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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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第41話 気をつけなさい。それは、君の第五胸椎を一年中痒がらせるような者だ。

デレオはギルド会長との話を早々に切り上げた。


あの狸親父の要求には適当に相槌を打ち、

「内容は把握した」とだけ伝えて、

何一つ約束はしなかった。


「そんなに急いで俺たちと遊びに来たのか?」


長を振り切ったデレオが、

アペスに向き直って声をかける。


「正直なところ、

あんたたちが来たって聞いたら

じっとしていられなくてさ」


アペスはニカッと快活に笑った。


その爽やかな笑顔は、

年頃の少女が見れば

一瞬で恋に落ちてしまうほどだ。


「だが、あそこは真っ当な病院だろ。

そう簡単に

帰してくれるはずがないんだがな」


デレオは何かを見透かしたように言った。


「お姉ちゃん、まさかまた例のやつを……」


カシヤが眉をひそめる。


「あはは……今回は違うって!」


アペスが気まずそうに視線を逸らした。


「例のやつ? 面白そうだな。

詳しく聞かせてくれよ」


デレオがアペスを見る。


「この人ったらね!」


カシヤは、

いたずらっ子の娘を見るような呆れ顔で言った。


「今年の初めに三環格闘大会に出た時、

呪いを受けて入院したでしょ?


検査の一週間、

何の問題も見つかる前から、

彼女はもう我慢できなくなっちゃって。


病室のベッドの上で腕立て伏せや腹筋、

ありとあらゆるトレーニングを始めたのよ」


「それで追い出されたのか?」


デレオが信じられないといった顔でアペスを見る。


「自分がどれだけ健康かを証明するには、

いい方法だと思ったんだがな」


アペスは天を仰いで豪快に笑った。

 

デレオが呆れ混じりに苦笑しながら振り返ると、

ふとギルド内の空気が変わったことに気づいた。


騒がしかった冒険者たちが声を潜め、

こちらを好奇の目で見ている。


アペスに視線を送る者もいれば、

新たな賭けを始めた連中もいるようだ。


囁きの中には

「闘技場チャンピオン」

「逆光」

「シミリス」

といった名が混じっていた。


「どうやら、私たちが注目の的になっちゃったみたいね」


周囲の視線に気づいたカシヤが小声で言った。



カウンターからガデニアが顔を出す。


「デレオ、これから外に出るなら気をつけて。

さっきあんたの行方を探ってる奴がいたわ。


あまり善意のある訪問者には見えなかったけど」


「どんな奴だ?」


デレオが眉をひそめる。


「深い色のローブを着ていて、

顔は見えなかった。


でも、ひどく虚弱で

意識が混濁しているような感じで……

それに」


ガデニアが言葉を切った。


「呪いの気配がしたわ」


アペスが即座に警戒する。


「キラレか?」


「声は違ったわ。


でも、

あいつなら変声なんてお手の物でしょうね。


あんたの居場所を聞かれたけど、

もちろん教えなかった。


……それと、

あいつも『リビングデッドの脚』

の依頼を受けていったわよ」


ガデニアが心配そうに彼らを見つめる。


デレオの足元でアレカが飛び跳ね、

箱の蓋を少し開けた。


状況を察したのか、

四つの宝石が微かに光り出す。


「どうやら、

さらに慎重に動く必要がありそうだな」


デレオは緊張を和らげるように

アレカの蓋を撫でた。


 


「それで、今日はどうするつもりだい?」


アペスはわざとらしく肩をすくめ、

期待を隠しながらつま先で地面を蹴った。


「アンデッドの脚を一本か二本、

刈り取りに行くところだ」


デレオはバックパックから庭木用の剪定鋏を取り出し、

やる気を見せる。


「面白そうな依頼じゃないか。

どこのだい?」


「ウンブラ婆ちゃんの依頼だよ。


農場で働かせるゾンビを何体か調達しに行くんだ」


「ウンブラ!

