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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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第43話 この少女は、まさに回復用のBGMだ

デレオはふいに足を止めた。


袋の中のゾンビの足が、

まだぴくぴくと痙攣している。


「おかしいな……

今日のゾンビ、やけに多くないか?」


アペスは周囲を見回し、眉をひそめた。


「それに動きも変だよ。

何かから逃げてるみたい。」


そこでようやくデレオも気づく。


さっきバラバラにしたゾンビの残骸が、

どれも一様に、

海の方角に背を向けて転がっていることに。


 


袋の中でまだ小さく痙攣しているゾンビの足を感じながら、

カシヤがしみじみと言う。


「まだ……

逃げたいものがあるのかもしれないね。


だって彼らも、

もとは人間だったんだし……」


 


「彼らの名前は呪われた。

これは彼らが背負わなければならない業だ。」


アペスはまぶたを閉じ、

遠くにいるクリシュナへと礼拝の祈りを捧げる。


 


「でも、

ウンブラ婆さんのために少しでも多く集めてあげれば、

迷った魂が安らげることもあるかも。」


カシヤが静かに続ける。


 


デレオはうなずいた。


「それは間違いないな。

チラシにも教会と提携してるって書いてあったし。」


デレオもその考えには賛成だった。

ただ、

そのためには道具を少し増やす必要があった。


 


デレオは近くの木から適当に何本か枝を折り、

アルカには金属片を何枚か吐き出してもらう。


『ツール製作:農具——刈込鋏』


デレオの手の中で枝が変化していく――


樹皮がはがれ、

枝はまっすぐに矯正され、

金属片は要所で形を変える。


刃、軸、ヒンジ……。


デレオは少量の魔力と簡単な素材を消費し、

その場しのぎの刈込鋏を二丁作り上げた。


 


「かなりの粗製だから、耐久は低いと思う。

使うときはちょっと気をつけて。」


そう言って、デレオはできたばかりの刈込鋏を二人に手渡した。


 


三人は目を合わせ、

小さくうなずき合うと、

茂みの間の小道を静かに進みだす。


ウンブラ婆さんが欲しいのは象徴となる部位だけだ。


そこで彼らは、

この林にいるゾンビたちを

全部「狩りの対象」とみなすことにした。


一つは、

そこら中を徘徊している不死生物が、

無関係な人を襲うのを防ぐため。


一つは、

ウンブラ婆さんの農場で

使える労働力を増やすため。


そしてもう一つは……もちろん、

クレジットをできるだけ稼ぐためだ。


 


刈込鋏を手に、

茂みのあちこちで軽やかな

「パチン」という音が響く。


太陽は徐々に高く昇り、

木漏れ日が葉の間からこぼれ落ちる。


三人の背負い袋の中には、

まだぴくぴくと動き続ける「戦利品」が、

すでに山のように詰め込まれていた。


墓地近くにいたゾンビたちは、

ほとんどが四肢をばらばらにされ、

地面一帯を転がりまわっている。


 


アルカはゾンビに噛まれても平気なので、

いつも先頭を歩き、

まずは奴らの注意を引きつけてくれる。


何度もかじられるうちに外殻はへこみ、

傷だらけになるが、

そんな時はすぐにスキルを発動する。


『板金』

『ポリッシング』


小さな宝石箱は、

すぐさま新品のようにぴかぴかに輝きを取り戻す。


 


ときどきアルカは、

ゾンビの足首めがけて宝石レーザーを撃つこともある。


どうやら皆が何をしたがっているのか、

よく分かっているらしい。

なんとも賢い箱である。


 


「デレオ、刈込鋏がもう切れない。」


アペスが、

刃こぼれした刈込鋏をデレオに見せる。


「任せとけ。」


『スキル発動:メンテナンス』


デレオの手元に、冷たい魔力の光が宿る。


その大きな刈込鋏は、

たちまち新品同様の切れ味を取り戻した。


 


「このスキル、ぱっと見は地味だけど、

実際むちゃくちゃ便利だよね。」


アペスは刈込鋏を

受け取りながら感心したように言う。


「お褒めにあずかり光栄。


まあ、そのうち本当にダメになったら、

『リサイクル』で素材に戻して、

新しいのを作ってやるよ。」


 


そのとき、

茂みからまた一体のゾンビがのこのこと這い出してきた。


アペスは素早く近づくと、

その足の甲を容赦なく切り落とす。


「二十三体目。」


彼女は手際よく数を数えていく。


 


「もしかしたら、

どこかで家族が

帰りを待ってるかもしれないね。」


カシヤはそうつぶやき、

少し憐れむような眼差しを向けた。


「こいつらの身内に金があるなら、

とっくに聖職者を呼んで処理してるさ。


ウンブラのとこに送って『使い切って』もらってから家族に買い戻させる方が、

復活費用の節約にはなる。」


デレオが言う。


 

三人は一本の古木の下で足を止めた。


さっき切り落としたばかりの

戦利品を確認しながら、


軽く整頓しつつ、

ひと休みがてら雑談を始める。


 


