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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第三部——召喚塔林

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第63話 少女と熊――この一万クレジットのために、命を懸ける価値はあるのか?

自分の家を手に入れた――

そう思うと、デレオの胸には、

早くも「引っ越し」という二文字への期待が膨らんでくる。


よく考えれば、彼らはあの家を

一度も自分の目で見ていない。


それなのに、

勢いだけでポンと一軒買ってしまったのだ。


数字に感覚を

麻痺させられているのかもしれない。


さっき口座に

振り込まれた何千万という単位に比べると、


五百万の家なんて、

コンビニで飲み物を一本買う

みたいな感覚になってしまう。


「さて、と……」

デレオが口を開こうとした、そのとき。


「約束、忘れてないわよね。

シミリスを迎えに行くって。」

チェラーレが先に言った。


声にはうっすらと焦りが滲む。

ここ二日ほどでようやく

胸の荷が軽くなりかけていたのが、


むしろ悪いことのように感じているのだ。


「もちろん行くよ。」


「でも、その前に、

さすがに昼飯ぐらい食べてもいいだろ?」


デレオが笑いながら提案する。


そのタイミングで、

カシヤのお腹がぐうう……と鳴った。


皆の視線がそろって彼女に集まると、

カシヤはそっと顔を背け、


「今の音は私じゃない」と言いたげに知らんふりをする。


チェラーレは一瞬ためらったが、

やがて渋々といった声を出した。


「でも……」


アビスウズが肩を叩き、

あっけらかんと言う。


「心配しなくていいって。

 ディディは逃げないわよ。


 なんたって、

 さっき召喚塔林の中に

 家を買ったんだから。」


そう言って、さっきの広告を指でつつき、

「この住所ね」とでも言いたげに笑う。


カシヤも頷いた。

「それに、

今回は私たち全員、チェラの味方だから。」


そう言って、チェラーレの手を握り直す。


アペスはわざとらしく顔を近づけ、

声を潜めた。


「もし逃げたらさ、

私たちが一緒に捕まえてあげるよ。」


冗談めかした口調の中に、

ほんの少しだけ本気が混じっている。


「で、どこで食べる?」

アレカが首を傾げ、猫みたいな声で尋ねた。


ひげが楽しげにぴくぴく動いている。

すでに何を

食べようか想像しているのだろう。


「アンタんち、キッチンある?」


アペスの瞳がきらきらと輝く。

何かを期待している顔だ。


「簡単な調理台ぐらいはあるけど……

道具はそんなに揃ってないよ。」


デレオは少し気恥ずかしそうに答える。


「ちょうどここ市場だし、

 新鮮な食材を買い込んで、

 デレオの家でみんなで

 料理するってのはどう?」


アビスウズがそう言って、

周りの店を指さす。


そこには、

山積みの野菜や果物、

獲れたての魚介が並んでいた。


その表情には、

料理人としての自信と

ワクワクがあふれている。


「でもなぁ……」


デレオはまだ渋っている。

狭い部屋を見られるのが、

少し恥ずかしいのだ。


「うちのご主人の部屋、

 すっごく小さいからね。

 見られたら照れるんだよ。」


アレカはわざとらしく笑ってみせる。


この箱は、

デレオをちくっと刺さないと気が済まないらしい。


「何が問題なの? 

 あれは“きちんと片付いた、

 清潔な男の子の部屋”だよ。


 むしろ誇っていいくらい。」

チェラーレはやさしい声音でそう言った。


「えっ!? なんで知ってるんだよ!」


デレオは慌てて振り返る。


まさか、

こっそり入り込んだことがあるのか?


「べ、べべ、別に? 勘よ、勘!」


チェラーレの頬がほんのり赤くなる。


そんなこんなで、

五人はのんびりと市場を歩き始めた。


いくつかの店を回り、

かなりの量の食材を買い込む。


大根、唐辛子、ぶどう、生姜……

手当たり次第にカゴへ放り込んでは、

最後に全部アレカの箱の中へ押し込む。


そして、

和やかな空気が満ちてきたそのとき――


一人の半身人の少女が、

サーチベアを連れて、

彼らの前に立ちふさがった。


道を、塞ぐように。


「見覚えがあるな……」

デレオは思い出した。


「一万クレジットの懸賞目

当てで来た子だよな?」


半身人の少女が、ひゅん、

と投げナイフを一枚投げつけてくる。


「ふん! 

今度こそ、

うちの相棒のすごさを見せてあげるんだから!」


デレオが

身をひねって避けようとしたその前に、

すっと二本の指が伸びた。


空中のナイフは、その細い指に、

いとも簡単につまみ取られる。


チェラーレが、

燃えるような目で少女を睨んでいた。


その怒り方を見るに、

この懸賞をかけたのは

彼女ではないのは明らかだ。


「な、な、何よその目つき……」


半身人の少女は慌てて一歩下がり、

サーチベアのそばへ身を寄せる。


目の前の女が、

すごく危険だということは、直感でわかる。

けれど――


デレオはあわてて二人の間に割って入った。


「チェラ、やめとけ。

新人をいきなり半身ぶっ壊すのは、

さすがに見たくない。」


チェラーレに睨まれたのに逃げ出さない。


それはつまり――

本当に何もわかっていない、

しろだという証拠だ。


「ほら! 

行ってきなさいよ、

エサ代くらい稼いできなさいってば!」


少女は必死にクマの背中を押し、

前へ出そうとする。


だがサーチベアはだらっとしたまま、

近くの野菜ごった煮屋台の前で、

床に落ちたビーツの切れ端を

嗅いでいるだけだった。


デレオが

「ひょっとしたら平和的に終わるのでは」

と思い始めたちょうどそのとき。


十数人の少年少女が、

市場の人混みから次々に現れ、

五人をぐるりと取り囲んだ。

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