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◆22.ネイルアートとフローチャートのことだっけ


 新部和葉:「そ・こ・で、キミに取っておきの策があります。まだ話を聞いてもらえる――、見直してもらえる余地が残ってるわけだから、そこにサナくんの全力をぶつけるわけよ」



 和葉はマウスを操作して、フォルダ送信の準備を済ませた。



 倉津サナ:『オレの全力なんて高が知れてるよ?』


 新部和葉:「そんなことはないよ、そういうところよ? 網屋さんが苛立ったポイントは」



 和葉はフォルダを送信した。



 倉津サナ: 『これは?』


 新部和葉:「2022年から、2030年までに賞を取ったネイルアートの数々」


 倉津サナ:『は?』


 新部和葉:「それらのデザインを私が意図的に崩したり削ったりしたネイルアートの参考集ってわけ。キミはこれからその参考集をもとに、キミ独自のデザインを加えて新しいネイルアートを作ってしまえばいい。それを網屋さんに見てもらえれば、サナくんの本気度が伝わると思うのよ」


 倉津サナ:『いや~…、でもそれって、だいぶズルじゃない?』


 新部和葉:「うぬぼれ」


 倉津サナ:『うっ…!』


 新部和葉:「いくら近い絵柄があったって、必ず同じデザインになるとは限らないでしょ?」


 倉津サナ:『ごもっともで…』


 新部和葉:「まあ、うぬぼれてもいいくらいのセンスは持ってるわけだから、頑張りなよ」


 倉津サナ:『うん…、それはとてもありがたいのだけど…? じゃあオレも、ネイリストを目指したかと言えば、そうじゃないんだよね?』


 新部和葉:「正解。ネイルアート参考集を譲るのは、キミにやってもらいたいことがあるからなんだよ。TWスクリプターなら、自分なりのことができるんじゃないかって考えがあるんじゃない? だからブログのタイトルが『優美なるプログラマー、になる予定の日々』なんでしょ?」


 倉津サナ:『おー! 見てくれたんだオレのブログ、って! そう来たか~! 今オレが打ち込んでる唯一のことじゃん! 何よ? 何々? オレに何をしてもらいたいのよ?』


 新部和葉:「ずばり、フローチャート・システムを作ってほしいのよ。今こっちで作ってる乙女ゲーのヤツをね。それも出来ればフラグ管理ができる、恋愛値が可視化されたタイプのヤツ。あと、場面ジャンプ機能も欲しいかな?」


 倉津サナ:『〔パチンと指を鳴らして〕やる! やらせていただきます! と言うかまさにオレが構想してたシステムじゃん! もうこんなのやるしかないでしょ!』


 新部和葉:「なら良かった。じゃあまずは、ネイルアートの参考集フォルダを受け取ってもらって」


 倉津サナ:『りょうか~い』


 新部和葉:「それから肝心の――、フローチャートの全体図と、システム用画像パーツのデザイン案と寸法、それにテスト用に章立てたダミーパーツ。これを組み込めばプレビュー画面で確認しやすいからうまく使って」



 うん? と倉津が目をパチクリとさせてから硬直する。



 倉津サナ:『あの~…? 今どれくらいの進ちょく状況なの?』


 新部和葉:「え~と…、共通ルートと各ヒーローのシナリオ日本語版英語版ともに脱稿済みで、仮絵もその分は終わってて、共通を終わらせた今はスクリプトの組み込み作業で、ヒーロー1人目の中盤を越した辺り。あ、大丈夫だよ? トゥルーに比べたら共通も各ヒーローも短いから」


 倉津サナ:『ふんふん…オーケー。じゃあ、仮絵ってのは?』


 新部和葉:「イラストレーターさんは来年中学に進学してから捕まえるから」


 倉津サナ:『〔若干、口元を引きつらせながら〕あぁ…把握したよ。あ、それと、乙女ゲーって言うなら、ヒーローは何人?』


 新部和葉:「4人」


 倉津サナ:『それにプラスしてトゥルー・ルートも作る予定と…〔タッチタイピングでキーを打ちながらメモする〕』


 新部和葉:「トゥルーのシナリオテキストはともかく、みんなで本格着手するのは2011年の高2からだから。トゥルーは一旦忘れちゃっていいよ? 共通と各ヒーローのルートまで作った分を2010年の冬コミで頒布したいのよ」


 倉津サナ:『ははっ…〔さすがに乾いた笑いが出るもメモする手は止めない〕』


 新部和葉:「で、この動画サイトのアドレスが、テストプレイを録画したヤツね」


 倉津サナ:『ほいほ~い。今ちょこっと見ちゃうねー』



 すると倉津は、崎戸のときと同じように息を呑み。


 やがては手をパンパンと叩いてゲラゲラ大笑いしたのだ。



 倉津サナ:『ヤっバいでしょこの規格! とんでもないよ! そりゃ長期間制作にもなりますわな! でもいいのオレで? フローチャート作んのは自信あるけど、他のサブ作業でどこまで戦力になるかわかんないよ?』


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