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2001年◆1.推しを救い損ねたわたしがすべきことは


―――◆序章◆第1幕―――




 あなたは推しのために自分の命をかけられる?


 それはサラサが敬愛するゲームディレクター、新部和葉の言葉であった。




 1994年生まれの新部和葉が、今年2001年4月の今日に7歳の誕生日を迎え。


 学校から帰宅して早々に、祖父から送られてきていたプレゼントをあけて。


 入学祝いにチョイスされたであろう地球儀を、これすっごい回る! ウキャキャキャキャと猿のごとく高速回転させていたときのことだ。


 彼女がふと南大西洋の辺りで止めたそこには、小さな島国に フォーチュンハート王国という名が記されていたのである。


 和葉の黒目がカッと見開かれた。



 新部和葉:「わたしのっ…国!!」



 そう、そこは第18代バティック国王陛下の娘、サラサ・フォーチュンハートの母国となる島国である。


 だがそれは この世界線にとって 10年後の話であり、この少女――和葉にとっては20年以上も前の話だったりする。


 弾かれるようにして自室のカレンダーを見やった和葉は愕然とした。



 新部和葉:(7年…! 転生してから無自覚に7年も過ごしていたんですか、わたしは?)



 にわかに冷や汗をかき、心臓が早鐘を鳴らし出す。



 新部和葉:「乙女ゲーを…! プリンス・オブ・マーメイドを作り始めないと!」



 学習机から立ち上がり、まずは何から始めたら良いのか頭が回らず。


 和葉は自分が酷く混乱していることに気がついた。



 新部和葉:「待って、待ってください? よーく落ち着いて…? よーく思い出すんですよ…?」



 そう、思い出せるはずなのだ。


 なぜなら、最期に死んだときの身体は ホムンクルスのボディ であり。


 そのボディには 転生用魔法 と、前世の記憶を完全に引き継ぐための魔法 がセットされていたからである。



 そうして和葉の脳内には、ウインドウが開いたかのようなイメージがひらめき。


 およそ20年分ものフォルダが展開されたのである。



 新部和葉:「思い…、出せます!」



 常に頭の中に憶えているのではなく、そのつど特定のフォルダを開いて中身のファイルに目を通すような、思い出すためのワンアクションは必要だが。


 複雑なことを考えずともファイルに自動で検索がかかり。


 ニイベ・カズハが何才ごろに前世の記憶を取り戻すのか、そのことに言及している記憶や、目を通した 前任の手記 にも、その記載は無かったことがわかった。



 新部和葉:「うう…!? プリマメの攻略ガイドブックみたいな、転生攻略ガイドブックが欲しいですよ~! カズハさ~~ん!」



 そう嘆いてから、和葉はハッとした。


 自分はいつまでサラサ・フォーチュンハートのままでいるつもりなのかと。


 自分にとってのカズハはもう 推しのヒーローたち と共に、とっくに戦死してしまったのだ。


 バトンはとうに託されている。


 後はもう、自分がカズハをやるしかないのだ。



 新部和葉:「カズハさん…、ナノくん…!」



 和葉は滲んだ涙を指の背でぬぐってから、決意を胸に、拳を固く握った。



 新部和葉:「わたしはやります…、やってみせます! この世界線でのニイベ・カズハを! その役割を!」



 転生攻略ガイドブックだって、無ければ自分で作ればいいのだ。


 そのための記憶の資料は全て揃っている。


 和葉はまだ年齢的に普通のノートを持ち合わせていなかったので、学習机に自由帳を広げると、まずは何をすべきか箇条書きをし始め――。


 再び ハッ! とカレンダーを見やった。



 新部和葉:「今月末の4月29日…、確か…、ウマ子息のアニメで活躍したテイエムオペラオーくんが3連覇したっていうレースの…、あ!!」



 和葉が声を上げたのも無理はない。


 なぜなら、第123回 春の天皇賞で、イトコの 渡瀬チサ が大勝ちしたと、前任のカズハが言っていたからだ。


 2030年の春。


 サラサが19歳のとき。


 皆で日本に旅行へ行って、昔こんなことがあったんだよねと、彼女は当時のことを沢山語って聞かせてくれたのだ。



 つまり、そのときのことを思い出せば、これから何をどうすればいいのかがわかる。



 和葉はえぐえぐと涙をこぼした。


 嬉しさと悲しさがない交ぜとなった気持ちで胸がいっぱいとなったからだ。



 新部和葉:「全部全部…っ、このときのためだったんですね…、カズハさん…」



 今までに、少なくとも37人ものサラサが推しのヒーローたちを救いそこね、そのつど次代のニイベ・カズハを担ってきたと聞く。


 ゆえにカズハは、自分が育てたサラサでも駄目だった場合に備え、それとなく、沢山の思い出を作っておいてくれたのだ。



 サラサが、次代のニイベ・カズハを担うときに、困らぬようにと。



 和葉は鼻をすすった。



 新部和葉:「泣いている場合ではありませんね…。今度こそわたしが、――私たちが! ナノくん達を救ってみせますから! だから……、天国で見守っていてくださいね、カズハさん…」



 今度は拳の背でゴシゴシと涙をぬぐうと。


 和葉は自室から飛び出し、母親のもとへ渡瀬チサの連絡先を聞きに向かったのだった。



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