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15/19

◆15.崎戸ミヤくんを驚かせたよね


 そんなことをしている内に、時間帯が良い頃合いとなったので、まずは一人目との接触を試みる。


 だがその前にやっておくべきことがあった。


 早め早めにと用意しておいた例の〝アレコレ〟である。



 新部和葉:「お母さーん! 朝に頼んでおいたヤツ、やってもらえるー?」


 和葉の母:「はーいー! 準備できてるわよ~、いらっしゃ~い!」



 そうして〝着替えを〟済ませて自室に戻ってきた和葉は。


 『MSNメッセンジャー』のツールボタンをクリックして。


 メンバの追加を選び、ブログに公開されている 崎戸ミヤ のホットメールアドレスを入力した。


 メッセンジャーというのは、今で言うところの LINE や Discord みたいなものだ。


 こうすることで向こうのメッセンジャーに通知が飛び。


 オンライン状態を公開して連絡を許可するか?


 または、オンライン状態を公開せずに連絡も禁止するかを相手に選んでもらうのである。


 つまるところ選択権は向こうにあるわけだが。


 和葉は前任のカズハにならい、自分が取得したホットメールアドレスに ある策 を仕込んだ。


 すると、そのメールアドレス名を見た小学6年生の崎戸ミヤは。


 たとえ相手が知りもしない赤の他人でも、一言モノ申さなければ気が済まなくなるというわけだ。




━━†闇の漆黒者†がメンバリストに追加されました。━━




 新部和葉:「ふふっ…!」



 わかっていたはずなのに、和葉はそのインパクトに耐えることができなかった。



 新部和葉:(いやいや、笑ってる場合じゃないっての…。彼がそのうち、コレを恥ずかしいと思うようになるまでは私もこのノリに合わせないといけないんだから、集中集中!)



 そのための格好と 美麗な扇子 までもを用意し。


 付け加えて言えば、異世界では悪役の魔女になりきってアドリブで演じなければならない状況さえあったのだ。


 準備は万全である。


 そうして、崎戸ミヤからチャットが来た。



†闇の漆黒者†:何者だ? 我が一族の名をかたろうとは! 万死にあたる行為と知れ!



 そう、このままチャットをすると、<Shikkokusha@hotmail.com>の表示名で会話が始まってしまうのだ。


 なので和葉は、他のメンバに公開する名前を†アーラウ†という悪役の魔女名に変更して。


 ビデオチャットの開始を いきなり 申し込むという暴挙に出た。



†闇の漆黒者†:なっ!? 正気の沙汰ではないな! さては貴様、我が一族を知る教会の手の者だろ? こざかしい真似をする…、疾く正体を名乗るがいい! つまらないからな、そういうの



 この状況はつまり、ある日突然、見ず知らずの相手から、顔を合わせて話しましょうと、強引な誘いを受けたようなものである。


 相手に許可を求めない一方的なビデオチャットの申し出は、普通であれば拒否されるものだ。


 2006年の現在、ネット上と言えど、それくらいの防犯意識は普及し始めている。


 だが、崎戸は違った。



†闇の漆黒者†:よろしい、わかった。そちらがその気ならご対面といこう。ワレが貴様の醜い尊顔を拝すること、ありがたく思うがいい!



 そんな最終通告をくれずとも、和葉は既に席から離れ、スタンバイ済みであった。


 かくして、ビデオチャットを許可した崎戸の瞳には――。




 広げた扇子で口元を隠した、和服少女の立ち姿が映ったのである。




 和葉はウェブカメラの画角に収まるよう、引いた位置にわざわざ立っておいたのだ。


 無論、軽くではあるが、髪もメイクも母親にセットしてもらってある。


 きらびやかな髪飾りだって欠かしてはいない。


 和服と扇子のガラも、キャラクターに合わせて華やかなモノを選んである。




 一方、向こうの姿は、いかにも小6なクソガキの姿であった。




 髪の毛がツンツンとしていて活発そうで。

 

 負けん気の強そうな、まさしく生意気という言葉が似合う。


 最近になって、つり目がちになり始めたと思しき幼さが残る顔付きで。


 短パンかハーフパンツでも穿いてそうな、思わず膝小僧を拝みたくなるショタだ。



 新部和葉:(やっぱり、第2皇子のサキト・アトランティカなんだよね…。幼顔でも一目でわかるくらいには顔付きが似てる…。しかも異世界の方ではサキトで、こっちは崎戸っていうね。ナノくんの異母兄弟たちの名前が、マーメイドテールの創始者たちの名字と読みまで一緒なんだもん、すごいぐうぜんがあったもんだ)



 和葉は扇子で口元を隠したまま目を細めた。


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