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11/19

◆11.小4の私はどれだけ描けたっけ


 渡瀬は、部屋の壁に貼られてある 背景画 の数々を見回した。



 渡瀬チサ:「よくこれだけ描けるようになったもんだ。――うん?」



 部屋の隅に置かれてある、クタクタとなった『背景の描き方本』が目に留まって、渡瀬は改めて感心の息をついた。



 渡瀬チサ:「叔母さんが舞い上がる気持ちもよくわかる」


 新部和葉:「ゲームクリエイターになることは海外で働いてる父さんにも伝えておいたから。私が作るゲームを心待ちにしてるってさ〔渡瀬お手製のテスト用紙と筆記用具を学習机へ片付けながら〕」


 渡瀬チサ:「二人の理解を得られたのは大きい。こうして光回線も引けたことだしな」


 新部和葉:「そ・れ・ね! いにしえのホームページめぐりもできるし最&高だよ最&高! チサ兄が乙女ゲー作りのために新調してくれたパソコンもサクサク動くし言うことないよ」


 渡瀬チサ:「だからって、ネットサーフィンに夢中になって本来の目的を忘れるなよ?」


 新部和葉:「大丈夫だって。シナリオのテキスト起こしはもう始めてるから。…とは言え…、前世界線で不評だった部分には手を入れたいから、英語版も用意する都合上、あまり余裕ぶっこいてるわけにもいかないんだよね…。近日中に改善した部分も込みで送るから、主人公の性格に問題がないか確認よろしくね?」


 渡瀬チサ:「それはもちろん引き受けるが…、スクリプトを意識したト書きもちゃんと添えておくんだぞ? 演出も忘れずにな?」


 新部和葉:「わかってるわかってるって。どんな風にテキストを用意するかは前世界線で見せてもらったことがあるから大丈夫。と言うか…、このときのために前任のカズハさんが見せておいてくれたわけだから」


 渡瀬チサ:「はあ~、実に抜かりの無いことだ」


 新部和葉:「ホントにね…。それを私も一応やっておかないといけない辺りが大変なんだけど…」


 渡瀬チサ:「う~~ん…? やる前から失敗することを考えたくはないが、もしもの備えを残さないのもそれはそれで怖いな? これまで38代もかけてアップデートされてきたアドバンテージが無に帰しかねない」


 新部和葉:「そゆこと。だから、何年に何をしていたか極力記録を残しておいた方がいいんだよね。サラサちゃんに一目でも見ておいてもらえれば映像記録として残るから」


 渡瀬チサ:「わかった。その辺りは僕の方でも意識して残しておくとしよう。とは言えだ。お前の代で成功させるつもりで行くぞ? こんなことを延々と繰り返させるわけにはいかない」


 新部和葉:「もちろん、そのつもりでいるよ」



 でなければ、ヒーローのひとりが欠けてから、無詠唱魔法の習得に全力で舵を切った意味が無くなってしまうからだ。


 残ったヒーロー3人を死守したところで、ラスボスのタイダル皇帝を打ち破る究極魔法は完成しない。


 だったら、次の代へ活かせる技術を――無詠唱魔法を習得した方が合理的であると。


 和葉は自分のヒーローたちに無理を言って割り切ったのである。



 新部和葉:「それはそうとさチサ兄?〔白紙のマンガ用原稿用紙とミリペンのピグマを持ってきて〕ちょっと見ててね~~」


 渡瀬チサ:「うん…? 何をする気だ? ……って! おいおいウソだろう!?」



 渡瀬が驚いている内に、シャーペンで下描きするどころかアタリ線を引くこともなく。


 和葉はミリペン一本で 一発描き をし始めたのである。


 そしてものの5分程度で、躍動感のある 線画 を仕上げてしまったのだ。


 渡瀬からすれば、下描きの線でも見えているかのような手の動きだった。



 新部和葉:「う~ん…?〔原稿用紙を様々な角度から確認して〕よしっと。今回はまあまあうまく描けた方かな? プリマメの主人公、エマ・ティンゼルちゃんね」


 渡瀬チサ:「そういえば、あのパッケージイラストにも居たな? というかこの絵…、一発で描けるように何度も練習したろ?」


 新部和葉:「もちろん」


 渡瀬チサ:「凄いっちゃあ凄いが…、こういう描き方を覚えて意味はあるのか?」


 新部和葉:「極めればあるよ? 沢山のポーズを描けるようになれば、線を引くときに迷ったり試行錯誤する時間が減るから。漫画家さんたちがその良い例だね。まあ、極めなかったら、ただの一発芸止まりになっちゃうけど」


 渡瀬チサ:「お前がそこまでする必要性は――あ、わかったぞ? 住和トアを引き込むためにか」


 新部和葉:「正解。まあ、他でも役立つ場面はあるだろうから…。勧誘するとき実力を見せた方が手っ取り早いだろうし。それにこの一発描きは、住和トア先生が得意としてたことだから」



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