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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第三部——召喚塔林

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第73話 耐え続けた果てに——崩壊寸前

 

召喚魔法の狂潮は、

ようやく静まりを見せた……。


塔林の頂には、焼け焦げた匂いと、

どこか新しい息吹がまだかすかに漂っている。


けれどシミリスは、

期待したようには力を抜くことができなかった。

 

魔力の支えを一瞬で失ったそのとき、

彼女の身体は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちた。

 

「体が冷たすぎる!」

デレオが思わず叫ぶ。

シミリスの肌は、

溶けかけの雪のように冷えきっていた。

 

チェラーレが脈を確かめる。


「ほとんど脈が取れないわ。

すぐに休ませる場所を探さないと!」

 

シミリスの唇はすでに紫色に染まり、

呼吸も浅く、荒い。

 

アビスウズはふらつく身体を無理やり起こしながら言った。


「この三年間、あの子は飲まず食わず、

眠りもせずに塔の上で魔力を放出し続けてきた。


 彼女の命を支えていたのは、

各塔主の途方もない力。


 その支えを、

いきなり全部失ったせいで……」

 

「どうなるんだ?」

デレオが不安そうに問いつめる。

 

「魔力欠乏で死ぬ。」

アビスウズの声は震えていた。

 

「じゃあ、俺たちはどうすればいい?」

 

「どうにかして、

 もう一度あの子の魔力の循環をつなぎ直す。


 ほんの少しでもいい、

 彼女の中に魔力が戻れば、

 魔力欠乏の状態からは抜け出せる。」

 

アビスウズはシミリスの手を取り、

自分自身も枯渇寸前の魔力を、

彼女へと分け与え始める。

 

デレオはアレカの箱をひっくり返し、

数日前、

古代宇宙船の遺跡で浮遊晶霊を

倒したときに手に入れたコアを探り当てた。

 

「これを使おう。

二人分の魔力なら、少しは戻せるはずだ。」

そう言って、コアをアビスウズに手渡す。

 

「……ああ。これで、

あたしたち二人とも命拾いってわけね。」

 

アビスウズはコアを二人のそばにふわりと浮かせ、

そこから次々と魔力を吸い上げていく。

 

チェラーレは自分の傷口を押さえながら、

しかめっ面で言った。

「急いで休める場所を探さないと。

みんな限界ギリギリよ。」

 

やがてコアの魔力は完全に吸い尽くされ、

細かな氷粒となって風に乗り、

空へと散っていった。

 

シミリスの容態は、

さっきよりはずっと安定して見える。

 

「イン⋯イントロドゥクから

買った家までの道、覚えてる?」

アペスが息を切らせながら尋ねる。

 

アレカは自分の箱をガサゴソと漁り、

一枚の古びた地図を引っぱり出した。


そして、赤い丸で囲われた小高い丘を指さす。

 

「ここ。

ここがボクたちの新しい家だニャ。」

 

カシヤが地図を受け取り、

ルートを確かめる。


彼女と、まだかろうじて形を保っている三、四体の音楽スピリッツたちは、


小さな声で静かな旋律を奏でながら、

仲間たちの帰路を支える。

 

遠くの町の灯りがちらちらと瞬き、

これから始まる新しい生活への道を照らしているかのようだった。

 

一行はボロボロの身体を引きずりながら、

塔を降り、林の小径を進む。

 

デレオのジープは道の脇で横転していた。

 

「こりゃもう走らないな……」

彼は首を振る。

 

幸い、新しい家はここからそう遠くはない。歩いていける距離だ。

 

そして、ついに──

 

召喚塔林の縁、

海を見下ろせる小さな丘の上に、

 

静かにそびえ立つ四階建ての一戸建ての邸宅が姿を現す。


――それが、彼らの新しい家だった。

 

外壁は長い年月を経た蔦に覆われ、

レンガ色の屋根瓦は夜の中で、

まだほのかに昼のぬくもりを残している。

 

庭の中央には、

百年は超えていそうな大樹が、

執行者のようにどっしりと根を張っていた。

 

玄関の扉を開けると、

古い真鍮の照明がぶら下がっている。


スイッチを入れると、

柔らかな光が磨き石の床をぼんやりと照らした。

 

広々としたリビングには、

濃い色の革張りソファが二つ、

暖炉を囲むように置かれている。

 

魔力を使い果たしたアビスウズは、

部屋に入るなりソファへ倒れ込み、

まぶた一つ動かさず、

深い眠りへと落ちていった。

 

アペスは暖炉の前へ歩み寄り、

長いこと放置されていた焚きつけ用の棒を灰の中から拾い上げ、

しゃがみこんで火を起こし始める。

 

カシヤとアレカはリビング中を動き回り、

軽く片付けをしながら、

簡単な部屋の整えを始めた。

 

デレオとチェラーレは、シミリスの身体をそっと支えながら階段を上がっていく。

せめて、ベッドの上で眠らせてやるために。

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