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当ててみて、私の箱の中に何が入っていると思う?〜俺の冒險用ミミックだ!  作者: 上部乱
第一部——太古の宇宙船遺跡

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第12話 世界を救うためじゃない。報酬を三割増しでもらうために手を貸す

「こんなに鳴いてるってことは……

応援を呼んでるの?」


アペスの表情から、

さっきまでの自信が少し薄れていた。


「違うな。

あれは『テリトリー争い』の合図だ。


さっき君が、この一帯のボスを潰しただろ。


今ごろ近隣のいくつもの亜竜の群れが、

この空白地帯を狙ってる。」


「数は、どれくらいだと思う?」


「昔、冒険者ギルドの調査報告を読んだことがある。

 ざっと八百から千体ってところだな。」


デレオがそう説明すると、

アペスはすぐ隣にいるカシヤへ向き直る。


「カシヤ、撤退しよう。

これだけの数だと、

本格的に軍隊を動かすレベルだ。」


「ダメ! 

研究はそれだけ重要なの。

どうしても中に入って、

九宮盤を持ち出さないと。」


カシヤは一歩も引かない。


「でもね、この数を相手に、

私はもうあなたの安全を保障できない。」


アペスが困り顔になったところで。


デレオが口を挟んだ、


「それにさ~、

前回はちゃんと軍隊も連れてきてたよな?

それでも結局、全滅したわけで。」


「えっ、あなたは……? 

どこかでお会いしたこと

……あったかしら?」


カシヤはデレオをじっと見つめる。

どこか見覚えがあるような、

でも思い出せないような、不思議な顔だ。


もちろん、

彼女は生きている間にデレオと会ったことはない。


だから「知らない」のが正しい。


「たぶん、初対面だよ。

でも、

君の遺体を遺跡の外まで担ぎ出したとき、

君の目は開いてた。


 視神経に残った残像かなにかで、

うっすら記憶に引っかかってるのかもな。」


「あなたがデレオなのね! 

あたしを遺跡から背負って出してくれたっていう冒険者!


 おじい様から聞いてるわ。


『もう一度この遺跡に入る時は、

必ず彼を探せ』って。」


カシヤの表情は、

騎士を見つけたお姫様そのものだった。


「じゃあ、

なんで素直に俺のところへ来なかったんだ?」


「だって、

あなた、完全に行方不明だったのよ!


 ギルドで聞いても、

『連絡先不明・長期間依頼なし』

って言われるし。」


「悪い悪い。

召喚師とシーフのコンビに

追いかけ回されててな。


 ギルドには、

俺の情報を誰にも流さないよう頼んでたんだ。


 それに、

前回もらった報酬があまりにおいしすぎてさ。

数日くらい、

だらけててもバチは当たらないだろって……。」


『こうやって説明すると、

なんか全部俺が悪いみたいに聞こえるな……。』

デレオは心の中でぼやく。


情報収集という点では、

カシヤ嬢の能力は、

さすがに祖父には遠く及ばないらしい。


サリクスなら、

きちんとデレオを探し当てていた。


「で、今は私たちを手伝ってくれるの?」


「いや、手伝わない。」

デレオはきっぱりと言う。


「俺が受けた依頼は、

『君を遠古宇宙船遺跡から無事に連れ出すこと』。


 だから、

変な寄り道はやめてもらえるかな。」


「それは無理!

 あなたは感じないの? 


この世界の魔法がどんどん弱まってること。


 王畿学院の調査資料によると、

この遠古宇宙船遺跡のどこかに、

『魔法の起源』が記録されたデータベースが存在するのよ。」


デレオは肩をすくめた。


「俺は魔法を直接使わないタイプだからな。

正直、そういう変化には疎いんだ。」


「復活の成功率は年々下がってるし、

魔法の消費もどんどん重くなってる。


 魔導エンジンを捨てて、

黒煙を吐くディーゼルエンジンに

乗り換える人も出始めてる。


 魔法を使えないあなたでも、

その不便さくらいは感じてるはずよ。」


カシヤの声には、焦りが滲んでいた。


「まあ……

前より面倒が増えてるのは、

なんとなくわかる。」


デレオにとって、

それは「少し不便になった」程度の話だった。


だが、この場の空気の中で、

軽々しく口にできる言葉ではない。


「私の教授たちはもうみんな戻らない。

新しい研究チームが原因を突き止める頃には、

この世界から魔法が完全に消えてるかもしれない。


 今、この状況をつなぎ合わせられるのは、

もう私しかいないの……。」


カシヤの声は、かすかに震えていた。


「だから、一言でいいの。

――私たちを手伝ってくれる?」


アペスがカシヤの隣へ一歩進み出る。

その視線だけで、

「二人の意志」はじゅうぶん伝わってきた。


この二人を連れ帰るには、

アペスを倒すしかない。

しかし――どう考えても勝てない。


本当に、割に合わない仕事だ。


そのとき、デレオの情報端末から、

軽い効果音が鳴った。


『カシヤが、

あなたを冒険パーティに招待しました。』


目の前の二人の少女を見比べながら、

デレオの心は激しく揺れる。


招待を受諾するということは、

「元の依頼がほぼ達成不可能になる」

ことを意味する。


だが、拒否すれば、

このまま二人が死地へ向かうのを見届けることになるかもしれない。


八百から千体の亜竜――

誰がどう考えても、生還は絶望的な数字だ。


手を貸さなければ、

アペスの戦い方では今夜までもたない。

いや……持ってあと数時間だろう。


周囲から、再び咆哮が響いてくる。


「何をそんなに迷ってるの?」

アペスが、彼の逡巡に気づいて問いかける。


「どうやったら君たちを生きて帰らせられるか、考えてる。」


デレオは正直に答えた。


「戦の神ティールだって、

こんなふうに無双して突っ込んだりはしない。


 鋭きを揣して以て長く保つべからずってやつだ。」


カシヤが一歩前に出て、

真剣なまなざしでデレオの目をまっすぐ見つめる。


「デレオ。

無茶を言ってるのはわかってる。

けど……」


彼女は、誠実なまなざしで、

彼の目をまっすぐ見つめた。


「もし本当に魔法が消えてしまったら、

この世界はどうなってしまうの?」


デレオは、

そのまっすぐな眼差しを見つめながら、

サリクスの言葉を思い出す。


――「私たちは、また会うことになる。」


あの老人は、

すでにこの展開を予測していたのかもしれない。


「……わかった。手を貸すよ。」


デレオは深く息を吐いた。


「ただし、

その分報酬は三割増しで請求させてもらう。」


『あなたは、

カシヤの探検隊に参加しました。』


「本当に、ありがとう。

あなたの行動は、

きっと世界じゅうから感謝されるわ。」


カシヤはぱっと花が咲いたように笑った。


「多めのクレジットで払ってくれた方が、

よっぽど実感が湧くんだけどな……。」


そうぼやきつつも、デレオは、

その笑顔が氷に閉ざされていたときより、

何倍も綺麗だと認めざるを得なかった。


亜竜たちの咆哮が重なり合い、

もはや近距離でも聞こえるほどになってきている。


この場所に、

いつまでも留まっているわけにはいかない。

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