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20/61

◆20.チャラ男にも悩みはあったんだよね


 新部和葉:「よっし警戒心ゼロだわ! まあ今のアカウントはNiibeKazuhaで女とわかるからね。とは言え、こんな時間帯に見知らぬ女子と話そうってのは妙な話だわ。であれば前世界線の記憶チェックよ。ネイリストの 網屋さん との馴れ初め話は聞いた憶えがあるんだけど…、ひょっとしてそれがらみじゃないかな~と…、どれどれ?」



 恒例の、イスの上であぐらをかいて、腕を組み。


 まぶた閉じーのをした和葉は、前世界線の記憶を確認すると、思わず膝を叩いた。



 新部和葉:「これ網屋リクさんにフラれたタイミングだわ! え? ウソでしょ…? ネイルアートの参考集はとっくに用意してあるけど…、ちょっとした取り引き材料のつもりだったのに、こんなん私が恋のキューピッド役をやる流れじゃん…! ええっ…? なして? なしてそれならそうと手記に書いとってくれなかったとですかカズハさん!? ワザと? ワザとなの!? え…? 聞いてないんですけど、マ?」



 さりとて、倉津サナがフラれたタイミングで声をかけろと指示してあったとしても、そんなことは確認しようがないし。


 事実、昨日と一昨日のブログにもそれらしい様子は見られなかったのだ。


 要するに前任のカズハは、後は流れで察してくれるだろうと、手ハズの流れをアバウトに記したのである。



 新部和葉:「マっズイな…、もう5分経っちゃうんだけど。そうだな~…? じゃあ、二人の仲を取り持つって言うよりも、どちらかと言えばサナくんと悪だくみする方向に持ってった方がいいんじゃないかな? あ、いや待てよ? どうなんだソレは? いやでもコレしかないんじゃないかな~…、う~ん…? いやいや、そうしよ! そうしよう!」



 方向性が定まったのなら、後は段取りだ。


 急なアドリブを求められるのは、異世界転生させられた――もとい、アーラウの肉体に転移降霊させられた経験で慣れている。


 和葉は自分の手札の切り方を決めると。


 ビデオチャットの開始ボタンをクリックした。



 倉津サナ:『はあい♪ こんばんは~』


 新部和葉:「こんばん――うっわ!? カメラ越しでそのオーラはヤバいでしょ? メイクとかしてないよね?」


 倉津サナ:『お風呂すませちゃったし、さすがにしてないよ~〔愉快そうに屈託なく笑って〕』


 新部和葉:「えぇ~…? さすがは芸能事務所の誘いを断っただけのことはあるね?」


 倉津サナ:『お? ちょっとちょっとぉ、それどこ情報? オレをおだてようったってそうはいかないよ~?』



 栗色シャタンのゆるふわウェーブに。


 少し垂れ目がちな瞳の端には泣きぼくろまでも完備し。


 上品にアルカイックスマイルさえ浮かべてみせるのだ。


 意識的に表情を変えてみせると女の子が喜んでくれる。


 それを覚えて以来ひっきりなしにやっていたというのは本人の談だ。



 新部和葉:(なるほどね…)



 だがそれは、わかる人間にはわかるものだったのだ。



 新部和葉:「そうやってヘラヘラ笑ってみせるもんだから、網屋リクさんに叱られたんでしょ? つまらない男だって」


 倉津サナ:『うっ…!? ちょちょっ…ちょっと待って? どういうこと? なんで初対面のキミがそんなこと知ってんの? リクちゃんが言いふらしたなんてことは…無いと思うんだけど?』


 新部和葉:「へ~? ある程度はわかってるんだね、網屋さんの本質を。だから2回もデートに誘ったというのに、うまくいかなかったと?」


 倉津サナ:『やめて…! 傷心のオレに追い打ちをかけないで!!』


 新部和葉:「なにせ、女の子にフラれたことなんて、今回が初めてだもんね?」


 倉津サナ:『え…どゆこと? いくらなんでも詳しすぎない?』


 新部和葉:「芸能事務所の誘いは4回も断ったんだよね? その内の一つはあまりにもしつこくて気持ち悪かったと」


 倉津サナ:『アレは無い! いくら大手でも絶っ対ロクでもないもん。それに、結構イヤンな噂も聞くしね――、じゃなくて』


 新部和葉:(ノリの良さはいいとこなんだけどもね…)


 倉津サナ:『オレ、そんなことまで女の子に話したことあったっけかな? 言ったらどこの事務所か丸分かりだし、嫉妬してるなんて捉えられたらカッコ悪いじゃん? だから伏せてたはずなんだけど…?』


 新部和葉:「話してくれたよ? 未来のキミがね」


 倉津サナ:『・・・・、未来の、オレえ?〔眉根を寄せて怪訝そうな顔で〕』


 新部和葉:「そう。ちなみにだけど、こんなことも話してくれたよ? ――つまらない男って何よ!?〔迫真の演技で〕 オレまだ12歳よ? どう面白くなれって言うのよ? やることやりたいことなんて、この歳でそう簡単には見つからないよ! なにせオレはなんでもそつなくこなせちゃうからね☆ 熱中できるものなんて、そんじょそこらには転がってないのよ! って」



 倉津は絶句してから、両手で顔を覆った。


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