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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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第49話 彼女の曾祖母と喧嘩するなら、死ぬ覚悟をしろ

運転手の指先は、

今にもハンドルに

食い込みそうなほど力が入っていて、


バスのスピードも

無意識のうちに落ちていった。


デレオはその表情が

どんどん強張っていくのに気づき、

そっと声をかけた。


 


「運転手さん、この先、

農場の手前で降ろしてくれれば大丈夫です。

中まで無理に入らなくていいですよ。」


 

できるだけ穏やかな口調で、

車内の空気が少しでも和らげばと思った。


 

「ふぅ……それは本当に助かるよ。

今夜はちゃんと家で、

母ちゃんの飯が食えそうだ。」


 


運転手は引きつった笑みを浮かべた。

口元はかすかに震え、

視線は前方の闇から離れようとしない。


 


やがて、ウンブラの農場が近づいてきた。

五百メートルほど先、

ただ一本だけ伸びる道の突き当たりに、

けばけばしいネオンの看板が浮かび上がる。



「ウンブラのマンドレイク観光農場」



と、でかでかと書かれていた。


 

「今夜はお世話になります。

ありがとうございます。」



カシヤが運転手にぺこりと頭を下げる。


 

運転手はぬかるんだ道端にバスを停め、

慌てたような手つきでギアをニュートラルに戻した。


車内灯がふっと点き、

一瞬だけ、みんなの顔が青白く照らし出される。


 

「着きましたよ。

この先は足下が悪いんで、

気をつけてください。」


 

運転手の声は、何かに聞かれるのを恐れているかのように、

今にも消え入りそうなほど小さかった。


それでも、その視線には三人への心配がはっきりと浮かんでいる。


 

全員が下りたのを確認してから、

彼は再びエンジンをかけた。


タイヤがぬかるみに空転して泥を跳ね上げ、

赤いテールランプが一瞬だけ闇の中に線を引き――

すぐに見えなくなった。


 

三人は荷物を担ぎ直し、

歩き出そうとしたその時、


農場の外れにある食肉植物エリアのほうから、

金属が激しくぶつかり合う音が響いてきた。


 

鈍くて、けれど一定のリズムがあって――

まるで誰かが本気の決闘をしているような音。


 

三人は足を速め、農場のほうへ向かう。

戦いの音はどんどん激しさを増していく。


一撃ごとに眩しい青白い閃光と火花が弾け、

そのたびに畑に並ぶ巨大な食肉植物の葉が、ぎらりと照らし出された。


 

「聞こえる?」


 

アペスが小声で問う。

抑えようとしても震えが混じる声だった。


 

「かなりいい勝負してるみたいじゃない……」



隠しきれない興奮に、

今にも飛び込んでいきたそうだ。


 

三人は農場の看板をくぐり抜けた。

その先に、アビスウズとウンブラばあちゃんが、

それぞれの持ち場に立って向かい合っているのが見えた。


そのあいだで、一匹の小さなブタが、

ものすごく人間くさい表情で、

くたびれ果てた様子で右往左往している。


 

アビスウズの前には、

大鎌を構えたバフォメット。


ウンブラばあちゃんの側には、

雷光剣を握ったスケルトンナイト。


 

鎌と雷光剣がぶつかるたび、

激しい火花が夜空に散り、

その眩しさが二人の輪郭を浮かび上がらせる。


 

バフォメットが大鎌を振り抜くと、

刃が地面をえぐり、

泥と枯葉を豪快に巻き上げる。


スケルトンナイトは

しなやかにその一撃を躱し、


雷光剣が閃くと、

鋭い光の線が鎌を押し返した。


 

アビスウズとウンブラばあちゃんは、

それぞれ闇の守護者に激しい攻撃を命じ続ける。


しかし、どちらも決定打を与えられない。


 

何度目かの電光石火のぶつかり合いのあと、

ついに両者は同時に距離を取り、

互いを睨み合った。


荒い息遣いだけが夜風の中で交錯する。


 

その静寂を破るように、

アビスウズが叫んだ。


 

「何回も言ったでしょ!

もうこの屋敷の中だけで

一生を終わるのは嫌なの!

あたしは軍に入りたいのよ!!」


 

張り裂けそうな声だった。

恐怖を振り払うように、

叫びにすべてを込めている。


 

スケルトンの横に立つ

ウンブラばあちゃんは、

口の端をゆがめて冷笑を浮かべる。


 

「ふん、

うちの死体じゃもう足りないって?

それとも、

あんたはもっと新鮮なのが好みかい?」

 


「軍に行って、屍体を減らしに行くのよ!」

 


アビスウズは歯を食いしばり、

声を震わせながらも、

決意だけは揺らがない。


 

「だったら、

あんたの修行が

まだまだ足りないってことだよ!」



ウンブラばあちゃんは

吐き捨てるように言った。


 

その言葉が落ちると同時に、

スケルトンナイトが竜巻のように剣を振る。


 

剣閃が闇を裂いた。


 

甲高い風切り音とともに、

雷光剣が高く掲げていた

バフォメットの首筋を

一文字に薙ぎ払う。


 

大鎌が地面に落ち、

泥の上で重々しく弾み、

枯葉と土を盛大に跳ね上げた。


 

バフォメットの巨体がどさりと崩れ落ちる。


切断された首の断面から黒い煙が立ち上り、

夜風に巻き取られて、

静かに四散していった。


 

空気が、一瞬で凍りつく。


 

目を見開いたまま固まるアビスウズ。

彼女が息を飲むよりも早く、

スケルトンナイトは地を蹴った。


 

雷光剣が半円を描きながら振り下ろされ、

胸元を水平に裂く眩い閃光が、

アビスウズの心臓を正確に貫いた。


 

「それじゃあ、

あんたを一番新鮮なのにしてやるよ!!」


 

ウンブラばあちゃんは怒りを抑えきれず、

怒鳴りつけるように叫んだ。


 

漆黒の夜の中で、

血の赤が花のようにぱっと咲き乱れる。


アビスウズはその場に崩れ落ち、

そばの小さなブタは、悲鳴も出せないまま

右に左にと走り回った。

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