「カシヤ、ひとつ聞いてもいいか?」


デレオは額の汗をぬぐいながら、

倒木に腰を下ろし、呼吸を整えた。


「なにを?」


カシヤは背負い袋を

引きずりながら近づいてくると、


裾についた土を軽く払ってから、

デレオの隣にあぐらをかいて座り、

首をかしげる。


 


「ちょっと踏み込みすぎな質問か

もしれないんだけどさ……


今、俺たちはパーティを組んでるわけだし、

一応聞いておきたい。君の職業とレベル。」


デレオは脚を伸ばし、

張ってきたふくらはぎを

押さえながら言った。


「そんなの、気にすることないのに。」


カシヤはくすっと笑う。


「いや、冒険者同士だと、

むしろ礼儀みたいなもんだよ。


本気を見せるのは、

同じパーティの仲間に対してだけ、

ってね。」


 


デレオは水筒を取り出して彼女に渡す。


カシヤは一瞬きょとんとしたあと、

それを受け取り、ひと口だけ啜った。


まるで水筒に口づけるかのように、

そっと。


そして頬を赤らめながら、

水筒を彼に返した。


 


「私はね、

君との間にそんなに遠慮があるの、

あんまり好きじゃないよ。


なんだか、まだ他人行儀みたいで。」


カシヤは少し眉を寄せる。


「……悪い。俺の方の問題だな。

どうも心配しすぎる性格で。」


カシヤは苦笑して首を振る。


「私は今、楽師のレベル24。」


 


アルカがトコトコとカシヤのそばまで来て、

パカッと蓋を開けると、

中から小さなクッキーを何枚か吐き出した。


どうやら先ほどもらったお菓子を、

全部食べずに取っておいたらしい。


「ありがとう。」


カシヤは嬉しそうに

アルカの蓋をぽんぽん叩き、

そのクッキーをデレオとアペスにも分ける。


 


「ってことは、使えるスキルは……」


デレオはクッキーを一口かじりながら、

興味津々で続きを促した。


「例えば、こんな感じ。」


カシヤが小さく指を鳴らすと、


その瞬間――

彼女の背後に二体の小さなスピリッツが、

ぽん、と現れた。


一体はウクレレを抱え、

皆の頭上をくるくる回りながら、

軽やかな旋律を奏で始める。


もう一体はデレオの膝の上にぴょんと飛び乗ると、

コンガドラムを叩き始めた。


そのリズムは、

身体の芯を温かくするような力強さに満ちている。


 

「私たち、

けっこういろんなことができるんだよ。


けど、

今みんなに一番必要なのは、多分これ。」


カシヤはウクレレを

持っていたスピリッツから楽器を受け取る。


代わりにそのスピリッツは、

どこからともなくハーモニカを取り出した。


カシヤはそっと頷き、

口元に笑みを浮かべると、

二体のスピリッツと合図を交わす。


 

次の瞬間、

ウクレレの弦が鳴り始め、

ハーモニカの柔らかな息吹と、

コンガのリズムが重なってゆく。


スピリッツたちは三人の周囲をくるくると舞いながら、

口元に楽器を当て、

指先で軽やかにリズムを刻む。


その音色は明るく、

それでいて心をそっと撫でるような癒やしの魔力を帯びていた。


曲が盛り上がるにつれて、

三人の疲労と倦怠感は、

ゆっくりとその旋律の中に溶けていく。


 


「ふぅ……楽師がパーティにいるって、

こういう感じなんだな。」


デレオの胸のあたりがじんわりと温かくなる。


魔力がしっかりと回復していく感覚があり、

狩りの最中についた小さな擦り傷の痛みも、

いつの間にか気にならなくなっていた。


 


やがて音が静まっていくころ、

デレオはふと気づく。


周囲が、あまりにも静かだということに。


鳥のさえずりもない。

虫の羽音もない。


風が木々を揺らす音でさえ、

どこか不自然に遠い。


 


アルカは緊張したように蓋を閉じ、

その宝石にはうっすらと光が灯りはじめた。


「ねえ、二人とも……」


カシヤが遠くを指さす。


「向こうの墓石、

さっきまでのと、形が違わない?」


 


海風が運んでくるのは、

塩の匂いだけではない。


胸の奥をざわつかせるような、

腐敗の気配がまじっていた。


そして次の瞬間――

低く、飢えた咆哮が、

その不気味な静寂を引き裂いた。


気づけば三人は、

いつの間にか、


ずいぶん奥深くまで歩いてきてしまっていたのだった。

———大したことではないこと———


楽師がレベルアップで得るスキル


初期スキル:聴力強化

Lv2:メイン楽器

Lv3:調和の楽章

Lv5:伴奏スピリッツ

Lv7:タイミングずらし

Lv11:進撃の楽章

Lv13:スピリッツデュオ

Lv17:ララバイ

Lv19:スピリッツバンド

Lv23:回復の楽章 ← 現在ここを超えている

Lv29:強化の楽章

Lv31:哀悼の楽章

Lv37:鎮魂曲

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