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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第三部——召喚塔林

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第67話 彼女の心は、群塔の中に囚われている

遠くの塔林は雲と霧に包まれ、

蒼白い光が塔の表面を滑り落ちていく。


それは、過ぎ去った時が影となって流れていくようだった。


シミリスがここへ来たのは、

自分の力を証明するためでも、

かつての限界に挑むためでもない。


ただ――

溢れ出る感情を思い切りぶつけても、

受け止めてもらえる場所が必要だったのだ。


いつだって、

この塔林のどこか一つの塔の頂には、

かすかな光がまたたいている。


それはシミリスが、

自分の感情と魔力をまとめて、

空高くのスピリッツや聖獣の主へと託しているとき、

天地そのものが共鳴している証だった。


「彼女の心は、この塔たちと同じだよ。

何度も風雨に晒されて、

傷ついて、ひとりきりで立ち尽くして……

それでも倒れない。」


チェラーレは空を見上げながらそう呟いた。


召喚塔林は、どんどん近づいてくる。

空気には濃密な魔力の波動が満ち、

踏み出す一歩一歩が、

古い誓約の残響を踏み鳴らしているように感じられた。


真昼だというのに、

塔林全体は深い影に覆われている。


デレオの心も、

塔林の険しい環境に引きずられるように沈んでいく。


シミリスは塔林の中に囚われている――

そして、

その心に枷をはめたのは、

ほかならぬデレオ自身だった。


地平線近くの雲が低く垂れこめ、

その一角で炎魔神と氷霜の巨竜が激しくぶつかり合っていた。


灼熱の炎と氷のブレスが交差し、

空気はあるところでは歪み、

あるところでは凍りつく。


炫光巨人と毒龍ニーズヘッグが

塔の脇を旋回しながら絡み合い。


フェンリルとケルベロスは

塔の根元を巡り歩く。


カルラは翼をひるがえして強風を巻き起こし、

フェニックスは火焔のような

双眸で天を見据えながら鳴き声を上げる。


数えきれないほどの幻獣や魔神たちが、

ひときわ高くそびえる巨塔――

バハムートの塔――を取り巻き、

それぞれが一切の出し惜しみなく力を放っていた。


少し離れた場所から眺めると、

塔の外壁は蔦と古い文様に覆われ、

石レンガはところどころ風化し、

刻まれた魔法文字が淡く光を瞬かせている。


塔と塔の合間に流れる空気は重く圧し掛かり、地面にはときおり、

かつてここで敗れた召喚師たちの残光が、

さざ波のように浮かんでは消えていく。


一行は少しずつ群れなす塔のあいだへと分け入っていった。


車輪の下で砕けた石と苔が潰れ、

どこかで魔獣のうなり声や塔の内部から響く低い囁きが聞こえる。


バハムートの塔の頂には、

ひとりの女性の影がじっと立っていた。


蒼白い長い髪が風に舞い、

輪郭は霧と光の縁取りの中で、

ぼんやりとしか見えない。


氷、水、雷、炎、風、土、毒、光、闇――

あらゆる属性の霊光が彼女の身にまとわりつき、

その冷ややかな孤独を照らし出していた。


彼らが近づけば近づくほど、

周囲の環境は苛烈さを増していく。


巨大な水蒸気の柱が噴き上がり、

毒雲が渦を巻いて広がる。


きらびやかな光の奔流と、

突如として開く漆黒の裂け目が、

召喚塔林そのものを飲み込もうとしているかのようだ。


雷鳴は耳元でいつ破裂してもおかしくなく、

風には細かな氷晶と火の粉が入り混じって舞っていた。


炎魔神は咆哮を上げ、

燃え盛る巨大な掌で氷の巨竜の首をがっちりとつかむ。


炎と氷が空中で激しくぶつかり合い、

無数の火花と氷の欠片が飛び散った。


竜の鱗は烈火にさらされて蒸発し、

霜のような魔光となって四方八方へ舞い散っていく。


そのずっと高みで、

シミリスはゆっくりと腕を伸ばした。


指先には鋭い冷気が絡みつき、

散らばった氷霜の魔光を一つひとつ吸い寄せていく。


やがてそれらは、

彼女の周囲を巡る氷の輪となって収束し、

光が幾重にも重なっていくにつれ、

彼女の身体は蒼と銀の光に完全に包まれていく。


その姿は、

まるで雪と氷そのものが人の形を取ったようで、

放たれる気配もいっそう冷たく鋭くなっていった。


「……こっちに気づいた。」

目のいいアペスが、

緊張をにじませてそう告げる。


シミリスの視線が霧を貫き、

まっすぐに彼らの居場所を捉えた。


それに呼応するように、

デレオの腰に提げられた烈焔犬ランプが、

じわじわと熱を帯び、

ついには眩い光を放ち始める。


シミリスがそっと指を弾いた。

そのわずかな動きにあわせて、

空気中の魔力が大きくうねる。


次の瞬間――

炫光巨人と毒龍ニーズヘッグは、

塔の周りを巡るのをやめ、

稲妻のような速度で一行めがけて急降下してきた。

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