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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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笑いのパンデモニウム――鉄巣蜂とジュエルイータ

これは本編とは関係のない、独立した物語です。

『ノンプロット・クエスト開始』


アレカは、騒がしき魔殿へと召喚された。


地獄の群魔も、

諸天の神々も、

マーモンからの招待状を受け取っている。


金太郎は、

くまのプーさんそっくりのその存在を嬉しそうに抱きしめ、


相撲を取ろうとしていたが、

偽プーさんは

ひたすら蜂蜜のことしか頭にない。


オーディンは

クシヴァルの蜜酒を壺いっぱいに注ぎ、

偽プーさんに差し出した。


偽プーさんは「ぶっ――」と

音を立てて顔を背ける。


知恵をもたらすものを同族に分け与える――

それがどんな厄介事を招くか、


分かったものではない……。


人ならざる者たちは

事象の地平線の外に集い、

決して外に漏れない光と影を見届けていた。


『闘争関数入力』

f(アレカ・ジェマルム,鉄巣蜂):D(化学肥料工場)=?


解を求めよ。


化学肥料工場の中では、

都市化したゴブリンとコボルトが

大乱闘を繰り広げていた。


この二種族が

理由もなく殴り合うのは珍しくないが、

今回は種族間の対立が原因ではない。


単純に――正気を失い、

錯乱し、暴走していたのだ。


最初に刺されたのは、

液体アンモニアタンクを

管理していたゴブリンだった。


「ちっ! 

なんだこのクソ蜂は? でけぇな!」


彼は、自分の足の裏ほどもある蜂を

地面に叩きつけ、踏み潰した。


だが数秒も経たないうちに、

別の機械を操作していたコボルトに

因縁をつけ始める。


「おい! 

工場長は長い耳は

帽子の中に固定しろって言ってただろ!」


言っていること自体は正論だが、

口調は完全に喧嘩腰だった。


コボルトは耳を掻きながら、

ゴブリンを睨み返す。


ゴブリンはコボルトを

ロータリードライヤーに押し付け、


長い耳が今にも

機械に巻き込まれそうになる。


別のコボルトが飛びかかり、

ゴブリンを倒した。


「何してやが――うわっ!」


彼もまた、刺された。


一が二を生み、

二が三を生み、

三が混沌を生む。


二十人以上のゴブリンとコボルトが、

化学肥料工場で大乱闘を始めていた。


どうやらこの蜂毒は……

人の暴力衝動を

強く掻き立てる性質があるらしい。


「ちっ……!

これじゃ出荷スケジュールに

間に合わないだろ!」


マーモンは苛立ち、

異空間ゲートに手を

突っ込んでは何かを探っていた。


召喚されていない悪魔は、

惑星上では実体を持てない。 


ゆえに、この事故を

直接処理することもできなかった。


「アレカ――可愛いジュエルイータよ、

連中を大人しくさせてやれ!」


マーモンは小さな宝石箱を、

化学肥料工場の中へと投げ込んだ。


ゴブリンとコボルトが

激しくぶつかり合う最中、


毛むくじゃらで肉球のついた足が、

アレカの蓋を踏みつける。


あるコボルトがバランスを

崩して転倒したのだ。


アレカは不機嫌そうにそのコボルトを睨み、

宝石レーザーをお見舞いしようとしたが

……やめた。


彼もまた被害者なのだ。


アレカは冷静に周囲を観察する。


ゴブリンとコボルトは

互いに殴り合っているだけではない。


今や全員が無差別に攻撃していた。


ゴブリン同士が殴り合い、

コボルトがコボルトの耳に噛みついている。


その狂気の感覚に、

アレカは覚えがあった。


犬の吠え声と悲鳴の合間に、

甲高い昆虫の羽音が混じっている。


灰色の鉄巣蜂が数匹、

混乱する作業員たちの間を飛び交っていた。


設備のあちこちに止まり、

金属をかじり始める。


一匹、また一匹と、

鉄巣蜂は金属片を噛みちぎっていった。

巣材として持ち帰るためだ。


重低音の羽音が、アレカの頭上を離れない。


未知合金の金属板で作られた外殻。


そう――アレカ自身も、

彼らにとっては巣材なのだ。


その事実に思い至り、

アレカの瞳に不安の色が宿る。


いつの間に、

自分が獲物になっていたのだ?


