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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第一部——太古の宇宙船遺跡

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28/90

第24話 白燐の炎が爆発――彼女が鎮めた怒りを、再び燃え上がらせる!

カシヤは目を閉じ、

意識のすべてを音へと注ぎ込む。


そして――やわらかな旋律で、

「調和の楽章」を奏で始めた。


ふっと軽やかで伸びやかな

ハーモニカの音色が流れてきて、


沈鬱だった遺跡は、

長い雨のあとの晴れ間みたいに

明るさを取り戻した。


リラックスした空気が、

じわじわとあたり一帯に広がっていく。


そう、カシヤの職業は楽師だった。


アペスの手足から、

少しずつ力が抜けていく。


鉄巣蜂の群れも、

この柔らかなハーモニカの音色に包まれ、

次第にその苛立ちと攻撃性を失っていく。


――今だ。


まずは鉄巣蜂を片づける。


爆衝エンジンスケルトンのときに

拾っておいた燐粉がある。


使いどきは、まさに今だ。


『アイテムの製作:白燐弾』


デレオは、

レベルアップで新たに覚えた能力を

試してみることにした。


出来上がった白燐弾を

蜂の群れへと放り投げる。


「食いしん坊ワンコ、点火!」


彼は火焔ランプに、

さっきの具足虫殻をポイと投げ入れる。


ジュウッ……ドンッ!


瞬時に高熱が襲い、

空気中の酸素が一気に食い尽くされる。

デレオは息苦しさに思わず咳き込んだ。


烈火、濃煙、

そしてツンと鼻を刺す

ニンニクのような悪臭。


鉄巣蜂たちは、

真っ黒な炭となって次々と

地面に落ちていく。


アペスの身体にこびりついていた

鉄巣蜂の体液も、残らず焼き払われた。


当のアペス本人は、ほとんど無傷だ。


防具が優秀なおかげか、

それとも単に彼女の

レベルが高すぎるからか。


――だが、

この白燐弾は鉄巣蜂だけでなく、

せっかく落ち着きかけていた

アペスの怒りまで、

もう一度燃え上がらせてしまった。


今の彼女の目には、

デレオが

完全に「敵」に見えていることだろう。


アペスが、

鬼気迫る勢いでこちらへ突進してくる。


その拳が、

デレオを狙って振り下ろされる。


アレカが瞬時に飛び出し、

その一撃必殺のパンチを、

ちいさな宝箱の身体で受け止めた。


アレカが防いでくれたおかげで、

デレオは即死を免れたが、


拳に込められた力は凄まじく、

デレオは

踏ん張りきれず後方に吹き飛ばされる。


その拍子に、

解毒薬入りの注射器が床に叩きつけられ、

粉々に砕け散った。


「くそっ……これじゃ、

どうやって治せってんだよ……!」


「ねえ、その……

アペスの気を引き続けることはできる?」


「さっきの調和の楽章、

効いてたよな。


だったら、

吹き続けてもらうしかない。」


カシヤは、少し息を切らしながらも、

こくりと頷いた。


「わかった……やってみる。」


デレオは彼女が

無理をしているのが分かっていたが、

今は頼るしかない。


彼は床に散らばった注射器の破片を

拾い集めると、


それを次々とアペスへ投げつけた。


「おらっ!」


アペスは、

狂ったようにその破片を殴り飛ばす。


口端から泡を吹き、

こめかみに血管を浮かび上がらせ、

顔を真っ赤にして。


まるで、

自分の命を燃やすような勢いで、

周囲の「動くもの」すべてに拳を振るう。


デレオは、その動きをじっと観察し、

持てる集中力のすべてを、

彼女の攻撃をかわすことだけに注ぎ込んだ。


不幸中の幸いは、

今のアペスが完全に暴走しているせいで、

格闘技としての技術も戦術も一切、

活かせていないことだった。


そして再び、

春の午後のうたた寝のような、

穏やかな旋律が空間を満たしていく。


アペスの耳にも、

その音色は届いているらしい。


彼女の動きは、

少しずつ、

少しずつ、

爆発力を失っていった。


やがて、

アペスの振るう拳は、

目で追えるほどに鈍くなり、


デレオも全神経を回避に

使わなくても済むようになっていく。


そして――


アペスは、ついにその場で動きを止めた。


荒い息だけが、

喉から辛うじて漏れている。

腕を持ち上げることさえできない。


どさり、と前のめりに倒れ込み、

そのまま瀕死状態へと陥った。


アペスの喉は、

鉄巣蜂の毒でみるみるうちに腫れ上がる。


言葉を発することも、

飲み込むことも、

呼吸をすることさえ、

ほとんど叶わない。


デレオの手元には解毒薬がある。

しかし、

彼女に「飲ませる」ことができない。


「アレカ、この注射器、直せないか?」


アレカは眉をひそめる――

デレオはそこで初めて、


アレカにもちゃんと眉が

あったのだと気づいた。


彼は、壊れた注射器の破片を

無理やりアレカの口に押し込む。


「ぺっ!」


アレカはすぐさま砕けた注射器を吐き出し、

投影文字を表示した。


『ジュエルイーターには

修復機能がありません』


アペスの容態は、

刻一刻と悪化していく。


彼女の喉は、

もはや元の二倍ほどにまで

腫れ上がっていた。


「このままじゃ……

あと6分で脳に酸素が行かなくなる……」


――5分30秒。


「どうしよう……?」


カシヤは

今にも泣き出しそうな声でデレオに尋ねる。


アペスの呼吸はどんどん浅く弱くなり、

デレオはこれまでにないほどの

無力感に襲われていた。


――5分15秒。


その時だった。


アレカの身体から、

ふいに

「何かを作っている時の光」

が溢れ出したのだ――。


———大したことではないこと———


楽師のスキル

初期スキル:聴覚強化

Lv2 メイン楽器

Lv3 調和の楽章(敵の攻撃性を下げる)

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