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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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第39話 ギルドに顔を出しただけで、なんで俺に懸賞金一万クレジットが付いてんだ?

冒険者ギルドの扉は、

今日はやけに重く感じた。


デレオが扉を引いた瞬間、

一本のミスリルスピアが

まっすぐ喉元めがけて突き出される。


あまりにも直線的で、

雑な奇襲のやり方だった。


デレオはすぐさま扉を閉める。

槍先が板戸を突き抜けてくる。


デレオは勢いよくもう一度扉を開いた。


小柄な半身人の少女が、

扉の勢いに押されてそのまま

ギルドの外へ引きずり出される。


少女はよろけながら

路地へ倒れ込みそうになる。


デレオは一度は蹴り飛ばそうとしたが、


あまり強そうには見えないその様子に、

心が少しだけ緩んだ。


彼は身をひねって道をあけ、

ついでに軽く押し出す。


少女は慌てた顔のまま、

通りへ向かって転がるように倒れ込んだ。


振り返ると、

デレオはカシヤと並んで

にこにことギルドの扉を閉めていた。


「ちょっと! 

一万クレジットの懸賞金なんだからね!」


少女は必死に扉を叩く。


――これで終わりだろうか?


ギルドの大扉の向こうから、

力の抜けたノックの音が続く。


「くそっ……


今日はうちのサーチベアが

予防接種に行ってなきゃ、


あんたらなんか楽勝だったのに!」


デレオはもう相手にする気はなかった。

戦闘結果の表示がまだ出てこない。


どうやら、

あの少女は誰かと

パーティーを組んでいるらしい……。


『……フロイトよ……

あいつを底なしの恐怖に沈めたまえ……』


夢掘りのエグゼキューターに向けて、

誰かがぶつぶつと

祈りの言葉をささやく声が聞こえてきた。


「恐怖の呪いか。」


デレオには避ける術はなかった。


だが――


デレオの全身を、

淡い青い光がふわりと包み込む。


呪詛吸収腕輪が、

本当の意味で力を発揮した。


恐怖の呪いは吸収された!


そして次は――

デレオは心の中で冷たく笑った……。


借りたものは、

きっちり返してもらうぞ!


「夢を掘り霊媒フロイト、

一秒前に通った道筋をたどり、


今この悪意を放った者の心へと戻りたまえ。


そいつ自身を、

抜け出せない恐怖の底へ沈めよ!」


デレオにとっては、

これが二度目の呪いの使用だった。


今度は、

さっきよりもずっと滑らかに言葉が出てくる。


「恐怖の呪い!」


黒い影のような呪いが、

ギルドホールへ向かって飛び込んでいく。


灰色のローブをまとった呪術師が、

耳を裂くような悲鳴をあげた。


男は頭を抱えて叫び散らし、

怯えきった顔で扉を押し開け、

冒険者ギルドから飛び出していく。


扉の外にいた半身人の少女は、


自分の仲間が

何かに怯えきって逃げ出したのを見て、

訳も分からぬまま慌てて後を追った。


「え? なんであいつ、

俺を狙ったんだ?」


デレオとあの呪術師は、

全く見知らぬ仲というわけでもないのに……。


さっきまで騒がしかったギルドのホールは、

一瞬で静まり返った。


「他にまだやる奴は?」


デレオは扉に

刺さったままのミスリルスピアを引き抜き、

そのままアレカへ放ってよこす。


自分の実力がギルドの中で

最上位ではないことぐらい、


デレオ自身が一番よく分かっている。


もしこの腕輪がなければ、

さっき奪うように扉を飛び出していたのは

自分のほうだっただろう。


だが、

現実には呪術師を一人、

叩き伏せた。


しかも相手は第三クラスの職業

――百人の冒険者がいたとしても、

その境地まで到達できる者が何人いるか分からない。


だからこそ、

この一瞬の“余威”は利用しておくべきだ。


少しでも余計な厄介ごとが減るのなら、

それに越したことはない。


ホール中の数十の視線が、

一斉にデレオへと集まる。


驚き、興味、そして言葉にしがたい畏れ。


「こいつが……」

「逆光のチェラーレを倒した男だ……」


「思ったよりも、

もう仕上がってるじゃないか。」


「こりゃあ、

下手に手出しできねえな……。」


アレカが蓋をぱかっと開け、

ステータス投影を浮かび上がらせる。


『戦闘終了! レベルアップ!

 デレオ:アイテム士 Lv28

 アレカ・ジェマルム:Lv27』


新たなスキル獲得はなかったが、

それでも二レベルも上がっている。


あの呪術師は相当な実力者だ。

ジョブ階位だけで見れば、

チェラーレやアペスよりも上と言っていい。


それでも、

この戦いはいささか拍子抜けするほどあっさり終わった。


今回はただ単に、

デレオの腕輪が

相性最悪の相手を引き当てた、

というだけの話だった。


デレオとカシヤは、

そのままギルドホールの中へ 

足を踏み入れる。


「よう、デレオの坊主。」

「おい、生きて帰ってきやがったな!」


「おいおい、

 ほかのパーティーに会ったか?

 今回は戻ってこねえ奴が多すぎるんだ!」


ギルドのあちこちから、

次々に声が飛んでくる。


「えっと……さっきの子が言ってたけど、

誰かが

俺に懸賞金一万クレジットかけたって?」


大勢を相手にするのは得意ではないが、


最低限の受け答え

ぐらいはしないといけない。


ギルドにたむろしている連中の中から、

何人かがニヤニヤと下品な笑いを漏らす。


「そこらへんは、

お前のすげー

“彼女たち”にでも聞いてみな。」


デレオは言葉を失った。

ちらりとカシヤを見る。


この素直な少女には、

妙な誤解をしてほしくなかった。


これ以上この話題を深掘りする気には、

とてもなれない。


彼は踵を返し、

ギルドのカウンターへ向かった。


今の時代、

超古代文明の遺跡が次々と発掘され、

そのたびに技術は

飛躍的な発展を遂げている。


社会そのものが、ゆっくりと、

しかし確実に形を変えつつあった。


そんな中で、

冒険者ギルドは一種の

「時代遅れ」であり続ける場所でもある。


古い吊り下げ型の照明から

こぼれた光が、

床にまだら模様を描く。


隅のほうでは古びたラジオが、

小さく懐かしいメロディーを流している。


軽薄な口調のパーソナリティが、

「復活成功率を上げる裏ワザ」

なんて怪しいネタを語っているのがBGMだ。


壁には色褪せた依頼書が

ぎっしりと貼られている。


召喚塔林から回ってきた依頼の中には、

もう三年も

誰にも手を付けられていないものもある。


新しく掲示された

行方不明者の張り紙も山ほどあった。


その長いリストの中には、

ベテラン冒険者たちの名前も

ちらほら混じっている。


そして、その隣には――訃報が並んでいた。

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