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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第三部——召喚塔林

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第78話 ペガサスとガーゴイル

 

「メドゥーサの血より生まれし、

優雅なるペガサス。」


シミリスが静かに呼びかけると、

数頭のペガサスが現れた。

 

クラスアップ儀式の申請をするため、

一行はシミリスが召喚したペガサスの背にまたがり、

首都の冒険者ギルドへ向けてゆるやかに飛び立つ。

 

飛び始めのうちは、

ペガサスたちは郊外の畑や、低い屋根、

煙突の上を軽やかにかすめていく。

 

ときおり首をかしげて後ろを振り返り、

これから向かう場所に興味津々といった瞳を向けていた。

 

やがて高度は百メートルほどに達し、

デレオは朝の冷たい風を頬で味わっていた。


「いい天気だね。」

カシヤがご機嫌な声でつぶやく。

 

そのとき、

雲のあいだでペガサスたちの蹄音が微かに震えた。

 

彼らは何かに怯えているかのように、

呼吸を浅く早くし、

落ち着かない様子で耳をそばだてる。

 

風向きが変わるたび、

ペガサスたちは警戒するように周囲を見回した。

 

見えないどこかに潜む「何か」を探るような仕草に、

デレオも思わず手綱を握る手に力をこめる。

空気の中に、

じわりと緊張の気配が満ちていくのを感じた。

 

「このきれいな子たち、

 何かに怯えてるみたいだね。」


アペスがわずかな異変に気づき、

眉をひそめる。

 

その言葉が終わるより早く、

雲の層を突き破って黒い影が一気に降下してきた。

 

「危ない!」

先頭を飛ぶシミリスが叫び、

ペガサスが驚いて大きく進路をそらす。

 

デレオは危うく鞍から振り落とされるところだった――

降ってきたのは一体のガーゴイル。

鋭い鉤爪が、

真っ直ぐに彼の頭を狙っていた。

 

「なんでこんなところにガーゴイルが?!」

デレオの胸に戦慄が走る。

 

同時に、

十数体のガーゴイルが雲を突き破って飛び出し、

六人へ一斉に襲いかかってきた。

 

「きゃあっ!!」

アビスウズがペガサスから振り落とされる。

 

「アビねえ!」

デレオは助けに飛び出そうとするが、

別の二体のガーゴイルに進路を塞がれた。

 

一体は「氷と炎の賢者ケルヴィン」に祈りを捧げながら、火球を吐き出す。


もう一体は「大錬金術師メンデレーフ」を呼びながら、水の奔流を噴き出した。

 

デレオは仰け反って火球をかろうじてかわす。

だが、

水流は左肩を真正面から叩きつけた。

 

蹴り飛ばされたような衝撃が肩を貫き、

彼の身体は鞍からずるりと滑り落ちる。


それでもデレオは諦めず、

必死に手綱にしがみつく。

 

そのとき、

鞍の上のアレカが素早くロープを投げ、

デレオの腰に引っかけた。

 

同時に、

マクスウェルへと小声で祈りを捧げる。

 

「セントエルモの火!」

 

名は「火」だが、その正体は雷だ。


二体のガーゴイルの身体を、

青紫の電光が一瞬にして走り抜ける。

 

ガーゴイルたちは驚愕して体勢を崩し、

上下にばたつきながら、

デレオを攻撃することをすっかり忘れてしまう。

 

「早く上がってきて! 

 この術は脅かすだけで、

 実際にはダメージにならないからね!」


アレカはロープを鞍に結わえつけるが、

自分にデレオを引き上げる力はない。

 

混乱のさなか、

別の二体のガーゴイルが一直線に

カシヤへ向かって突っ込んでくる。

 

彼女はウクレレを握りしめているが、

ペガサスが暴れているせいで攻撃に転じる余裕がない。

 

一体のガーゴイルの爪が、

ペガサスの脚をかすめた。


鮮血がにじみ、

ペガサスは悲鳴のような嘶きを上げて暴れだす。

 

ガーゴイルはすっと横へ身を翻し、

蹄の一撃をひらりとかわした。

 

空中で揺さぶられ、

カシヤの身体は今にも放り出されそうになる。

彼女は必死に鞍をつかみしめた。

 

ガーゴイルの翼が風を裂き、

鋭い唸りが耳を刺す。


そのたびに、

カシヤの背筋を冷たい汗が流れた。

 

アペスはその様子を見て、

自分の周囲の危険を顧みる余裕もなく、

ペガサスを操って従姉のもとへ一直線に飛ぶ。

 

途中、

ガーゴイルが襲いかかってくるが、

彼女はただひたすら避けることだけに集中した。

 

アペスの視線はカシヤに釘付けだ。

少しでも早くそばに行きたいのに、

群がるガーゴイルたちが壁のように立ちはだかる。

 

そのとき――

が腰の匕首を抜き放った。

 

彼女は一体、

こちらへ迫ってくるガーゴイルをロックオンする。


ペガサスの背で身を低くしたかと思うと、

そのまましなやかに跳び上がった。

 

銀色に光る短剣が、

弧を描いて閃く。


これまでと同じように、

急所を一突きにするつもりだった。

 

だが、

刃がガーゴイルの肌に当たった瞬間――

響いたのは、

金属どうしがぶつかる鈍い音だけだった。

 

ガーゴイルの肌は岩のように固く、

匕首は白い筋を残しただけで、

一片の肉すら裂くことができない。

 

「なによ、これ……硬すぎでしょ……」

 

チェラーレは眉をひそめて悪態をつき、

すぐに手を引っ込めると身をひねった。


ガーゴイルの反撃の爪がかすめ、

彼女の肩の布がざっくりと裂ける。

 

彼女は悟る。

――この相手に、

普通の匕首はまるで通用しない。


違うやり方を考えなければならないと。

 

混乱のただ中で、

シミリスがふと振り返り、

小さな声で呼びかける。

 

「パラケルススの招きに応え、

道を切り開いて——シルフ!」

 

指先が空をなぞると同時に、

潜んでいた風の精霊が姿を現す。

 

次の瞬間、

ガーゴイルの群れの中に突風が巻き起こった。


暴風はその翼と鉤爪を容赦なくさらい、

隊列をずたずたに乱していく。

 

こうして動揺していた状況は回復し。

一行はこの新たな追い風に乗じ、

それぞれが体勢を立て直していくのだった。

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