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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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第52話 危険な同居人――闇は彼女の味方

ウンブラがぱちりとまばたきし、

どこか意地の悪い笑みを含んだ声で言った。


「そうそう、先に言っとくけどね。

今夜はあんたたち、もうひとり同室人がいるよ。

あの子、すっごく機嫌が悪いから気をつけな」


そう言って、ポケットから鍵束を取り出す。


「さっきの運転手さん?」

アペスが首をかしげてたずねる。


「あの人、どう見ても人畜無害なんだけど?」


ウンブラは首を横に振った。


「とんでもない。

あの子と同じ屋根の下になんか、入れられるわけないだろうさ」


指をそろえて、空中をすっとなぞる。

まるで、何かをスパッと切る仕草のように。


「じゃなきゃ、あっという間にミンチにされちゃうよ。

ひひひ」


それを聞いたデレオは、思わず歩みを緩めた。


「チェラーレ……?

どうしてここに……?」


胸の中がざわつく。

彼には、なんとなく心当たりがあった。


ウンブラは横目でデレオをにらみ、

意地悪く口元をゆがめて、鍵をしゃらりと鳴らす。


「よくそんな口がきけるね。

原因を作ったのは、ほかでもないあんたでしょ?」


デレオは一瞬きょとんとしてから、

思わず背負い紐を握りしめ、気まずそうに息を吐いた。


「えっと……

自制不能の呪詛……のこと、だよな?」


「よくぞ、あんなのを耐えながらここまで来たもんだよ。

あんたに、あそこまで強い呪いを扱う度胸があったなんてねぇ」


ウンブラは感心したように首を振りながら、

それでも口元には悪戯っぽい笑みを残している。


「その……自制不能の呪詛。

あんた、なんとかできるのか?」


デレオは眉間に皺を寄せ、

無意識に背負い紐を指でいじった。


どこか、後ろめたさを滲ませた声。


「とっくに片付けてあるよ。

あの呪いはね……ただ事じゃない代物さ」


ウンブラはデレオをまっすぐ見つめ、

珍しく素直な目で褒めた。


「精製爆衝エンジンスケルトンの骨で作ったんだ……」


デレオがぽつりと打ち明ける。

視線が泳ぎ、ウンブラと目を合わせようとしない。


「不死者の素材から直接道具を作ったって?

あんた、自殺願望でもあんのかい。

死霊術師でもないくせに」


ウンブラは杖の石突きを、

ドン、と地面に叩きつけた。


呆れ半分、驚嘆半分の声音。


「作ったのはおれじゃない。

こいつだ」


デレオはそっと身体をずらし、

アレカを指さした。


「ほう。

こいつはまた、面白いお宝だねぇ」


ウンブラは腰をかがめ、

アレカへ顔を近づける。


瞳には、好奇心と賞賛。


指先でちょいちょいとつつくと、

アレカはうるさそうにぴょん、と跳ねた。


そのまま、小走りで民宿の玄関へ。


「やれやれ。

猫みたいな性格の箱じゃないか」


ウンブラは、ますます気に入った様子で笑う。


四人はアレカのあとを追い、

ゆっくりと民宿の建物へ足を踏み入れた。


中に入ると、

古い木材と薬草が混ざった匂い。


くすんだ灯りが、

年季の入った壁に影を揺らしている。


――そのときだった。


玄関の暗がりから、

女盗賊チェラーレが無音で姿を現した。


身体にぴったりとした無地のタンクトップ。

影そのもののような身のこなし。


カシヤの横へ、するりとにじり寄る。


短剣が、一瞬だけ冷たい光を放つ。


刃がカシヤの頬を掠めようとした――

その刹那。


ごん、と金属音。


アレカが跳ね上がり、

硬い外殻でその一撃を受け止めた。


本来なら、

整形レベルの大怪我になっていたはずの斬撃。


その一太刀を、

アレカは正面から受けきった。


「チェラーレ!」


デレオとアペスは、

考えるより先に身体が動いていた。


アペスのしなやかな腕が、

鞭のようにしなる。


チェラーレの踏み込みと激突し、

玄関は一瞬で修羅場と化す。


拳と蹴り。

閃く刃。


狭い土間の中で、

二人の動きは互角だった。


「今のは隠密奇襲……!

この女、スキルカンストのシーフだよ!

最低でもレベル47はある!」


アペスは舌打ちしつつ、

全神経を戦闘に集中させる。


室内はもともと薄暗い。

動体視力に優れる彼女でも、

すべてを捉えるには光が足りない。


チェラーレはダガー。

アペスは素手。


取れる手段は、

奪刀か回避か――それだけ。


だが、

そのどちらも決定打にならない。


細かな切り傷が、

アペスの身体にじわじわと増えていく。


一方でチェラーレも、

モンクの破壊力を警戒していた。


不用意に踏み込めば、

一撃で終わる。


だから、

二人の戦いは膠着していく。


――灯りが、ひとつ弱くなった。


デレオは前線を任せ、

斬られたアレカと、

ショックで固まるカシヤのもとへ向かう。


――灯りが、もうひとつ消える。


アレカは不機嫌そうにチェラーレを睨み、

自分で外殻の

『ポリッシング』と『板金』を始めていた。


そして――


灯りが、完全に落ちた。


デレオとアペスは気づいていなかった。


戦いのさなか、

チェラーレが少しずつ、

室内の光源を潰していたことに。


完全な暗闇への備えはない。


だが、

チェラーレは違った。


すでに、

彼らのおおよその位置を頭に描き終えている。


そして、耳を澄ませる。


呼吸。

足音。

衣擦れ。


――すべてが、

彼女にとっての“標的”だった。

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