表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第三部——召喚塔林

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/93

第77話 六人の同居生活

 

「大精霊の御印ごいん……ってことは、

君は真名師になるのか?」

デレオは少し驚いた。

 

シミリスはうなずき、やわらかく笑う。

「うん。これは、あの頃の私が踏まなかった、もう一つの道」

 

「もう一つの道……」

デレオは、かつてあれほど執着していた少女をまっすぐ見つめた。

 

今の彼女は、

昔よりもどこか透き通っている。


デレオが必死で心に刻んだ傷が、

逆に彼女を育ててしまったみたいだった。

 

それでも、この少年の罪悪感は止まらない。

だからこそ、目の前の“彼女たち”を拒めなくなる。

 

やっと取り戻した仲間。

やっと取り戻した居場所。

 

自分の自由へのわがままで、

もう二度と、勝手に壊したくない。

 

朝食を終え、少し雑談したあと、

彼らはこの歴史ある屋敷を徹底的に大掃除することにした。

――まずは最上階の屋上から。

 

階段を上るたび、床板がぎぃ、と泣く。

 

屋上は埃と落ち葉で埋まり、

数羽のスズメが手すりの上をちょこちょこ歩いていた。

 

アビスウズは小悪魔のしもべを呼び出して雑物を片付け、

シミリスは風精霊と水精霊を招いて床と家具を一気に清めていく。

 

カシアとチェラーレは新しい家具の配置を相談しながら組み立て、


アペスとアレカは一階でゴミをまとめては運び――ときどき笑い声と、

「多すぎ! 回収しきれない!」

というアレカの愚痴が階上まで届いた。

 

最上階が片付くと、みんな三階の長廊に集まった。

 

部屋割りの段になると、

譲り合いが始まり、誰も主寝室を取りたがらない。

 

アビスウズは腕を組み、興味ないふりで言った。

「じゃあ、ディディがここで唯一の男なんだし、主寝室はあいつでいいでしょ」

 

言い終える前に、

チェラーレがにこにこと継ぐ。


「じゃあ、主寝室の右の部屋はシミリスね!

今度はちゃんと見張ってて。

あの子、またこっそり逃げるから」

 

シミリスは頬を赤くしてうなずいた。

覚悟を決めた顔。

 

アペスが勢いよく手を挙げる。

「じゃあ主寝室の左はカシア! 

負けたらダメだよ!」


カシアは耳まで真っ赤にして、

俯いたまま部屋に駆け込んだ。

 

そのあと、

アペスとチェラーレが数秒にらみ合い、

どちらも負ける気がないまま、

左右の次の部屋の扉をそれぞれ開け放った。

 

アビスウズはぶつぶつ文句を言うふりで、

主寝室の真正面へ向かう。


「なんで私が一番遠いのよ……」

 

なのに口元は、

どうしても得意げにゆるんでいた。


遠いけど、

あそこは屋敷で二番目に広い部屋だ。

 

部屋割りが決まり、掃除もひと段落すると、

彼らは二階の“機能部屋”を整えはじめた。

 

廊下の突き当たりの作業室、

中央の書斎と客間、そして一番奥の育児室。

 

育児室に足を踏み入れた瞬間、

全員が思わず立ち止まり、

用途をめぐって好き勝手に言い出した。

 

「実験室にするのもいいかも」

シミリスが小声で提案する。

 

「嫌なやつを拷問する部屋でもいいじゃん?」

チェラーレが冗談めかしてウィンクした。

 

「禅室も良さそう」

アペスは床にあぐらをかく自分を想像する。

 

「楽器の練習室にするのは?」

カシアが少しだけ期待を込めて言った。

 

デレオはみんなの顔を見回す。

「うん。今は意見がまとまらないな。

とりあえず綺麗にして、用途は後でゆっくり決めよう」

 

アビスウズは服を畳みながら、ぼそっと言う。

「ふふ。もしかしたら、そのうち――

ここで赤ちゃんが生まれたりしてね」

 

軽い冗談のつもりだったはずなのに、

言った本人を含め、部屋中が真っ赤になった。

 

床を拭くふりでうつむく者。

窓を開けに背を向ける者。

唇を噛んで、こっそり笑う者。

 

昼食の空気は、朝よりずっと賑やかだった。

食卓には笑い声と会話が途切れなく流れる。

 

「この件が片付いたら、

私は遺跡に戻って、調査を続けたい」

カシアはパスタを取り分けながら言った。

「……あの宇宙船、まだ終わってない」

 

アペスはうなずき、

指先で卓上のティーカップを撫でる。


「それに、九宮盤もね。

“アバドン”って悪魔が、どうしてあれを狙ってるの?」

 

そのときデレオは、

遠くから視線で射抜かれたような気配を感じて、はっと顔を上げた。

そして周囲を見回す。

 

シミリスが彼の手の甲をそっと撫でる。

「あなたも感じた? あの悪意のある魔力の振動」

彼女はある方向を指した。

 

アビスウズは腕を抱き、寒気をこらえるように肩をすくめた。

 

「魔王が動き出したわ。

悪魔を感知する力で分かる。

原野にいるはずのないものが、

あの方向から湧いてる……。


不死者、小悪魔、亜龍、ガーゴイル……。

魔法は衰退してるのに、同時に制御が外れかけてる」

 

全員、心当たりがあった。

それは――太古の宇宙船遺跡の方角だ。

 

アレカが、妙に神秘めいた声で言う。

「本気で挑むならさ。アバドンが持ってる“角笛”を、俺に取ってきて」

 

空気が一瞬で凍った。


チェラーレが目を見開く。

「それ……危険すぎない?」

 

「危険だから面白いんだろ」

アレカは歯を見せて笑った。

 

「なら、まずはギルドでクラスアップ手続きだね。

戦力を底上げしないと」

アペスが真面目に言う。

 

シミリスが続ける。

「明日の朝、ペガサスで行こう。

危険をいくつも避けられる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