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16/20

◆16.魔女役は異世界で経験済みなんだよね


 新部和葉:(だいたいカズハさんだってそうなんだよ。ニイベだから近い響きのアーラウ・ニーベルンに転生すると考えれば、何らかの仕組みがあってもおかしくないのに、いくら調べてもそれらしい事実は確認できなかったなんて、この顔を見ておいてそんなことを言われてもね…。だって私なんか、リヴァイアソードで斬り結んだ相手が見知った顔だったんだもん、あの衝撃は忘れられないよ…)



 扇子の裏で、ひっそりと溜め息をつく。



 新部和葉:(しかも声まで似てると来たら絶対におかしいって。カズハさんなんかは、声優さん達を雇う都合で二役任せたんじゃないかしら――なんて冗談めかして言ってたけど…。私はこの世界線に生まれるサラサちゃんになんて説明したらいいのよ? まあ…、やりようが無いわけでもないんだけど…、ちょっとねえ…)



†闇の漆黒者†:『なっ……、何者なんだ、テメエは…?』



 新部和葉:(おっ、硬直が解けたら中二病じゃなくて素の反応になってる! いいねえ。ミヤくんみたいな相手にはファーストインパクトが大事だから。じゃあちょっとばかし、演じてみせるとしましょうか)



 和葉は、いかにも慣れていそうな手付きで〝練習した通りに〟扇子を閉じてみせ。


 歳に似合わぬ、静々とした歩きで。


 パソコンの前まで歩を進めると。


 それはそれは堂に入った、優雅な一礼をしてみせた。



 †アーラウ†:「お久しぶりですわね、第二皇子殿下」


†闇の漆黒者†:『はあ…!?』


 †アーラウ†:「あら? これはとんだご無礼を…。そう言えば、こちらでは 初めまして でしたわね。コホン…。お初にお目にかかりますわ。わたくしは、アヌンナ魔科学連邦 復興局 開発部の特級技官魔動師、アーラウ・ニーベルンと申しますわ。どうか以後お見知りおきを、闇の漆黒者さま。




 ――もとい、 崎 戸 ミ ヤ さ ま 」




 和葉はニチャアと渾身の笑みを浮かべてみせた。



†闇の漆黒者†:『ほああああああ!!?』



 画面の向こうで、崎戸がイスから転げ落ちた。


 以降、†闇の漆黒者†は、崎戸ミヤの表記で進行する。



 崎戸ミヤ:『ばばばばっバカなっ!? どうして俺の名前を知っている!?』


 †アーラウ†:「それは以前お会いしたことがあるからですわ。もちろん、今世の話ではありませんけども」


 崎戸ミヤ:『じゃあ前世からの仲だとでも言うのかよ、ふざけんな! 俺を担ごうったってそう簡単には――』


 †アーラウ†:「いいえ〔首を振ってみせる〕前世とは少々状況が異なりますわ。言うなれば並行世界と…、後は異世界からのお付き合いですわね」



 いきどおっていた崎戸の瞳がパチクリと見開かれる。



 崎戸ミヤ:『それはなんか思ってたのと違うな? しかもお前は…、すべてを話していないだけで、ウソはついていないような…? って、これはあくまでも俺の直感だが』


 †アーラウ†:「さすがですわね。人の本質を見抜く直感はこんな幼少の頃からもお持ちでしたか。冴えてるときは冴えていて、波があるとは聞き及んでいましたが」


 崎戸ミヤ:『!! 待て…? お前のその言いようじゃあ…、並行世界の未来の俺と、会ったことがあるってわけか!?』


 新部和葉:(しまった…。12歳でこんなにも頭の回転が速いとは思わなかったな…。ヘタに隠し立てをすれば悪手か…。ここは素直に謝っておこう)


 †アーラウ†:「まだ子どもだと、あなた様のことを見くびっておりましたわ。どうかご無礼をお許しくださいな」


 崎戸ミヤ:『おまっ…!? 年齢は同じくらいなのに、妙に落ち着いてるなとは思ったけど…、ひょっとして、中身は年上なのか?』


 新部和葉:(え、凄くない? 私にとっては中二心を忘れない熱血オジさまで、たまに鋭いことを言うぐらいの人だったんだけど…。それともこの特殊な状況下に、たまたま中二センスがフィットしてるだけなのかな? 今一どっちなのかわからん…)



 和葉は鮮やかな手付きで扇子を開いてみせると、口元を隠してみせた。



 †アーラウ†:「さて…、サキトさまにはわたくしがいくつに見えまして?」



 和葉が目だけで笑ってみせると。


 崎戸は眉をしかめてから首を振ってみせた。



 崎戸ミヤ:『答えないぞ…。こういうときはろくなことにならんからな、ノーコメントだ』


 †アーラウ†:「〔愉快そうな声で〕あら、それは残念」


 崎戸ミヤ:『いや、そんなことよりもだ! 俺はまだ状況を呑み込めないでいる…。お前、スニーカー文庫のハルヒは読んだことあるか?』


 †アーラウ†:「ええ。どんな内容かは存じておりますが…(何だろ突然?)」


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