◆21.網屋リクさんのことを話したんだよね
倉津サナ:『やめて…、これ以上オレの心をえぐらないで…』
新部和葉:「なんだ? 結構余裕あんじゃん?」
倉津サナ:『あ、バレた?〔てへペロして〕 いや……正直すっごい混乱してる。どういうことなの…?〔途方に暮れた表情になって〕』
新部和葉:「だろうね。じゃあキミに、取っておきの言葉を贈ろう」
倉津サナ:『なになに?』
新部和葉:「私と一緒に、網屋リクさんを攻略してみない?」
倉津サナ:『いいねソレ! …って、攻略? 落とすってこと? マジで言ってる?』
新部和葉:「マジもマジ。大マジよ?」
和葉がニチャアと笑ってみせると、さしも倉津も顔を引きつらせたのであった。
―――◆第2章◆第5幕―――
異世界アースセザードのことは伏せて、未来から過去の時代に生まれ変わった旨を話すと。
倉津サナ:『OK、把握したよ』
新部和葉:「いいの? そんなにあっさり信じちゃって」
倉津サナ:『信じる他ないでしょ? オレ自身が思ったことを丸々言い当てられたら、未来の自分が話したとしか思えないもん』
新部和葉:「じゃあ、自己肯定感が欲しくて、デートしまくってたのもホントなんだ?」
倉津サナ:『ぐっ…〔初めて本当につらそうな顔をして〕未来のオレは…、そんなことまで話したの?』
新部和葉:「そうだけど…。こんな時間帯に声をかけてきたのも、そういうことなんでしょ?」
倉津サナ:『〔片手で顔を覆って〕わかったその前に…、ニイベさんはオレよりも中身が年上ってことでいいんだよね?』
新部和葉:「そうだね」
倉津サナ:『じゃあもう格好つけても仕方ないか…。この二日、リクちゃんに食い下がる方法を模索してたんだよ。でもてんでダメでさ…。誰かオレのこと慰めてくんないかなーってパソコンつけたらコレよ』
新部和葉:「ちょっと? コレ呼ばわりは酷くない?〔苦笑いを浮かべて〕」
倉津サナ:『せめてもの仕返しってことで〔ニカッと笑ってみせてから、頭の後ろで手を組んで天井を見上げる〕リクちゃんから、ホントつまらない男って言われたとき、とうとう言われたかーって思ったよ。ずっと逃げ回ってたことを責められた感じがした』
新部和葉:「どうして網屋さんがそんなことを言ったのかわかる?」
倉津サナ:『う~ん…? そこのところはわかんないんだけど、オレ、習い事とか劇団とか、芸能事務所の仕事から逃げてたんだよね。家も裕福で親も優しくて、こんなルックスに生まれておきながら、今一どんなことにも情熱を抱けなくてさ』
新部和葉:「そんなことはないんじゃない?」
倉津サナ:『そんなことあるよ。上流階級に生まれた子どもは色んな事してんだから。この歳でやることやりたいこと見つかってないのは相当ヤバい。なのにオレは、このルックスと天性の勘の良さに甘えて、なんにもしてこなかったわけ。だからリクちゃんに声をかけたのよ、オレと同類だと思ってさ』
新部和葉:「同類だった?」
倉津サナ:『あれは違うね…。いや、リクちゃんのこと全然聞き出せなかったから、正直なとこわかんないんだけど…、〔真剣な眼差しをして〕オレなんかとは、全然違うと思う』
新部和葉:「だからこそ落としたいって思った?」
倉津サナ:『はは…! それってズルくない? 答え知ってて聞いてるでしょ?』
新部和葉:「じゃあ答え合わせしちゃおっか? キミにはそれを知る資格があると私は思うよ?」
倉津サナ:『う~ん……、ホントは良くないことだと思うんだけど、教えてください』
新部和葉:「家は中流階級、親厳しくて、がんじがらめな生活がデフォ」
倉津サナ:『ウソでしょお!?〔ガタッと席を立って〕 だって…、同い年で、あんなに垢抜けたオシャレしてて!』
新部和葉:「時間もお小遣いも捻出して、化粧道具には手が出せなくて、服もアクセサリーもネイルチップに至るまで、ぜーんぶ友だちに預けてたんだってさ。当然、ネイリストになる夢には親猛反対」
倉津サナ:『そんな…! そこまで真逆だったなんて…〔愕然とした様子でイスに腰を落とす〕』
新部和葉:「彼女さ、サナくんの手を掴んでマジマジと見たんじゃない?」
倉津サナ:『うん、見たけど…、アレは一体なんだったの?』
新部和葉:「何か習い事はしていたようだけど熱心ではない。話してみた感じはなんだってできそうなのに、それだけの自由を許されておきながらあなたは一体何なんだって、凄く腹が立って――、同時に…歯痒くも思ったんだってさ。でも、自分の立場と比べるとどうしても悔しくて、それでかけるべき言葉を誤って、突き放すような言い方をしてしまったと。後悔してんのよ、網屋さんも」
倉津サナ:『ウソでしょお…?』




