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7.復讐

「はい、こちら警察です」

「やっと繋がった!おい!今すぐ警官でも軍隊でも大勢こちらによこしてくれ!」


「もしもし?事件か?それとも事故?」

「町の上にデカいドラゴンが飛んでんだよ!!何人か飲まれたとかでこっちは大騒ぎしてるんだ。いいか?場所を言うぞ…… クソっ!見付かった!!おいやめろ!!うわ!  ツーツーツー……」

 昨日の話を直接本人から聞きたいという破滅願望めいた欲望を胸にしまい翌日に至る。そう言えば拾ったアクセサリーの事などすっかり忘れてしまっていた。早く持ち主に届けないといけないが、最近は訓練も忙しくあまり顔を見掛けてなかったが…… テレパシーでも届いたのか向こうからやって来た。

「おはよう、マーティン。少し時間いい?」

「ああ、おはよう。ちょっと君に用事が」


 僕はポケットの中に大事にしまっていた拾い物を彼女に差し出した。

「あっ…… ありがとう。探してたんだこれ。……それでね、話したい事と言うのは私の出身についてなんだけど……」


「ビーッ!ビーッ!ビーッ!」

「わっ!?何??」

 彼女の話は基地内に響く警報に遮られた。

「緊急!本部より出撃命令!総員出撃準備急げ!」


「あっ、その話はまた今度!」

 僕は彼女を置いて格納庫へ走り出した。到着するとポールがそこに立っており、周りの隊員に何か説明している。


「よく聞け、ここからの作戦は英国軍の管轄となる。無線はオープンにしておけ、以上だ」


 英国の管轄?言葉の意味は理解出来ないが少なくとも作戦権は隊長にある筈だし僕はその同意を隊長に求めた。

「奴等に任せていいんですか?隊長」

「いいからさっさと搭乗しろ。街がドラゴンパニックになっている」

 答えを得られなかった僕は渋々と自分の機体に乗り込む、既にエンジンは起動しておりプロペラが景気よく回転している。

 すっかり慣れた離陸で渡り鳥の様に隊長機に付いていく、カーリーはまだ地上にいるようだ。


「空軍機聞こえるか?今警察無線をそっちに繋いだ。俺は所轄のカタネンだ」

「こちら第8飛行隊のハンスネン。状況を報告しろ」


「部下からの報告で小型個体が約8体、街を分散しながら飛んでいる。既に何人か被害が出てるが住民には外出禁止令を出してこれ以上の損害が出ないようにしている。それともう一つ馬鹿でかい赤いドラゴンが中央の役所に鎮座してやがる。あいつには銃がこれっぽっちも効かないんだ。そっちで何とかしてくれ、以上」


 赤いドラゴンとは当に僕を襲った個体だ。復讐に燃える心が、スロットルを握る手を押し上げようとする。

「そんな豆鉄砲で奴を落とす気か?マーティン。ヨーゼフは東、お前は西から進入し街外周に居る標的から狙っていけ」


「……了解」

 僕は左に操縦桿を切り編隊は3方向に散開した、まもなく到着するエリアを取り囲む布陣を取る。まず僕が民家の屋根に止まって休んでる目標を視認。

「あの止まってる奴撃ってもいいですか?」

「民間の被害を最小限だ。家に弾が当たる、飛ぶのを待て」


 別の目標を見付ける。川沿いを悠々と飛行してる奴だ。

「マーティン。交戦開始」

 セオリー道理斜め後方から降下し接近する。500mほど降下した時点で速度は600km/h付近まで加速していた。

 500m…… 昨日の話を思い出し、僕はその距離を意識してトリガーに掛けた指に力を込めた。


 機関銃が実に12門という以前の搭乗機から6倍もの増加した火力は、同様の標的を相手にした場合に当に一瞬とも言える時間で絶命足らしめる事が実現出来る。

「一匹落とした!」

「俺は2匹だぞマーティン、難しいならそっちに応援行こうか?」

「持ち場で仕事を続けてろヨーゼフ。俺は今4匹目だ」

 僕がじっくり狙いを定めてる間、隊長はすれ違う一瞬まるで針を突き刺すように目標を射撃していた。僕は実戦経験の差をまざまざと見せ付けられていた。


 「常に高度優位の状況で接敵出来ると思うな。自機周囲の目標位置を常時確認し、敵の機動から数秒先の位置を割り出す。必中出来るポイントを感覚的に探し出せ」

 隊長のアドバイスは口で言うのは容易いが行うに難しと言うやつである。

 辺りを見渡すとさっき屋根に止まっていて見逃した奴が飛行を始めた、今度は低空飛行で目立たぬように接近する。


「奴は最後の雑魚だ!」

 警察からの無線が飛ぶ。追っている内に建物が立ち並ぶ町内の中心地に来ていた。周りに弾丸をバラ撒かないように集中する。この時不意に一瞬自分の事を客観的に考えた、そしてこの状況に何か嫌な予感……デジャヴと言う奴が頭によぎる。


