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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第三部——召喚塔林

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第81話 父子で同じことばかりしてるのは、なんで?


戦いが終わり、

防空塔の周辺は見る影もなく荒れていた。

マスクルスが一行の方へ歩み寄り、

顔に満足げな笑みを浮かべる。


「悪くない。

連携も上出来だ。」


そう言いながらも、

すぐに表情を引き締めた。


「だが、

今は祝っている場合じゃない。」


マスクルスの声が低くなる。


「お前たちに会いたがっている大物がいる。」


「どんな重要人物なんですか?」


「行けばわかるさ。

さあ行くぞ、

公会の方で待っている。」


マスクルスが指示を出すと、

部下たちが軍用車を回してくる。


一行はマスクルスの先導で

公会へと入っていった。


公会の中は

人いきれでむんむんしていた。


新しく貼り出された高難度依頼をめぐって、

掲示板の前で言い争っている冒険者たち。


さっきの防空戦について、

ああでもないこうでもないと喋り合っている者たち。


彼らが入口から入ってくるのを見ると、

何人もが尊敬のまなざしを向けてきた。


デレオが足を踏み入れると、

すぐ近くから声が飛んでくる。


「今の空中戦、

全部見てたぞ! 

マジでやばかった!」


だが、

チェラーレとシミリスが敷居をまたいだ瞬間、

大広間はまるで一斉に消音ボタンを押されたかのように

静まり返った。


何人かのベテラン冒険者たちは、

思わず武器を握りしめ、

鋭い視線が空中を走り交う。


カウンターの受付嬢たちの中には

悲鳴を上げて奥の事務室へ駆け込む者もいれば、

あまりの恐怖に手に持っていた磁器のカップを落としてしまう

男の職員までいた。


アビスウズは隣の仲間たちを見回し、

ため息まじりに小声でつぶやく。


「まったく……

あんたたち二人、

どうやってここまで名前を轟かせたのよ?」


デレオは肩をすくめ、

半分冗談めかして返す。


「片方は、

ちょっかいかけてきたやつの手のひらを

しょっちゅう掲示板に打ちつけてるし、

もう片方は、

その偏執狂な妹だぞ?


あの二人を見て飛び跳ねない人間がいたら、

逆に会ってみたいよ。」


チェラーレは気にした様子もなく目をひっくり返し、

腰の匕首を弄び続ける。


シミリスは少し気まずそうに、

公会の中で知り合いの顔を探し、

一人ひとり丁寧に挨拶して回り、

ときにはさりげなく手伝いまでしている。


デレオは大きく息を吸い込み、

落ち着いてカウンターへと歩み寄る。


「ガデニアさん。」


この冒険者公会で、

こうした厄介者ぞろいの顔ぶれを前にしても

平然と微笑みを崩さないのは、

ガデニアぐらいのものだ。


灯りに照らされた彼女の長い髪がきらめき、

手元では分厚い依頼書類を

手際よく仕分けている。


「今回はずいぶん派手にやってくれたわね。」


ガデニアは眉を上げ、

どこかからかうような声で言った。


デレオは口元をわずかに吊り上げ、

まだ周囲に挨拶して回っているシミリスを指さす。


「派手じゃないと安心してもらえないでしょ?

少なくとも、

召喚塔林の騒ぎは片付けてきたよ。

あれ関係の依頼って、

ここに来てない?」


ガデニアは手元の書類をめくりながら、

素早く目を通していく。


「天候異常のことね?

まさか本当に、

あの厄介な場所の問題を

解決できる人間がいるとは思わなかったわ。」


シミリスが、

おずおずと口を開こうとする。


「あれは、

じつは──」


デレオはあわてて

言葉をかぶせた。


「あそこは召喚魔力の循環ループが崩れててさ。

シミリスが魔力場を調整して、

再校正してくれたんだよ。」


シミリスはきょとんとした顔で

デレオを見る。

彼は彼女に向かって

片目をつぶってみせた。


ガデニアはひとつ咳払いし、

依頼掲示板のいちばん上を指さす。


「関連依頼は全部で四十六件。

二年半以上、

ずっと積み上がっていたのよ。」


デレオは両手を上げて

驚いてみせる。


「それなら、

かなりの大儲けになるんじゃない?」


ガデニアは肩をすくめ、

少し残念そうな声で答える。


「残念だけど、

そのうち五件は依頼人がすでに死亡。

十二件は債務破産で報酬の支払いが不可能。

残りは──そうね、

運しだい。


財産凍結の申請か、

債権回収会社を紹介してあげましょうか?」


「やめておこう。

支払えない案件はそのまま破棄でいいよ。」


デレオは少し考え込んだ。

依頼人たちは、

ある意味では被害者だ。


大半は自業自得な不動産投機屋とはいえ、

本当の元凶はシミリスの側にある。

真相を知っているのはごく少数でも、

立場としてはあまり強く出られない。


「それより、

クラスアップのことで聞きたいんだ。」


ガデニアの目がきらりと光る。

指先はちょうど書類の一ページ目を押さえていた。


「どうしたの?

もうそんなに早く

クラスアップの段階に来たの?」


デレオはうなずく。


「僕だけじゃない。

後ろの連中も、

全員クラスアップできる。


このところ、

ずっと彼女たちに助けられてさ。

妙に厄介な敵ばかり引き当ててるうちに、

気がついたら

クラスアップのラインを超えてた。」


ガデニアは彼らのデータをすばやくチェックし、

口元に笑みを浮かべる。


「どれどれ……

クラスアップ希望者は六名?」


「五人です。」


アビスウズが少し恥ずかしそうに口を挟む。

声には、

わずかに悔しさも滲んでいた。


ガデニアは机を軽く指で叩き、

顔を上げた。


「わかったわ。

これだけ人数がいるなら、

儀式会場は

ちょっと広めのところを押さえないとね……」


デレオが細かい段取りを話していると、

さっき奥へ逃げ込んだ受付職員の一人が、

急ぎ扱いの書類を手に

そっと戻ってきた。


彼はガデニアとカウンター脇でひそひそと話し合い、

ときおり

意味ありげな視線を一行の方へ送る。


やがてガデニアは顔を戻し、

真面目な口調になった。


「うーん……

クラスアップの件はこちらで段取りしておくわ。

その前に、

少しだけ時間をもらえるかしら?」


デレオは首を傾げながらも

頷く。


「構わないよ。

何かあったの?」


彼女は意味深な笑みを浮かべた。


「あなたたちに会いたがっている“大物”が

何人かいてね。」


その背後で、

マスクルスがにやりと笑いながら言う。


「ほらな、

言ったとおりだろ。

とうとう目をつけられたぞ。」


こうしてガデニアに案内され、

一行は公会の長い廊下を通り抜け、

会長室へと向かう。


デレオがドアノブに手をかけ、

扉を開けようとしたとき──

懐かしい殺気の波が、

真正面から叩きつけるように押し寄せてきた。


「── 聖なる裁き!」


低く力強い中年の声が響き渡り、

金色の光が轟音と共に弾けた。


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