『宝石レーザー』


アレカは一匹の鉄巣蜂を撃ち抜き、

あっさりと仕留めた。


四つある宝石のうち一つが

クールダウンに入る。


即座に撃てるレーザーはあと三発。


だが、

鉄巣蜂の数はそれを遥かに上回っていた。


一網打尽にする方法を考えねばならない。


『あそこに使えそうな物があるはずだ』


マーモンが、

アレカの意識の中で囁く。


アレカは示されるまま、

ロータリードライヤーを見る。


排出口には、

溢れんばかりに膨れた大袋があり、


白く輝く肥料の粒が床一面に散らばっていた。


『硝酸アンモニウムだ。

爆薬くらい作れるだろ。

暴走した連中をまとめて吹き飛ばせ!』


――それ、

あんたの投資してる工場なんだけど。


アレカは、

頭の中で騒ぐ悪魔を

責めるような視線を向けた。


そして、

ぴょんぴょんと跳ねながら肥料の山へ近づく。


ゴブリンの拳も、

コボルトの牙も、

鉄巣蜂の大顎も、

器用にかわしながら。


アレカは硝酸アンモニウムを、

大口で次々と飲み込んでいった。


『そうそう、その調子――派手にいこう』


金の亡者であると同時に、

マーモンは悪魔らしい狂気も備えている。


アレカは白目をむいた。

そして光り始める――

スキル『素材分解』を発動したのだ。


『分解?

爆薬を合成するんじゃないの?』


偽プーがマーモンの裾を引いた。


「フン!」


アレカは鼻息を荒く吐き、

田舎者を見下す駿馬のような態度を見せる。


蓋が開く――

だが、

何も出てこない。


煙も、


光も、


音すらない。


『なにを……?』


マーモンが怒りかけた、そのとき。


『悪魔よ、少しは待つことだ』


偽プーに無視されたオーディンは、

自分でクシヴァルの蜜酒を飲み干した。


コボルトたちは笑い始めた――

脳みそを豚に舐められたかのような

笑い方で。


ゴブリンも笑い出す――

生まれたときから

脳を忘れてきたかのように。


鉄巣蜂は笑わない……だが、

全匹が地面に転がり、

六肢を痙攣させていた。


『見事だ!』

金太郎は太腿を叩き、

肘で偽プーを小突く。


『ふむ! 笑気――一酸化二窒素か。

投資先の工場を吹き飛ばすより、

ずっとマシだろ?』


マーモンは乾いた笑いを漏らした。


今回は、

金が悪魔の好きな形にはならなかった。





————————————————————————




――惑星上、

ある国家の首都議会。


農業関連の行政官が召喚され、

国会で質疑を受けていた。


「サリクス議長にご報告します。

農糧署第8964工場より、

鉄巣蜂対応の常設清掃員を確保するため、

人件費増額の要請が出ています」


「よし、

よく議論してから採決しよう……

年に八件も乱闘が起きている。


この虫は、放っておけんな」


老人は眉間を揉んだ。




————————————————————————




マーモンも同じように頭を悩ませていた。


食い意地の張った顔をした

金太郎とオーディンが、

ひそひそと何かを相談している。


くまのようなあの存在は、

どうやらその会話を聞いてしまったらしい。


「だ、だめ! 

絶対に僕を行かせないで!

僕、布じゃないんだから!」


偽プーさんは、

心底怯えた様子で叫んだ。

閣下、一休みしましょうか。

明日になれば分かります。

我々と共に、ゾンビを狩る愉悦ゆえつが待っていることを!


——しー ゆー つまろう——

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