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2006年◆13.乙女ゲー会社の内輪もめってどうなったっけ


―――◆第2章◆第1幕―――




 2年後の、2006年。


 渡瀬は25歳を迎え、和葉は小学6年生の12歳となった。


 あれから、主人公エマ・ティンゼルの性格改善に関しては、渡瀬から「特に問題は無いはずだ」との同意を得られ。


 トゥルー・ルートに比べたらさして長くもない、共通ルートと各ヒーローのシナリオを書き終え。


 昨年、渡瀬から「ここのを使え」とサイトを指定された――商業利用も可能なフリーのゲームエンジン、TWスクリプターをもとに。


 物語に合わせて最初から最後までを描ききった『仮絵のCGコミック』と。


 『漫画のような吹き出し素材』を、各々のパーツ名でもって打ち込むことにより。


 それをこのシーンの、この位置で使いますよとスクリプトで指定し。


 シナリオテキストの会話文が吹き出しからハミ出ぬよう、プレビュー画面で動作を確かめながら、微調整を繰り返しつつ組み込んでいき。


 そのつど、そのシーンにふさわしい演出スクリプトを、候補の中から選んでコピーしてはペーストして。


 実際に、マウスのクリックやホイールでテキスト送りをした際に、前世界線でプレイしたプリマメと同じ挙動となっているか?


 そのチェックまでを済ませる一連の作業を、和葉は毎日毎日、それはもう毎日毎日続けていた。



 新部和葉:(まさか…、小学校に通ってる時間の方が息抜きになるなんてね~)



 サラサ・フォーチュンハートであったときは、王家専属の大学教授たちから勉強を教わったので。


 学校に通ったこと自体なかった元お姫さまの和葉にとっては、幼い頃からの夢がようやく叶っている状況であり。


 漫画やアニメでしか知り得なかった学校生活というものを、心からエンジョイしていたりする。


 とは言え、放課後までも遊びほうけていられるかと言えば、そんな暇は無く。


 足早に帰宅しては、夕方6時のアニメまで仕事をして。


 夕食までのスキマ時間に、宿題などを片付け。


 録画しておいた深夜アニメを消化しつつ、夕食を済ませ。


 その後すぐに入浴を終えたら、就寝時間まで仕事の続き、という流れである。



 新部和葉:(トゥルー・ルートのシナリオが短ければもう少しゆっくりできるんだけど…。そのトゥルーに、私が異世界で経験したことを詰め込まなきゃいけないんだから仕方がない。それに…、前任のカズハさんが作った通りに――というわけにも行かないしね~。更新できるところは更新して、アースセザードの解像度を上げてかなきゃ、ナノくん達を犠牲にした意味が無くなってしまう…)



 仕事中はテレビもネットも禁止にしているので、こうして根を詰めて作業をしていると。


 果たして、無詠唱魔法の習得がすべての打開策となり得るのか?


 可能性は高いはずだが、解消しきれていない懸念点もまだまだ残っているんだよなと。


 今考えても無意味なことが頭の中をよぎり出す。



 新部和葉:(週一か週二でヘルプに入ってくれてたチサ兄の存在ってホント大きかったんだよな~。今週はこんなに頑張ったんだよって成果を見せれば、毎度アホみたいに驚いてくれるし、本気で感心してくれるからこそ、やりがいも生まれるってもんよ)



 その点で言えば、母親に仕事の話を振ってもなかなか伝わらないので。


 話のわかる身近な同業者というのはありがたい存在なのである。



 新部和葉:(あ~…、チサ兄んとこの修羅場、早く終わってくれるといいんだけど…。キャラデザのコンペで負けた人が色々と根回しして、プレス工場に郵送するマスターアップディスクをすり替えちゃったからな~)



 意図的に、バグ満載版のディスクとすり替えられたこと自体は、和葉の事前リークによって渡瀬が防いだわけだが。


 犯行グループを罰して、ハイお終いというわけにもいかない。


 なぜなら、事件を起こしたグループをどうにか反省させ。


 おとがめ無しで、社長や他のスタッフ達とも和解させ。



 その後も、犯行に及んだグループを、ムーンリット社にとどめさせるという無理難題をなそうとしているからこそ、時間がかかっているのだ。



 無論それは、この件で優秀なスタッフたちが抜けてしまうと、そのうちムーンリット社が傾いて、倒産の危機を迎えてしまうからだ。


 現にそれは、和葉がサラサだったときの前世界線で起こってしまった出来事なので。


 ムーンリット社の子会社として、マーメイドテール社を立ち上げるには、避けては通れない解決必須のイベントでもある。



 ゆえに和葉は、持ちうる中で有益な情報を与えられるだけ与えて渡瀬を送り出したわけなのだが…。


 いかんせん、キャラデザのコンペから端を発した事件でもあり。


 社内の派閥がこじれにこじれていたことから、そう簡単には解決しようのない人間関係の問題でもあったりする。


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