている証拠を、和葉が欠かさず保存していることに彼はまだ気づいていない。
近い将来、地獄を見るとも知らずに。
―――◆第2章◆第6幕―――
そうして季節は小学生 最後の 夏休みに突入し。
プリマメの『BGM』と『背景画』を担当してくれる『マルチコンポーザー』を勧誘する時期がやって来た。
前任の手記の指示通りに。
和葉が動画サイトで検索をかけて、たどり着いたアカウントにチャンネル登録をしてから早数ヶ月。
正確に言えば、崎戸と倉津に声をかけてからすぐにだ。
和葉は、 八牧リタ がアップしていた動画を1からすべて視聴し。
そのつどコメントを書き残すことで、彼と知り合うためのキッカケ作りに努めていた。
なにぶん、二人と同じように声をかけては警戒されて上手くいかないとのことから。
やらざるを得ない地道なアプローチというわけである。
無論、八牧リタの音楽性を知る上でも、必要な経緯には違いなく。
彼みずからが描いた風景画と、
彼の作曲したBGMは、
実に〝ミスマッチしている〟ことがよくわかった。
と言うよりも、曲の体を成していない音の羅列がほとんどで。
およそBGMとは呼べない音が、それなりに美しい風景画をバックに流れるので。
普通の人間からすれば、すぐに視聴を止める仕上がりとなっている。
ゆえに、そんなミュージックビデオを見たがる者は皆無に等しく。
再生数も良くて2桁台で。
ましてやコメントが書き込まれるようなクオリティに達していないことは、誰の耳にも明らかであった。
しかしそれが〝試行錯誤の果てにメチャクチャにされた〟ものであり。
元は完成していた曲であったと事前に知っていれば。
聴き方も変わってくるというもの。