あのネクロババアか! ああああ!」


アペスが叫び、

嫌な記憶を振り払うように

両手で頭を抱えた。


「どうしたんだよ?」


デレオがその大袈裟な反応に目を丸くする。


「三環闘技場で、

三年間ずっとあいつを

叩きのめしてきたんだ」


「いいことじゃないか。


なのに、どうしてそんなに

酷い目に遭ったみたいな顔をしてるんだ?」


「あれは一昨々年の試合だ。


私が虚空からあいつのリッチを

引きずり出して、


試合を終わらせようとしたその時……


あいつ、

私に直接呪いを放ちやがったんだ!」


「それって反則だろ?」


デレオが目を見開く。


「そうよ。


参戦者はあいつの

リッチであって本人じゃない。


だから私に呪いをかけたら

リッチの失格になるの」


アペスは無力感にため息をついた。


「つまり、負けが確定したから腹いせに呪いを撃ち込んだってわけか」


デレオが半分からかうように指を指す。


「その通り!」


アペスが眉を吊り上げた。


「どんな呪いをかけられたんだ?」


「一年間、肉を食えなくなる呪いだ!」


アペスは、

まるで昔のトラウマを

思い出しているような顔をした。


「そんなの、クリシュナの僧兵なら肉食は禁じられてるだろ?

何か違いがあるのか?」


「つまみ食いができなくなるだろうが!」


アペスが悔しそうに叫ぶ。


「お前、ほんと六根が汚れてんな……」



「続きがあるわよ!

あと二回の呪いも教えてあげたら?」


カシヤがいたずらっぽく笑う。


「その後二年も試合に出て、

どっちも決勝であいつを倒した。


そしたらあいつ、

またわざと私に呪いをかけやがったんだ」


アペスが拳を握りしめる。


「まるで勝つためじゃなく、

アペスに呪いを

かけるために来てるみたいだったわよね」


カシヤが呆れながらも笑う。


デレオもウンブラ婆ちゃんを知っている。


御年百四歳の、

独特なスタイルを持つ変わり者だ。


周囲をからかうのが彼女の最大の趣味だが、

彼女に弄ばれるというのは、

むしろ好かれている証拠でもある。


「どんな呪いだったのか聞いてもいいか?」


アペスは頭をかき、

気まずそうに顔をしかめた。


「去年は……

一年間、第五胸椎が痒くなる呪いだ」


デレオが背中の位置を手で探る。


「第五胸椎……どこだ?」


アペスはデレオの背後に回り、

背中の中心あたりを軽く撫でた。


「ちょうどここ。

一番手が届きにくい場所だ」


彼女は深くため息をついた。


デレオは思わず吹き出した。


「わはは!

ウンブラ婆ちゃん、そりゃエグいな!」


カシヤもアペスの背中を

叩きながら笑いが止まらない。


「おかげで

去年のアペスは熊みたいだったわよ。


暇さえあれば柱に背中を

こすりつけてたんだから」


「で、今年はどんな呪いなんだ?」


デレオがさらに身を乗り出す。


アペスは急に顔を赤くした。


「私……その話はしたくない」


カシヤは察して、優しく話題を変えた。


「ゾンビの脚を手に入れたら、

ウンブラ婆ちゃんのところへ

持っていくのよね?


どこに行けば会えるの?」


「簡単だ」


デレオはギルドのカウンターから

一枚の観光パンフレットをカシヤに渡した。


そこには大きな文字でこう書かれていた。


 


【ウンブラのマンドラゴラ観光農場】

~叫ぶマンドラゴラの経済価値と幻想体験~


・ゾンビによる自動農耕:

 休暇なし、疲れ知らず。

 花畑の絶叫も気にしません。


・黒魔法マネジメント:

 ネクロマンサーが指示を出し、

 悪魔契約者が結界をメンテナンス。

 お客様の安全を保証します。


・ゾンビ親族の引き取り:

 身分証があれば即手続き。

 呪い解除オプションあり。


 四大教会と提携した

復活術が35%OFF/3体購入で1体無料。


・ツアー内容:

 花畑さんぼ、農作業体験、親族引き取り立ち会い儀式。


・交通&予約:

 首都近郊。

シャトルバス・大型駐車場完備。



隅の方に小さな文字で:

「ゾンビの部位を持ち込む際は、

先に買取担当へご連絡ください」



「3体買えば1体無料……」


カシヤがその文字を凝視し、

口元を引き攣らせた。


デレオはパンフレットを畳んだ。


「一家揃って整いましょう、か。

いかにもウンブラ婆ちゃんらしい」


パンフレットの裏面を見ていたアペスが、

急に眉をひそめた。


「ちょっと待て!

この料金表、私を狙い撃ちしてないか?」


そこには太字で数行の項目があった。


「僧兵団体割引」

「肉食解禁特別プラン」。


彼女はパンフレットを丸めた。


「行くぞ! あいつに総決算をつけてやる」


「じゃあ、

まずはゾンビの脚を狩りに行くとしよう」


デレオは笑って歩き出した。

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