表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第三部——召喚塔林

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/90

第71話 登っていこう!この召喚の嵐に、決着をつける。

「カシヤには指一本触れさせない!」


アビスウズは、

枯れかけた魔力を無理やりかき集め、

再び霊体堕落を発動させる。


指先から噴き出した黒い気流が、

戦場の空気を一気に冷え込ませた。


同時に彼女は魔界貴族たちを次々と召喚する。


天馬に騎乗したシエル、

分厚い書をめくるダンタリオン、

巨鳥と化したダンカラビ、

大蛇を押さえつけるアンドマリウス……。


彼らが次々にシミリスの召喚獣に立ちはだかり、

その行く手を阻もうとする。


アビスウズの額を冷汗がつたう。

魔力の使い過ぎで眼のふちが赤く染まり、

声も震えはじめていた。


デレオは、

それ以上傍観しているわけにはいかないと悟る。


霊光が渦を巻く戦場で、

悪魔と召喚獣がぶつかり合い、

牙と爪と魔力が、

波のようなエネルギーの奔流の中でぶつかり、

砕け、吠え立てる。


デレオはその只中でシミリスを見据えた。


彼女が巻き起こす旋風と魔法の奔流の中を、

一歩進むたびに、

まるで刃の上を歩いているような緊張が

全身を締めつける。


アレカ──

いつもは主人の傷口を面白がってえぐる忠実なミミックだが、

今だけは外箱を広げ、

その身を硬い金属光沢で輝かせていた。


これだけ敵を倒したのだから、

さっきのレベルアップは、

絶対にLv8だけじゃなかった。


そのおかげで、

主人を守るための新しいスキルをいくつも覚え、

さらには再び進化条件まで満たしてしまった。


火も、雷も、氷の礫もものともせず、

アレカはデレオの前に躍り出ては、

次々と襲い来る召喚獣の猛攻を受け止める。


箱が弾けるように飛び出し、

呪いをばら撒き、

大きな前足を振るって、

デレオへと続く道を切り開いていく。


やがて戦場には、

焦げた魔力の匂いが立ち込め始めた。


砕け散った霊光は、

雪の残渣のようにひらひらと落ちていく。


デレオは奥歯を噛み締め、

風の正面へ身を乗り出しながら、

運命の渦の中心へと踏み込んだ。


バハムートの塔の麓に辿り着くと、

胸の鼓動は外の戦闘の喧騒と同じリズムで

地を震わせているように感じられた。


塔のさらに上、

黒雲の向こうに、

龍王の影がぼんやりと浮かんでいる。


あたかも、

クリシュナの使命を授かった存在のように、

ただ静かに、

何もかもを見下ろしていた。


名も知らぬ原初の大精霊が、

龍王の対面に漂い、

魔力の渦巻きに身を委ねながら、

同時に莫大な魔力を放ち続けている。


彼もまた見ている。

あの少女が、

この尽きることのないエネルギーへ

干渉する資格を持つのかどうかを。


『ツール製作:スポーツ用品——登山用のピッケル』


デレオは意識を集中させ、

両手に魔力をこめて、

二本の魔光を帯びたピッケルを形作った。


そして、

刃を塔の壁の裂け目に深々と打ち込む。


一振りごとに魔力の火花が散り、

石片がはらはらと落ちていく。


冷たい夜風が耳元で吠え、

召喚獣たちが起こす嵐は、

今にも彼の身体を吹き飛ばさんばかりだ。


シミリスの涙は、

彼女の周りで巻き上がる旋風に巻き込まれ、

空中に散っていく。


その声は、

嗄れ、震えていた。


「いまさら……

どうして、また私のところに来るの?」


怒り、恐怖、そして諦めきれない渇望が、

その声に入り混じる。


烈焔犬は、

かつての主の声を聞いた途端、

ランプから飛び出すように吠えた。


デレオは彼に何も餌を与えていないというのに、

その身体にはあふれんばかりの力が満ち、

世界の根幹すら喰らい尽くす巨竜のような巨体へと

変じていた。


召喚獣の数は潮のように増え続ける。


蹄と爪痕が交差し、

炎と氷が空中で衝突して、

半ば崩れかけた石畳を容赦なく焼き焦がしていく。


アペスとチェラーレは、

その混沌の中を幻影のように駆け抜ける。


一体倒すごとに、

背後から荒い息遣いと叫び声が聞こえた。


アビスウズの魔力は枯渇寸前で、

顔色は紙のように白い。


それでも震える両手を突き出し、

最後の防衛線を必死に支えていた。


彼女の霊光は、

暴風雨の中で今にも消えそうな蝋燭の火のように揺れながら、

なお消えずに踏ん張っている。


カシヤの音楽は、

みんながまだ倒れずにいられる最後の理由だった。


彼女は休むことなく調性を変え、

枯れかけたアビスウズの魔力の泉へ、

かろうじて涸れない一筋の水を注ぎ続けていた。


バハムートの凝視のもとで──


デレオはついに、

血と汗と砕けた石片にまみれながら塔の頂に辿り着く。


今、

星々の光はかすみ、

嵐の中心は虚無のように暗い。


十数体の召喚獣が、

デレオの登頂と同時に、

大地を襲う竜巻のように押し寄せてきた。


デレオはすべてを捨てる覚悟を固めた。


シミリスの怒涛の召喚魔法が、

まるで自分を滅ぼそうとするかのように押し寄せてくるのを、

彼は目を背けずに真正面から見据える。


炎の雲がデレオの周りに集まり、

烈焔犬はかつてないほどの忠と勇を放つ。


『ニュークリアフレア』


塔の頂に、

第二の太陽のような光が昇りあがった。


この最強の火属性魔法の直撃に耐えられる召喚獣は、

一体として存在しない。


すべての強襲は、

その一撃の中で蒸発した。


デレオは塔の頂にしっかりと立ち、

シミリスと正面から視線を交わす。


烈焔犬の姿を見た瞬間、

シミリスの胸に記憶が迸った。


山を割る清水のように一気に押し寄せる記憶が、

喪失と悲しみで濁っていた心を、

一瞬にして洗い清めていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