 その瞬間!目の前の目標がバカデカい倉庫の横を通り過ぎたその時……

 建物の影から巨大な物体が飛び出してきた。


「クソっ!まただ!」

 その巨体が目の前に標的に喰らいつく。僕は操縦桿を引き回避した。

「隊長、マーティンです。小型目標は全滅。正確に言うとこの前逃した大型の個体に食われて死にました、地上で逃げ惑う作業員の姿が見えます」


 少し時間を置いてから隊長の返信が来る。

「カーリーが来るまで攻撃方法は無い。奴の注意を出来きる限り逸らせ」

 ここで隊長機と合流。2機で銃撃を加えると奴は大きな翼を開き飛翔した。その巻き起こす風によりトラックが吹き飛ばされるのが見えた。──ここからの行動を考える。ウルスラなら何か知ってるかもしれない。藁にもすがる思いで呼び出して見た。


「マーティンから管制塔!返事してくれ」

「はいこちら管制塔。滑走路は常にオールクリアだ」

「ウルスラを出してくれないか。あの爬虫類顧問の女だ」

「分かった。放送を掛けてみる」


 ウルスラとは思いのほか直ぐに繋がった。

「ウルスラです、今内線を繋いで貰いました」

「今例の赤いドラゴンと対峙してる。弱点とか知らないか」


 するとウルスラはやぶさかに話始めた。

「今ポールから情報開示の許可が降りたわ。あの個体は自然の物じゃないの、ある目的の為に外骨格を後付された物…… 自然の物に改造を施したから何処かに欠陥がある筈……」


隊長が疑問を投げかける。 

「アレを作ったのはナチスじゃ無いのか。イギリスが持ち込んだというのか」

 答えたのはポールだった。

「アレを研究したのは勿論ナチスに違いない。我々はそれを解析する責務があるのだよ」

「…… 秘密主義者め」


 僕は記憶を読み漁る。僕が最初に会敵した時の事。

奴が水面に降りてきて大きく口を開いた時、一瞬首元に羽毛の様な物が見えた…… 鍵穴はそれだ。 

 

「隊長奴が口を開いた時の首元が弱点です。この目で見ました」

「悪いが弾切れだ、俺が囮になるからマーティン、お前が狙え」


 隊長が囮……正面から交差して射撃する危険な賭けになる。僕はまず一旦距離を取り隊長の合図を待つ。


「マーティン、次の教会を通過したら3時に右旋回しろ。その直線上に何とか誘き寄せてやる」

「了解」


 隊長はフラップを降ろし危険な低速飛行を開始した。さっきに受け続けた銃撃でイライラしてる巨龍は何とか喰らい付こうと首を大きくしならせている。

 徐々に互いの進行方向が交差し始める、僕は機首をその龍の見越し地点、つまり隊長機に合わせた。


「カウントしたら右にブレイクするからその瞬間を狙え。」

 隊長は僕との間合いを測りつつ、奴が口を開くギリギリの距離を調整した。


「よし、3……2……1…… ブレイク!!」

 隊長は操縦桿とラダーを同時に倒し急旋回を行う、速度を失った機体と距離が縮まり思わず口を開いたタイミングを僕は見逃さない。 


「こちらから確認出来ない、どうだマーティン!」

「あー、こちら弾着観測中のヨーゼフ。目標は口から泡を吹いて墜落。今地面でのたうち回っている」

 僕はありったけの弾丸を奴に掃射した。顔に当たった物は火花を散らして跳弾したが狙いの首元付近に弾着すると確かに出血のような物を確認した。


 「カタネンだ!奴はくたばったのか?」

「こちら1番機。見た所まだ奴は生きてやがる」


 僕等に打てる手が尽くされたと思った時に、新たに手を差し伸べる声が耳に入ってきた。

「カーリーだ、今現場に到着した。目標を指示してくれ」

 随分遅れて到着したB-25が獲物を探している。

「カーリー聞け。デカくて硬いのが地上で蠢いている。そいつでトドメを刺してくれ」


 隊長はカーリー機の前に付き誘導する。

「今から攻撃するから地上の連中は退避しておけよ」

 B-25は胴体下部の扉を開いた。

「食らえ!500ポンドの鉄球だ」


 投下したのは爆弾だった。重力に引っ張られ加速した鉄の塊は龍の腹を抉り、そして起爆した。


「……なんて奴だ。まだ原型が残ってやがる」

地面が抉れ大きな穴が間その中に、その巨体は横たわった。動く様子は見えず、付近に待機していた警官が接近し生死を確認する。


「全身血塗れだ。生きている様子は無い……ん?口から何か出て来た。動物だ。さっき飲み込んだ餌か?…… おい生きてるぞ」


 誰かのペットだろうか。ともかく命が助かるに越した事は無い。


「その生命体に手を出すな!」

 怒鳴るような声はポールから発せられた物だった。

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