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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第二部——首都とネクロマンサーの観光農園

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第32話 壊れてる……こいつ、妹と同じだ!

チェラーレが口にしたのは、

彼女の双子の妹――シミリスのことだった。


デレオの知る限り、

最も歪で、最も執着心の強い召喚士。


三人は皆、メジェドの子だ。


「……どんな約束のことだよ。

八歳のときに交わした、

あの子供じみたやつか?」


デレオは苦笑する。


「一緒に冒険するって言っただけだ。

結婚の約束なんかじゃない」


チェラーレの視線が、鋭くなる。


「彼女にとっては、同じことよ」


「俺たちは、まだ子供だった!」


「でもその約束は、

クロートとメジェドの名のもとに結ばれた」


「……その重さは、

あなたも分かっているでしょう」


チェラーレは冷ややかに言った。


「あなたは、三年間、私たちから逃げた」


「……少し、距離が必要だっただけだ」


「シミリスは、

召喚塔林を制覇したあとも、

その約定に縛られ続けている」


「自分が足りないからだと思い込み、

あなたのために限界を超え続けた」


「でも、あなたは逃げた」


「だから彼女は、

ますます空っぽになっていったのよ」



チェラーレは、夜の中に立っていた。


守護者であり、

同時に脅威でもある存在。


妹の唯一の支えであり、

世界そのものだった。


その強さの奥には、

どうしようもない庇護と責任がある。



「カシヤ

……私とは、初対面よね?」


突然、チェラーレはカシヤに向き直った。


冷たい声音。


だが、情報はすでに揃っている。

盗賊が知らないはずがない。


『あなたは私を知らない。

でも、私はあなたを知っている』


それ自体が、無言の脅しだった。


カシヤは首を横に振る。


「いいえ。

でも……名前は聞いたことがあります」


「ニュースで……

詠生建設が、あなたを探しているって」


チェラーレは、かすかに笑った。


「例のパーティの録音、

流したのは私じゃないわ」


「正直、あなたのやったこと自体は

悪くないと思ってる」


「ただし……証拠の出所が違法だった」


カシヤは、少し残念そうに目を伏せた。


「法的には使えなくても、

方向性は示せました」


その純粋さは、

時に武器になる。


信じることは、

無力とは限らない。


チェラーレの目が、わずかに輝いた。


「……いつか、協力するのも悪くないわね」


二人の笑みが交差する。


夜の女神ニュクスと、

暁の女神オーロラのような――

交わらないはずの笑顔。


チェラーレは、再びデレオを見る。


「あなたとシミリスの約束は、

彼女にとって命より重い」


デレオは視線を逸らさなかった。


「でも、俺たちは子供だった。

時間をもらうことすら、許されないのか?」


その目は、

檻の中の野犬のようだった。


「一緒に冒険するのは好きだ。

でも……人生の全部を、

約束に縛られたくない」


チェラーレは、しばらく沈黙し――

低く言った。


「約束には、無数の解釈がある」


「でも、

シミリスの世界には答えが一つしかない」


デレオは悟る。


――自分こそが、その答えだ。



「……だから、強制するつもりか?」


今のデレオには、

チェラーレに対抗できる武器がない。


逃げ道もない。


チェラーレは瞬き、

意味深な笑みを浮かべた。


「いいえ。

強制なんて、三流のやり方よ」


「私は、

人が自分で選ぶ瞬間を見るのが好きなの」


「シミリスが欲しいのは、

あなたの“従属”じゃない」


「あなた自身の、覚悟よ」


その声は柔らかく、

だが圧力は確実に迫っていた。


「私たちは、分からせてあげる」


「私たちと一緒にいることこそが、

あなたの幸福だって」


――壊れている。

この姉妹は。


デレオは背筋を伸ばした。


せめて、

カシヤだけでも逃がすために。


その意図を察したように、

チェラーレの視線が鋭くなる。


彼女は、カシヤを見た。


「……あなたが、

彼を“説得”してくれる?」


鞘から抜かれた刃が、

薄暗い光の中で冷たくきらめく。


その瞬間――


アレカが突然、狂ったように跳ね回り、

デレオのバックパックに噛みつきはじめた。


まるで“何か大事なもの”を思い出したかのように。


デレオの胸が、どくんと跳ねる。


――あの呪いだ。

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