表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/93

第45話 ネクロサウルス狩り—— 俺たちは力を出し尽くすしかなかっ

「行くよ!」


アペスは風のように駆け出した。


鈍重なネクロサウルスは、

何が起きたのか理解する間もなく、

膝の関節に連打を叩き込まれる。


死肉を巡って争うスカベンジャーたちは、

普通の魔物以上に頑丈で、

皮も肉も分厚い。


アペスは素早くステップを踏み、

ネクロサウルスの左脚を中心に、

関節だけを狙って拳を打ち込む。


急所を正確に見極めた攻撃だが、

目に見えるほどのダメージにはなっていない。


巨大な顎が振り下ろされる。

骨まで噛み砕くその咬合力は、

殻ごと肉を噛み砕くためのものだ。


アペスが跳び退ると、

その場の砂浜は大きくえぐれ、

えぐれたのは砂だけでなく、

その下の岩盤にまで達していた。


彼女の攻撃は、

一打一打がネクロサウルスの注意を引きつけ、

決して息をつかせない。



後方では、

カシヤが二体の小さな音楽スピリッツを召喚する。


ハーモニカ、コンガドラム、ウクレレの三重奏――

戦いの歌が彼らの背中を押すように、

高らかに響き渡る。


カシヤはふとひらめいたように呟く。


「もしかして、アレカにもう一個、

呪いを撃てる道具を作ってもらえたら……

いや、忘れて。」


彼女の脳裏に、あの夜、

呪いを使い切ったあとのデレオの姿がよぎり、

その案はすぐに引っ込められた。


「相手は人じゃないし、

そこまで罪悪感を抱く必要はないと思うけど……まあ、」


デレオはカシヤをなだめるように言う。


「スカベンジャー系の魔物は、

呪いに対する耐性が高い。

不死者を主食にしてるくらいだからな。」


高レベルの強力なスカベンジャーともなれば、

暗黒魔法をほとんど無効化するものも多い。


毒や呪いへの耐性に関しては、

とくに優れているのだ。



アレカは命知らずに先陣を切り、

いきなり強化済みの宝石レーザーを撃ち込んだ。


狙いはネクロサウルスの心臓。

その一撃で仕留めるつもりであることは明らかだった。


だが――

ネクロサウルスの防御が高すぎるのか、

それとも宝石レーザーの出力がまだ足りないのか。


ネクロサウルスは倒れない。


アレカはふんっと短く鼻を鳴らし、

宝石をさらにチャージモードに切り替える。


威力は上がるが、

その分チャージ時間が延びてしまう。


ネクロサウルスの胸には、

大きな穴が焼き開けられ、

焦げた肉から骨が露出していた。


しかし、それでもなお、

戦闘能力は失われていない。


ネクロサウルスは激怒し、

大きく尾を振り上げてアレカめがけて叩きつけた。


――分かっている。

最も危険なのは、

あの宝石レーザーだということを。


ネクロサウルスの敵意は、

完全にアレカ一体に集中する。


尾は何度も何度も振り下ろされ、

アレカはそのたびに地面ごと叩きつけられ、

ついには土の中深くへ埋め込まれてしまった。



デレオは、その執拗な攻撃がアレカに集中していることに気づき、

自分たちへの注意が薄れているのを見て取る。


彼は斧とツルハシを握り、

アペスの動きに合わせるように、

ネクロサウルスの左脚の周囲を回り込む。


狙うはただひとつ、膝の関節。


何度も何度も攻撃を繰り返し、

デレオの斧は刃こぼれを起こし、

アペスの拳も、

拳骨が腫れ上がるほど打ち続けられた。


アペスの息は上がり、

デレオも肩で呼吸をしている。


デレオは刃先の丸まった斧を杖代わりにつき、

もはや『メンテナンス』でどうにかなるレベルではないと悟る。



後方のカシヤは、

前線の様子を見てすぐに音を変えた。


昂ぶる戦歌から、澄んだ回復の楽章へ。


アペスは再び拳を握る力を取り戻し、

デレオの呼吸も落ち着いてくる。


『リサイクル』


デレオの手の中で、

斧が粗い素材へと分解される。


『ツール製作』


すぐさま新たな斧が形を成す。


彼らは気力を振り絞り、

再び猛攻を仕掛けた。



そのとき――


地中でチャージを続けていた宝石レーザーが、

溜め込んだエネルギーを一気に解放する。


地面を突き破るように放たれた光線は、

空へと伸び上がり、

そのままネクロサウルスの尾を貫いた。


アレカが、尾で抉られた大穴からぴょんっと飛び出す。


尾に走った激痛に、

ネクロサウルスは反射的に暴れ狂い、

尾をめちゃくちゃに振り回した。


限界まで酷使されていた膝の関節は、

その衝撃に耐えきれない。


分厚い竜の皮を内側から突き破るように、

ボキッという嫌な音とともに骨が飛び出す。


左脚がへし折れ――完全な開放骨折。


ネクロサウルスは巨体を支えきれず、

その場に崩れ落ちた。


もう立ち上がることはできない。

だが、それでもなお、もがくことをやめない。


尻尾を失ったトカゲのように、

激しくのたうち跳ね回る。


腐食性のある毒を含んだ唾液をそこら中に吐き散らし、

尾の名残で地面を叩き、

脚をばたつかせる。


三人は、どう近づけばいいのか判断を迷った。



デレオは海辺をうろうろと歩き回り、

使えそうな石や枝、骨を片っ端から拾い集める。


『ツール製作:漁具——捕鯨銛』


デレオは残りの魔力すべてを注ぎ込み、

何本もの銛を作り出した。


アペスとデレオはその銛を構え、

位置取りを変えながら次々と投げつける。


アレカも残りの魔力を惜しみなく宝石レーザーに注ぎ込む。


カシヤは攻撃の曲と回復の曲を切り替えながら、

絶えず三人の体力と集中力を支えた。



そしてついに――


アペスは、

ほんの一瞬だけ生まれた隙を見逃さなかった。


彼女は最後の一本となった銛を構え、

アレカが最初に胸に開けた焦げ穴めがけて、

全力で投げ放つ。


銛は焼け焦げた穴に吸い込まれ、

そのまま心臓を貫いた。


ネクロサウルスは低くうめき声を上げ、

その巨体を大きく震わせたあと――


二度と動かなかった。


巻き上がっていた砂煙は、

ゆっくりと落ち着き、

血の臭いを含んだ湿った空気が、

静かにあたりに広がっていく。


彼らは固唾を飲んで見守り、

この凶暴な怪物が完全に動かなくなったことを確かめる。


Lv67のネクロサウルス。

軍隊を壊滅させることさえ可能な怪物を、

自分たち四人の手で仕留めたのだ。


アレカはゆっくりと蓋を開ける。


だが、

今飛び出してくるであろうステータスの数字など、

誰も気にしていなかった。


大事なのは、

彼らがもう「ただの冒険者」ではなくなったことだ。


尾を引いていた恐怖と緊張は、

徐々に勝利の震えへと塗り替えられていく。


世界の動きが、

少しだけゆっくりになったように感じられた。


耳に残るのは、

寄せては返す波の音と――

自分たちの鼓動だけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